2023.11.02
2022.11.25
2024.10.21
経済アナリスト
森永 康平(もりなが こうへい)さん
証券会社や運用会社にてアナリスト、ストラテジストとして、日本の中小型株式や新興国経済のリサーチ業務に従事。その後、インドネシア、台湾などアジア各国にて新規事業の立ち上げや法人設立を経験し、事業責任者やCEOを歴任。現在は国内外のベンチャー企業の経営にも参画している。『スタグフレーションの時代』(宝島社新書)ほか著書多数。現在、小1、小3、小5の3人の子どもの子育て中。
お金を正しく使える大人になるために最も有効な方法は、自分の判断で「使う」「貯める」練習をすることだ。
その際、避けなければいけないのが、親の干渉。「無駄遣いするな」と言ったり、お小遣いの使い道に口を出してはいないだろうか。それでは、いつまでも「自分で考えて」お金を使う力がつかないという。
「お小遣いは毎月一定の金額を渡し、親はその用途に触れないのが僕のおすすめです。suicaなどにお小遣いをチャージするご家庭もありますが、計算ができない未就学児までは現金で渡し、貯金箱に入れることがポイント。
すると、『お金が貯まると貯金箱が重くなる』『お金を使うと貯金箱が軽くなる』というように、未就学の子どもにもお金の貯まり具合が感覚的にわかりやすくなります」と森永先生。
また、お金が貯まると自ずと「使いたい」という場面が訪れる。例えばゲームセンターのUFOキャッチャー。「自分のお金でやりたい」と言ってきたら、まずは好きにさせよう。
そして、例えば「1000円使っても取れない」といった事態になった時がチャンス! おもちゃ屋さんに行って、同じようなぬいぐるみが定価で売っているのを見せ、「最初から1000円出せば手に入った」事実に気付かせるのだ。
さらに、「じゃあ、今日はなんで買うのではなく、ゲームセンターで1000円使ったと思う?」と問いかけてほしい。すると子どもは、『物だけが欲しかった』のではなく、『取れるかどうかのドキドキ感』にもお金を払ったことに気付く。「何にお金を使ったのか」を正確に理解できるのだ。
「それと同時に、他に何か『捨てていること』が必ずあるので、そこも伝えてください。この場合は、ドキドキ感の代わりに『定価を払えば絶対に手に入る』という安心感を捨てています。そうやって、『何かを選択することは、何かを捨てることである』という意識を身につけさせることが重要です」。
お金を何に使うのか、あるいは使わずに貯めるのかは、常に選択である。それを自覚させることが、お金といい関係を築くための第一歩なのだ。
森永康平さん流
年齢別! お金の教育のポイント
この頃は、ママやパパがキャッシュレスではなく現金で買い物する姿をなるべく見せて、「そもそもお金とは何か」を体感的に伝えよう。「物やサービスとお金を交換していることを、日常的に見ることで学ぶ機会を作ってあげる」という意識を。
また計算ができなくても、「お金が増える喜び」や「減る寂しさ」を重みで自然に感じやすいように、お小遣いは現金で渡し、いったん貯金箱へ入れさせよう。
スーパーのチラシを一緒に見て、「お金を使うことは選択である」ことを伝えよう。
例えば、同じキュウリでも、「遠いスーパーまで行けば80円で買えるけど、家の近くのスーパーだと100円」という場合。単純に100円と80円どちらが安いかという話ではなく、「少しでも安いものを選ぶ」という価値観で動くのか、「20円の差額だったら近くで買えばいいよね」なのか。
選択させて、その理由を考えさせよう。また年齢が上がれば、鮮度や個数によって価格が違う理由なども問いかけてみよう。
小学校高学年になったら、「お金が社会でどう回っているか」を教えてあげよう。
例えば飲食店でお金を払う際に、「どうしてお金を払うと思う?」と聞いてみる。おそらく、「ご飯を作ってくれたから」といった答えが返ってくるはずだ。そうしたら、そのお金で店は食材を仕入れ、そこからさかのぼると農業や畜産業の方がいて……という、お金の循環を伝えるのだ。
その際、「お金自体に価値はなく、その先に人がいるからお金が価値を持つ」こともあわせて伝えよう。
子どもとお金の関わり方について、日々親の疑問や悩みはつきないもの。ここでは森永康平さんに、Q&A形式で答えていただいた。
A.大人になって経済力がついた時、歯止めが効かなくなるかも
子どもの頃から「お金を貯めろ」「無駄遣いをするな」と親に指示されていると、使い方がわからないまま大人になってしまう。すると、大人になって経済力がつき選択肢が広がった時に、ギャンブルや身の丈に合わない買い物など、新しい選択肢に歯止めが効かなくなるというリスクがある。
いろいろな選択をする機会を持たせて、「これを買うということは、何を捨てている?」と、自分で考えて自分で選択をする習慣をつけることが重要だ。
基本的に、お小遣い等でもらったお金は全部自分で使い方を選択させよう。「無駄遣い」などの失敗を自分で経験することも大切だ。ただし、失敗のリスクが大きくなりすぎないよう、オンライン課金などは親がしっかり上限を設定しておくことは必要。
A.やるかやらないか、子どもに選択させるならOK!
例えば、勉強など自分のためにやることや、「晩ごはんのお皿を食卓に並べる」など、家族の一員として普段からやってほしいことにお金を払うのはNG。
一方で、もともとはパパ・ママの役割だと家族で決めているけれど、別のことが忙しくてどうしてもできないといったときに、「アルバイト募集」のような形で「やってほしい内容」「料金」を提示するのはOKだ。現金ではなくポイント制にして、たまったらお小遣いという方法もある。
その時、「やるかやらないか」を選ぶのは、あくまでも子ども自身。「子どもにこれをやらせたい」という親の欲から、お金を渡して強制的にやらせることは避けよう。
文:笹間聖子
FQ Kids VOL.18(2024年春号)より転載
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