爪を噛むのは問題ではなくサイン!? 子供が5分で安心できるコミュニケーション方法

爪を噛むのは問題ではなくサイン!? 子供が5分で安心できるコミュニケーション方法
SNSで大人気の現役保育士・てぃ先生が、FQKids読者の悩みに答える連載企画。今回は「『爪を噛むのは不自然な行動で、寂しさやストレス等の問題をかかえている兆候』と本で読みました。特別なケアは必要なの?」と悩む親御さんのお話です。

《 今回の相談内容 》

もうすぐ4歳になる娘が爪を噛んでいます。手の爪は、爪切りしなくてもいいくらい、いつも短いです。 私自身も小さい頃よく爪を噛んでいたので、あまり心配はしていませんでした。

ところがある本に「爪を噛むのは不自然な行動で、寂しさやストレス等の問題をかかえている兆候」と書いてあったのを読み、それ以来すごく気になっています。

てぃ先生は爪を噛む癖のある子は、何か特別にケアが必要だとお考えでしょうか? いつも親子のありのままを肯定してくださっているてぃ先生だったら、どのように捉えられるのか気になって質問をさせていただきました。

(まみままさん・3歳女の子の親)

爪を噛む原因とは?
無理にやめさせると代替行為に移る

結論からお伝えします。お子さんに特別なケアが必要だとは、僕は全く思いません。本にどのように書かれていたのか、その前後の説明がどのようなものだったのかはわかりませんが、「子供が問題をかかえている」と書かれていると、どんなお父さんお母さんでも心配になってしまいますよね。

よくある原因の1つは、「下の子が生まれて、気づいてみたら自分よりも下の子ばかりにパパママが関わっている」と錯覚してしまうケース。その場合、お子さんは不安定になって、爪を噛んだり髪の毛をいじったり。それがエスカレートすると、自分の髪の毛を引っ張って抜いたり、壁に頭を打ちつけたりなど、不安を感じている時の子供のサインは色々あります。

ちょっとした不安を感じた時、すぐにできるのが爪を噛むことです。「爪を噛むのをやめさせたい」と考えるよりも、「なぜ爪を噛むのかな?」を考えてみましょう。

やめさせる方法の1つに、指に苦いものを塗るというやり方を聞くことがあります。でもこの方法は、僕はおすすめしません。なぜならこの作戦で爪を噛む行動自体はやめさせられるかもしれませんが、代わりにチックになったりなど、代替の行動に移ってしまうことがあるからです。

細切れの合計時間よりも、
集中した時間で子供が満足する方法

爪を噛むのをやめさせたいのであれば、そもそもなぜ爪を噛むのか、爪を噛むという心理的不安要素はどこから来ているのか、その根本的な部分を考え解消してあげることの方がはるかに効果は高いし、はるかに解決が早いと思います。

もしも最近忙しくてあまりかまってあげられていないなとか、そういったことが少しでも思い当たるようであれば、次の方法をおすすめします。それは、「1日の中でたった5分、家事も仕事もテレビも何にもなしで、子供とだけちゃんと向き合う時間を作ること」です。

園から配布されたプリントを見ながらとか、お皿洗いをしながらとか、テレビを見ながらとか、合間合間に細切れで関わる1時間よりも、「この5分は他のことは何もしないで、ちゃんとこの子と関わる」と決めて向き合う5分間は、子供にとってはものすごーく満足度は高いのです。

「子供とはちゃんとコミュニケーションをとっているつもりです」「寂しくないように対応しているはず」と思っていらっしゃる親御さんは、大抵はこの「細切れタイム」で関わっているケースが多いんです。「集中して5分を作る」のがおすすめです。

あともう1点。もしも下の子が生まれたことで寂しさを感じているのであれば、時間の作り方のポイントがあります。お子さんは、「下の子がいなかった時の状況」を求めています。ただ子供との時間を持つのではなくて、子供が求めているのは「まだ1人っ子だった時のような親との時間の過ごし方」です。そうしないと満足しません。

それを意識した対応をすると、お子さんの反応も変わってくるかなと思います。爪を噛む行為の原因が「コミュニケーション不足」「スキンシップ不足」「愛情不足」なのではなくて、それに至るそもそもの不安要素がきっとどこかにあるはずです。その不安と寂しさを解消する手段がコミュニケーションとスキンシップなのです。

親は自分を責めないで!
原因は親にあるとは限らない

不安と寂しさを感じるのは、何かしら欲求が満たされていない状況があるといっても、必ずしも原因が親にあるとは限りません。不安を抱くのは家の中の出来事だけではなく、外で何かを抱えているケースもあります。例えば、次のような原因が考えられます。

子供が爪を噛む原因例

●今まで自分だけが独り占めできていたオモチャが、ある日突然、別の子も興味を持ち始めて独り占めできず、なかなか使えなくなった。
●友達との力関係で、友達の方が強く、自分は好きなオモチャに全く触れられなくなった。
●今までは保育園でリトミックはなかったのに、今月から急にリトミックが始まって、あまり得意ではなくて、やりたくない。 ……など。

以上のように、爪を噛むのは子供が抱えているストレスを解消するため、あるいは心を落ち着かせるための手段の1つです。大人でも恥ずかしい時に、髪をいじったり、服の裾などをずっと触っている方もいらっしゃいますよね。

お子さんも爪を噛みたいと思ってやっているわけではなくて、今までとは違う先生が来たとか慣れないことや苦手なことをやったなど、ちょっとした環境の変化に対応しようとして、自分を落ち着かせようとしてやっている場合もあります。

爪を噛むようになった頃、何か環境に変化はありませんでしたか? 行為そのものをやめさせることを考えるより、まずはその原因を探ってみましょう。

プロフィール

てぃ先生
関東の保育園に勤める保育士。名前の読み方は「T」先生。Twitterフォロワー数は50万人、YouTubeチャンネル登録者は20万人を超える。著書である『ほぉ…、ここがちきゅうのほいくえんか。』(KKベストセラーズ)は15万部を超える大人気作に。近著の『てぃ先生の子育てで困ったら、これやってみ!』は自身初となる育児本であり、こちらもベストセラーとなっている。現在は保育士の専門性を生かし、子育ての楽しさや子供への向き合い方などを発信中!

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文:脇谷美佳子

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