子どもの反抗的な態度は「自由の勘違い」が原因!? 親子に必要な1日10分の対話とは

子どもの反抗的な態度は「自由の勘違い」が原因!? 親子に必要な1日10分の対話とは
教員や教師として、小中高生の子どもたちと長年関わり、現在では「親子関係構築専門家」として活動している鶴岡そらやすさんのコラム「ごきげんおやこの視点づくり」。今回は「自由と反抗」についてです。

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「自由」とは何かについて考える

前回は、「違いを受け入れるという自由」の話だった。大人も子どもも、「自由」に憧れる。子どもに自由に生きてほしいと願う親は多いが、一方で、子どもに自由にしていいというと、自分勝手になっていくのではないかと心配する声も多く聞く。

そこで今回は「自由と反抗」についてお伝えしていこう。

さて、そもそも「自由」とは何か。抽象的な概念のため、改めて考えたことがない方もいると思うので、この機会に一度考えてみてほしい。私はたくさんの子どもたちと関わってきたが、どうやらそれぞれの思い描いている「自由」には、かなりの差があることがわかった。

ここで、ぜひやっていただきたいことがある。
①まずあなた自身の「自由」の定義を具体的に言語化する。ノートなどに書いてみるとよい。
②お子さんに「自由」って何だと思うか聞いてみる。(小さくて言語化がうまくできない子もいるかもしれないが、できるだけ丁寧に聞く)

おそらく、ご自身が思っている「自由」と、子どもが思っている「自由」は一致しないだろう。もしかすると「それを自由と思っていたのか!」と驚くような答えが返ってくるかもしれない。でも、否定してはいけない。その子が何を自由と思っているかを知ることが大切だ。

私がこれまでに聞いた子どもたちの意見によると、幼い頃は「自分の好きなことをする(遊びたいおもちゃで遊ぶ、公園で遊ぶ)」のような、純粋に自分の思うままに振る舞える状態を「自由」と感じている子が多い。

ところが年齢が上がっていくにつれ、全員ではないが、自由の捉え方が「指示命令への反抗」に変わる子が増える。「制限から逃れる」「決まりを破る」を、自由と勘違いする子が出てくるのだ。

「自由とは、誰にも命令されないこと(誰の言うことも聞かなくていいこと)」だと思っている子がこのパターンだ。自由にしていい、というと自分勝手になる子は、こう考えている可能性がある。

「反抗=自由」という
誤った方程式

例えば、いつも子どもに「部屋を片付けなさい」と口うるさく言っていたとする。小さい頃は親の方がパワーバランスが圧倒的に上だから、子どもは嫌々片付ける。

ところが、成長していくうちに「なんでいつも命令されなきゃいけないんだ」と考えるようになる。ある時、親を無視してみる。無視された親は、しばらくうるさく言うが、そのうち疲れて、言っても無駄だと諦める。

すると子どもは「なるほど! 無視していれば諦めるんだな」と学ぶ。親の言うことを聞かないことで、自分の主張が通る。反抗することで自分の思い通りの結果になるという「自由」を手に入れる。

すると親が言うことを無視し、親に禁止されたことをわざとやるようになる。こうして、指示命令に背く、無視する、反発する、反抗する=自由! という、誤った刷り込みが出来上がる

しかし、そもそも大人が子どもに教えていることは、子どもがいずれ自由に生きていくための大切な知識、習慣である。

部屋を片付けることも、時間を管理することも、勉強することも、マナーを守ることも、大人になってから「自由」に人生を生きていくために必要だから伝えている、親心からのはずだ。

それなのに、「大人の言うことを聞かないこと(反抗すること)が、自由を手に入れる手段だ」と思ってしまった子には、大切な言葉が届かなくなってしまう。子どもを自由にしたいと思って親が伝えている大切な知識や習慣を、反抗に全エネルギーを注いでいるせいで受け取れないのだ。

すると、子ども自身は「自由にできている」と思っているにもかかわらず、本来の自由とはどんどんかけ離れていくことになる。

人によって自由の定義は違うが、どんな場合でも、子どもに「反抗することが自由である」と思わせることだけは避けたい。それは子どもを自由から遠ざけるからだ。

ではどうしたらいいだろうか。それには、逆説的な言い方になるが、まず子どもの自由を尊重し、信じることが大切だ。

自由に生きるための
大切な言葉が届く対話を

みなさんにも、勉強しようと思っていたのに「勉強しなさい」と言われて、途端にやる気を失った、というような経験はあるのではないか。言われるまでは自分がやろうと思っていたこと、いいと思っていたことなのに、言われた途端に「それだけは絶対にやらない!」となってしまう。

自分の選択の自由を奪わせてなるものか、という抵抗感が「言われたこととは逆のことを選択する」という現象となって現れる。つまり、一方的に指示することで、「自分の意思でやるという自由」を子どもから奪ってしまうのだ。

部屋が片付いていないのであれば「片付けなさい」ではなく、一緒に片付けながら、片付けることのメリット、片付けないことのデメリットを伝えていく。

「勉強しなさい」ではなく、一緒に勉強しながら、勉強がいかに自分を自由にしてくれるのか、と話してあげる。一方的に言うのではなく対話を通して、今やるべきことは「自由の扉を開く鍵」なんだという、子どもがワクワクする話を伝えていくことを心がけたい。

仕事や家事や子育てに追われ、じっくり話している時間はない、という方もいるだろう。もちろんわかる。でも、子どもには自分で考えるための時間が必要なのだ。

時間がないからと、子どもを急かしたりコントロールしようとすればするほど、反発され、イライラすることに逆に多くの時間を割くことになるだけだ。

忙しい時ほどあえて一呼吸おいて、一緒に考える時間を10分でもいいから確保した方が、子どもとの関係が良くなり、結果として子どもが自分で考えて動くようになるから、時間に余裕ができる。「急がば回れ」である。

子どもが自由になりたいのは、親に反抗したいからではない。楽しく過ごしたいからだ。そして子どもは、自分だけ楽しければいいとは思っていない。みんなが楽しければもっと楽しいし、特に親には笑顔で、ご機嫌でいてほしい、と思っている。

まずは自分がご機嫌でいることを意識してみよう。そして、一緒に考える時間を少しだけ増やしてみよう。反抗や逃亡という「自由もどき」ではなく、子ども自身が丁寧に考えて選択する「自由」は、自分勝手にはならないと信じて、対話してほしい。

もし今、子どもに反抗されて困っているという方は、「今日は指示・命令ではない対話を何分、何時間できただろう」と振り返ってみてはいかがだろう。

もし、全然できていなかったと思ったら、今夜「自由」について対話してみるのもよいだろう。そのとき子どもが教えてくれたことを、ぜひ読者アンケート等でお知らせいただけたら嬉しい。

PROFILE

鶴岡そらやす

大学を卒業後、小中学校合わせて15年の教員生活の中で2000人以上の子どもたちと関わり、2014年、一念発起して退職し学習塾を開講。小、中、高校生の子どもたち、保護者へのコーチングにて問題発掘と課題解決を行う専門家として実績多数。大学生のキャリア支援メンター、高卒人財の就職支援、企業の新入社員研修などにも関わっている。2020年には親子で考える多様性についての書籍を出版。学校、教育委員会や、市民の集いなどで、生徒、教員、保護者への講演会を開催。小学校から社会人として自立するまでの発達段階を踏まえた、長期的視点からの子育てのポイントを伝えている。

Amebaブログ オフィシャルブロガー
●インスタグラムでは思春期の子どもとの関係づくりのコツを発信中! @sorayasunavi

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FQ Kids VOL.18(2024年春号)より転載

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