2021.03.20
2021.01.22
2024.10.25
前野隆司先生
慶應義塾大学大学院SDM研究科教授、武蔵野大学ウェルビーイング学部長。幸福学、イノベーション教育、システムデザイン・マネジメント学などの研究に従事。
「地位財型社会」から「非地位財型社会」へと変化した現代では、学歴は幸福度を測るパラメーターから既に外れつつある。変動が激しく、先が見えない現代社会で幸せになるためには、個々の「生きる力」が必要となる。
だからこそ、ウェルビーイングを高めるための学びが重要視されているのだ。
単に成績が良くなることを目指す学びは、地位財型の学び。「100点を取ること」「1番を取ること」といった、人と比較することで得られる幸福は長続きしない。
ウェルビーイングを高める学びには、「自分自身の良さ」を伸ばすことが重要となる。そのためには、苦手な科目を平均に近づけるよりも、得意科目を伸ばして個性を磨く教育が必要だ。「これからは多様な良さを伸ばして、個性をとがらせる時代です」と前野先生。
また家庭でも、子どもの主体性を尊重し、得意なことを伸ばす子育てがウェルビーイングにつながる。「今後どんなに時代が変化しても、主体性がある人は幸せに過ごせます。子どものやりたい事を見付け、主体的に過ごす時間を大切にしてください」。
アメリカの教育心理学者ロバート・ローゼンタールが行った実験では、無作為に選んだ生徒のリストを「これから成績が伸びる生徒だ」と教師に見せ、教師が期待を込めて接した結果、実際にその生徒たちの成績が伸びたという。これは「ピグマリオン効果」と呼ばれる。
「親が子どものためにできるのは、子どもを信じて、十分な栄養を与え、のびのびと過ごさせること。また、短期的な結果に左右されず、“この子は伸びる子だ”と長い目で見て信じ続けてあげることが大切です」。
子どものウェルビーイングを
1週間で高める方法
まず親が日頃の姿勢を変える
親が子どもへの態度を1週間変えるだけで、子どもはよい方向へと変化する。といっても、やるべきなのはとても基本的なこと。まずは子どもに対して感情的にならず、叱る時は冷静に伝えること。また日々の挨拶をきちんと交わして、笑顔で接すること。
子どものウェルビーイングを高めるには、家庭が安心できる場所であることが大きなポイント。家族が仲良く過ごすことが、子どもの自信と安心感を育てるのだ。
●親子できちんと挨拶する
●笑顔で接する
●感情的に叱らず、冷静に伝える
●夫婦、家族で仲良く過ごす
1週間トライして、子どもの変化を見てみよう。そして「いい学校」「いい会社」に入ることではなく、「わが子が40歳になった時に幸せになれるか?」を考えて行動しよう。
文:藤城明子
FQ Kids VOL.18(2024年春号)より転載
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