
2021.06.09
【世界の教育事情】お金の管理や文化継承も! 海外の真似したくなる教育プログラム6選

2024.04.01
クラスにさまざまな人種の子どもたちが混在するイタリアの小学校。
イタリアの公立校の一般的な外国語学習では、小学校から第二外国語として英語を学び、中学校ではさらに第三外国語としてフランス語、スペイン語、ドイツ語などを学ぶ。ミラノ市の小学校には数科目の授業を英語で行うバイリンガル実験校もある。決して語学力が高くはなかったイタリア人だが、昨今では語学教育の強化が見られる。
外国人の子どもたちも、サポートを受けながら同じクラスで勉強する
また一方で、移民問題が深刻化しているイタリアでは、人口の10%以上を外国人が占めており、その子どもたちはイタリア語が不自由な場合も多い。インクルーシブ教育を重視するイタリアでは、外国人の子どもはサポートの先生付きで通常授業に参加でき、放課後数時間のイタリア語コースなどの特別なプロジェクトが提供されている。
文:田中美貴
どんな料理が出てくるか、それもまた大きなお楽しみ。 ©Cottonbro studio
毎年9月第4土曜日は隣人の日。オランダ各地で近所のために何かをする日だ。例えばRunning Dinner。前菜、メイン、デザートから指定された1つを料理し、4人のゲストを自宅に招く。前菜が終わるとメイン担当の家に移動し、デザートの時間にまた移動。
移動ごとにテーブルを囲む顔触れが異なるよう組まれ、ご近所さんといえど誰と一緒になるかその時までわからないのがミソ。いろいろな職種、人種、年齢層の人がおいしい料理と笑い、会話に満ちた夜を共に楽しむ。
文:米屋香林
2023年10月に行われたワークショップの様子。 ©パリ日本文化会館
パラリンピック開幕を今年8月28日に控えたパリでは、4年に1度の世界最高峰の障害者スポーツ大会に向けて日々熱気が高まっている。それに先立ち、海外における最大級の日本文化の発信拠点である市内のパリ日本文化会館で日仏の手話を学ぶ催しが開かれた。
折り紙で一対の貝殻を作り、貝合わせを楽しみながら両国の手話を学ぶ内容。手話は各国で表現が異なる。手話体験を通じて日仏間の文化やジェスチャーによる視覚言語を比較し、聴覚障害に対する理解を促そうという試みだ。
文:守隨亨延
「今日のグローバル経済で複数の言語を知ることは重要だと考え、子どもに取り組ませています」と親からの声。 ©WorldSpeak
アメリカの小学校では、第二言語の習得は必須ではない。そこで、第二言語に興味を持つ保護者に注目されているのは、幼少期にロシア語、フランス語など16の第二言語の習得プログラムを提供する「WorldSpeak(ワールドスピーク)」。
コンセプトは、他言語を学ぶことで子どもたちが異なる文化や人々を尊重し、他者に優しくなり、異なる文化や習慣に興味を持つように成長すること。論理的思考と社交スキルを重視した独自のカリキュラムで評価が高い。
WorldSpeak(ワールドスピーク)
文:大山真理
これからの社会は自分のアイデンティティを定めるのがより難しくなるかもしれない。 ©shutterstock
コペンハーゲンなどの都市部や一部のエリアでは、学校によって在籍する子どもたちの社会的背景(人種・民族、宗教、文化など)がまったく異なることがある。生徒や保護者の物事の捉え方や考え方、価値観が大きく異なると、学校の活動やお知らせ、行事など、1つ1つのコミュニケーションや共通理解が一筋縄ではいかない。
また、共通の価値観や目標を持ちにくい環境の中で、自分の子どもがどのように学び成長するのかという懸念を持つ保護者もいる。それでも、違いや多様性を尊重し、受け入れられるコミュニティの形成に向けて、デンマークの教育現場は常に模索している。
文:Ayumi Umino, Educational Visits Denmark
スウェーデン語は就職にもプラスになる将来性の高い言語。 ©Helsinki Partners/Jussi Hellsten
フィンランドで話されているフィンランド語は、主要ヨーロッパ国の言語が属すインド・ヨーロッパ語族ではなく、マイナーなウラル語族。また人口もわずか550万人の国であるため、フィンランド語だけでは経済活動が成り立たない。
そのため、子どもたちはフィンランド語字幕付きの英語メディアや英語版のゲームを楽しみ、大人たちは仕事で海外市場を相手に英語を駆使する。
このように日常生活の中で英語が身につくフィンランドでは、 英語以外の言語教育への敷居も低い。第二の公用語であり隣国の言語であるスウェーデン語の保育園や、ドイツ語やフランス語の保育園などもあり、多言語教育が重要視されている。
文:靴家さちこ
対話だけでなく、歌・演劇を通して感情表現も学ぶ。嬉しいこと、苦しいことを伝える力を育てる。 ©Christoph Eckelt
ベルリンとブランデンブルク州では、「人道的な人生学問」(Humanistische Lebenskunde)と呼ばれる選択授業が行われている。小学1年から始まり、人権や平和などについて子どもの考察力と発言力を伸ばすことが目的。通常のクラスより少人数で、子どもたちは活発に発言できる。
課外授業として少年兵の動員に対する抗議活動に参加し、子どもが兵士になる背景も学ぶといったことも。教育省ではなく、ヒューマニスト協会が授業内容の指導を行っているのも興味深い。
文:町田文
FQ Kids VOL.17(2024年冬号)より転載