2022.10.17
2020.11.13
2021.05.08
体力だけでなく心も成長させるかけっこ。その秘められた力について、柳谷先生からお話を伺った。
「国語や算数が得意な子がいるように、体育が得意な子がいます。体育が得意な子にとって運動会や記録会でのかけっこは、運動の成果を発表したり、自身の存在をアピールしたりする場です」
こう、かけっこの意義について語る柳谷先生。かけっこで良い成績を残すことは成功体験になり、子供のさらなる成長につながるとも語る。
「成功体験が得られれば自信がつき、ほかの分野でも力を発揮しようと努力する傾向があります。勉強に対して苦手意識を抱いていた子が、かけっこで良い成績を残したのをきっかけに、勉強にも頑張って取り組むようになる可能性が十分にあるのです」
しかし、かけっこで良い成績を残すことにこだわるのはご法度。成績よりも日々練習してきたこと、かけっこで頑張ったことを評価するのが大切だという。
「成功体験を得られなかった子には、過程や努力を認めてあげると、能力が評価されたのと同じ印象を子供に与えることができます。上手に褒めて、子供の再チャレンジする気持ちと自信を高めましょう」
順天堂大学大学院・スポーツ健康科学研究科・バイオメカニクス研究室
柳谷登志雄さん
スポーツの動きの走ること、跳ぶことを対象に、科学的に研究し、体の働きについて分析・研究を行っている。また、「瞬足陸上教室」の先生として子供たちに走るコツを伝える活動、商品開発にも取り組んでいる。
練習前に知っておきたい
かけっこQ&A
かけっこに必要なのは、「走る」というシンプルな動作のみ。しかし、その意義や子供に与える影響はとても奥深い。かけっこの練習に取り組む前に知っておきたい、基本的な知識をQ&A形式で学ぼう。
A. 「かけっこで順位を得ることは、『もっといい順位をとりたい』といった目標を得るきっかけになります。こうした具体的な目標のもと、“距離や本数などを”一緒に決めたメニューをこなせば、達成感を得られるでしょう。すると、おのずと自信も養われるはず。
また、練習を通して達成感を獲得し、自信を向上させる機会が増えることで、体力はもちろん、精神的にも成長することができます。生育した精神をもつ子供であれば、多少の困難やストレスにも、打ち勝つことができます。大人になり社会に出てからも、子供の頃から培った成熟した精神は、様々なシーンでプラスに働くでしょう」
A. 「子供の骨は、いわば“未完成の骨”で、成長軟骨を含む軟骨部分が多く含まれています。軟骨は衝撃に弱く、大きな負荷がかかると変形したり、折れたりしてしまうため、過度な練習はご法度。なお、走っている最中は、体に体重の約3倍ほどの負荷がかかるといわれており、骨にも大きな負担がかかっています。子供は大人のミニチュアではないことを肝に銘じて、オーバーワークにならないよう注意しましょう。
また、子供に教える際の態度にも、ぜひ注意を。期待が高まると、指導する時の口調がつい強くなってしまいますが、これでは子供がやる気を失くしてしまいます。子供のコーチではなく、チームメイトになったような気持ちで練習に挑みましょう。“追いかけっこ”など、遊びを取り入れて走る楽しさを教えるのもオススメです」
A. 「運動会やスポーツテストでかけっこに挑む直前に、ジャンプなど瞬発的な動きをしたり、10mほどの短い距離をダッシュするのがオススメです。緊張して胸がドキドキしていても、心拍数が一気に上がった直後にストンと下がり、緊張が抑えられるため、本領を発揮しやすくなります。また、筋肉に刺激が加わるため、パワーが出しやすくなります。
しかし、何よりも効果的なのは、普段からしっかりとした体づくりに励むこと。日々、睡眠時間を確保し、栄養バランスのとれた食事を摂り、適切な運動を行うことで、“パワーが出しやすい体”がつくられるのです。加えて、背が伸びて足が長くなれば、1歩のストライドが大きくなるため、おのずとタイムが縮まるはずです」
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