2023.08.09
2020.04.10
2024.06.19
千葉伸太郎さん
医学博士。太田総合病院記念研究所太田睡眠科学センター所長、日本睡眠学会副理事長。耳鼻咽喉科専門医として睡眠障害などの治療にあたるかたわら、睡眠の啓蒙活動や寝具の開発などにも尽力する。著書に「子どもの脳をつくる最高の睡眠 勉強、運動のできる子は、鼻呼吸をしている」(PHP)。
●全部で3つ以上該当……よい眠りができていない可能性
●全部で5つ以上該当……要注意。すぐ睡眠の改善が必要
家庭チェックポイント
□帰りが遅く、家族全体で夜更かし傾向
□週末に寝だめをして朝寝坊している
□スマホやゲーム、就寝時間は子どもの自主性に任せている
□親が睡眠時無呼吸症候群である
子どもチェックポイント
□朝自分で起きられない
□起きてから機嫌が悪い
□夜、なかなか寝ない
□風邪をひきやすい
□同年代の子どもの中で身体が小さい、痩せている
□普段から口がぽかんと開いている
朝
❶起床時間を一定にする
起床時間がずれることが、リズムを崩す一番の原因。平日も休日も、遅寝した翌日も、毎日同じ時間に起床しよう。どうしても休日に朝寝坊してしまう場合も必ず2時間以内に収めよう。
❷太陽の光を浴びる
朝起きたらすぐにカーテンを開けて5~10分程度太陽の光を浴びて、体内時計をリセット。晴れの日なら窓際にいくだけでOK。曇りや雨の日はできればベランダに出るといい。
❸朝食をきちんと食べる
朝食は体内時計のリセットボタン。噛む、飲み込む、消化するなど、食事で身体の機能が動き出すので、朝食を抜くと身体がしっかり目覚めない。
昼
❹日中に運動して疲れをためる
人間は昼に体温が上昇し、夜に向けて徐々に下がり眠気がやってくる。昼間の活動量が少ないと、1日の体温の上下が少なく寝つけない原因になるので、積極的に外遊びなどをして体力を発散しよう。
❺昼寝は15時までに1時間程度
幼児には昼寝が必要だが、昼寝のしすぎで夜の睡眠に影響が出る場合もある。夜の睡眠でしか睡眠の機能は果たされないので「昼寝は補助的役割」と理解しよう。個人差もあるが、夜眠れない子の場合、昼ぐっすり眠りすぎないよう1時間程度が望ましい。
夜
❻入眠儀式となるルーティンをつくる
眠る前の一連の行動を「入眠儀式」としてルーティン化してみよう。寝る時間から逆算してお風呂の時間、食事の時間などを一定にし、毎日繰り返すことで脳に「寝る時間」がインプットされる。また「8時にテレビを消す」「歯磨きをする」などの行動で覚醒のスイッチが1つずつオフになり眠りの準備が整う。
❼寝る1時間前までに湯舟に浸かる
人間は脳や内臓などの身体内部の温度「深部体温」が一度上がり、下がったときに眠くなる。効果的なのは寝る1時間前までに38~40度のお湯に10~15分しっかり浸かること。風呂から上がってすぐに眠れないのは、深部体温が下がり切らないから。例えば食事よりお風呂を先にすれば、食事の間に下がり、自然な眠気が訪れる。
❽寝る1時間前はメディアオフ
夜は光の刺激をセーブすることが快眠の絶対条件。調光が可能なら部屋の明かりを暖色にして少しずつ暗くしたり、ブルーライトが強いテレビやスマホ、ゲームは就寝30分~1時間前は避けよう。
❾親も食後はゆったり過ごし一緒に眠る
夕食後は興奮するような身体を動かす遊びもテレビもオフにしよう。夜に親が忙しく動いていると子どもの眠気もやってこないので、夜の家事は最少限にし、翌朝に回せるものは思い切って回すことにもトライしてみよう。光の調整や静けさを作ったり、親も一緒に寝るなど「家ごと眠る」環境づくりが不可欠だ。
Case1
オカピさんファミリーの場合
<10日間実施>
●家族構成:長女(3歳)、ご両親
●子どもの平均睡眠時間:8時間半程度(昼寝+2時間)
●睡眠の悩み:夜なかなか寝ない、早く寝たら5時に起きてしまうなど
オカピさんのお子さんの場合は、夜の睡眠不足を補うために昼寝で2時間ぐっすり寝てしまい、またその夜の寝つきが遅くなるという生活リズムの乱れが定着してしまっている可能性があります。
眠りが本来持つ働きは夜に出るので、夜の睡眠時間を延ばし、昼寝はプラスα程度にとどめたいところ。保育園の先生と相談の上昼寝は1時間程度で起こしてあげたり、夜布団に入る時間を早めたり、お風呂の入り方などを調整して“夜に眠る力”をつけていきましょう。夜間の遊びも身体を動かして興奮しないよう気をつけてくださいね。
朝はカーテンや窓を開けてしっかり太陽の光を浴びることで、目覚めが良くなり、朝食もモリモリ食べるようになりました。20時に布団に入るようにトライしましたがなかなか眠気が来ない状態が続いたので目標を20時半に切り替えました。
以前は寝室に入ってもベッドでジャンプして興奮したりすることも多かったのですが、予防策として布団に入ってすぐに絵本を読みゆっくり過ごすようにしていたら、次第に静かに過ごせるように。
保育園の昼寝調整はなかなか難しくできませんでしたが、家族で睡眠について考える良い機会になりました。
Case2
けーさんファミリーの場合
<10日間実施>
●家族構成:長女(小4)、次女(小2)、長男(3歳)、ご両親
●子どもの平均睡眠時間:全員8~9時間程度(長男のみ昼寝+1時間半)
●睡眠の悩み:睡眠時間が短い、睡時間の確保が困難、日中眠そうなサインが出ている、毎日生活リズムが一定しない
けーさんご家族の場合、本来なら末っ子の長男に生活スケジュールを合わせるのが理想ですが、下のお子さんたちが上のお子さんに合わせてきたことで年齢相応の「眠る力」が未熟な可能性があります。今回の大きな改善ポイントは「寝る前のメディアオフ」と「お風呂の時間」。
また、毎日のスケジュールを一定化しないと眠る力がつかないので、平日遅い時間の習い事を将来的には休日の日中に変えるなど検討してみると良いでしょう。年齢の離れたお子さんが3人いると、家族の生活リズムを合わせることが本当に大変だと思いますが、できることから1つずつ取り組みましょう。
やり始めて6日目くらいから、末っ子は自分から目が覚めるようになり、1番起きられなかった次女もすっきり起きられるようになり、みんな前よりも朝ご飯を食べられるようになりました。習い事がない日は20時半頃に布団へ、21時には就寝。ある日でも21時半には就寝できています。
入浴時間の変更や夜のメディアオフも次第に嫌がらなくなり、末っ子は声掛けするとすんなり布団に入り自分から「寝よう」という日もあるくらいです。
子どもは宿題を、親は家事などを「朝できることは朝に回す」と割り切って取り組めましたが、朝に宿題というのはなかなか難しく……今後の課題ですね。
文:松永敦子
イラスト:岡本倫幸
FQ Kids VOL.15(2023年夏号)より転載
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