2021.04.18
2024.08.07
2023.12.07
寝ないとどうなるか。睡眠専門医の渥美正彦さん※によると、マウスの実験では、「過食になり」「体温が下がり」やがては「死んでしまう」そうです。人間にも基本的に同じ傾向があり、心身にさまざまな悪影響を及ぼします。
人間の寝ない世界記録はスタンフォード大学の睡眠研究者が立ち会った実験で、264時間(11日間!)。そこから先はどんなことをしても眠ってしまうとか。
寝ないと脳の中にアミロイドという物質が蓄積していき、それが認知症の原因にもなると考えられているそうです。渥美正彦さんの研究では、発達障害(ADHDなど)と睡眠障害の高い合併率も指摘されています。
※出典:睡眠専門医渥美正彦
そんな中、現代日本では、夜なかなか寝ない子どもが増えています。日本はいまや世界有数の「子どもの睡眠時間が短い国」になっているとか。子どもたちがスマホやタブレットを触る時間も増え、睡眠や生活リズムの乱れが自律神経に影響を与えているといわれています。
では「良い眠り」とはどんな眠りなのでしょうか。良い眠りは「自律神経」を整え「幸せホルモン」を作り、「免疫力」を高めるといわれています。まずはたっぷりと長時間眠ることが大切です。
睡眠には深い眠りの「ノンレム睡眠」と比較的浅い眠りの「レム睡眠」の2種類があり、深いノンレム睡眠は成長ホルモンを分泌。子どもにとっては必須です。さらに成長だけでなく、身体の修復にも関わっており、それが「免疫」を高めるといわれています。
浅い眠りの「レム睡眠」も大切で、記憶や学習を固定化させるという役割があるといわれています。チンパンジーと人間は遺伝子的にはほぼ同じなのに知能の違いがあるのは、レム睡眠の違いによって起きているという説もあるそうです。知性にとっては、レム睡眠が重要なわけですね。
シュタイナー教育では、眠ることは、単に身体を休めるということ以上に、大きな意味を持っていると考えられてきました。特に「七歳までは夢の中」と考え、乳幼児期の子どもたちは、ふんわりした、夢のような世界にいると考えます。
シュタイナーは、「人は眠っている間に天界に行き、新しい力をもらってまた地上に戻る」と考えていました。そして夢見の世界で出会う、超感覚的な存在を「天使たち」としてとらえました。眠っている間、子どもの魂は、天使たちに囲まれます。
子どもたちは昼と夜を繰り返しながら、夢見の世界から、昼の現実の世界へと入っていきます。なので、この毎日のリズム、規則性が重要と考えられています。
暮らしの中に繰り返されるリズムは、地球、月、太陽を含めた天体、宇宙のリズムです。太陽の光と夢見。その大きな流れの中に包まれていることで、健やかに成長します。シュタイナーは、毎日同じリズムの繰り返しによる「安心感」そして「太陽の光」によるリセットを重視してきました。
これは図らずも、20世紀のスピリチュアリティと21世紀の最新の脳科学が同じ方向を示していることを指します。
新生児微笑と言われる、赤ちゃんの天使のようなほほ笑みはレム睡眠の「夢見」といわれています。そして、その時期は脳細胞の増殖時期とも重なっています。まさに天使が見せてくれる「夢見」が知性を育んでいるといえるでしょう。
谷崎テトラ
1964年生まれ。放送作家、音楽プロデユーサー。ワールドシフトネットワークジャパン代表理事。環境・平和・社会貢献・フェアトレードなどをテーマにしたTV、ラジオ番組、出版などを企画・構成するかたわら、新しい価値観(パラダイムシフト)や、持続可能な社会の転換(ワールドシフト)の発信者&キュレーターとして活動中。シュタイナー教育の教員養成講座も修了。
HP:www.kanatamusic.com/tetra
FQ Kids VOL.15(2023年夏号)より転載
編集部のオススメ記事
連載記事