家族が幸せな人生を送る秘訣とは? ミヒャエル・エンデに学ぶ「時間の使い方」

家族が幸せな人生を送る秘訣とは? ミヒャエル・エンデに学ぶ「時間の使い方」
ウイルスと共生するライフスタイルが確立した今日。「時間」の価値も大きく変わった。家族といる時間、仕事の時間をどうマネジメントするのか? その「時間」を計る物差しはあなたの心かもしれない。

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人類は「時間」の使い方を学び直している

2020年の上半期が終わって、あらためて新型コロナの拡大でこの半年で75億の人類のライフスタイルが変化していることを感じています。前回のコラムで取り上げたように単なる感染症への恐怖を超えて、社会変化に伴う恐怖と向き合う段階をすぎ、共生するしかないという「withコロナ」※1の認識も広がり、今社会はウイルスと共生する世界を模索し始め、これまでの社会の在り方を反省し、学び始めたように思います。その最も重要な学びは「時間の使い方」ではないでしょうか?

今回は「時間」の使い方についてお話ししたいと思います。

多くの仕事がリモートワークになり※2、在宅での仕事にシフトするようになりました。いちばん大きな変化は「仕事上での時間の管理の仕方」すなわち「タイムマネジメント」です。通勤時間が無くなったことでプラスの時間を作れるようになりました。打ち合わせ場所への移動時間はなくなり、勤務する時刻はかなりフレキシブルになりました。自分の時間配分で仕事ができるようになり、自宅での生活時間にそれぞれの仕事の時間を組み入れていくスタイルになりました。

これ、僕のようなフリーランスの人間はもともとそうなのですが、タスク管理さえできてれば、比較的自由に仕事をしていいんだという空気が広がり、それによって社会全体が少し「柔らかく」なったように感じます。これ、良いことと思います。

タイムマネジメントは、単なるスケジュールの管理ではありません。やるべき目標を達成するためにタスクを効率的に進め、時間を有効活用するためのスキルです。それに加えて、いかに「人」としての時間を組み入れていくか、「家族」や「子供」や「友人」や、その他様々な生活時間を含めての「時間の優先順位」をマネジメントする必要が出てきたわけです。

打ち合わせと打ち合わせの間に犬の散歩を入れたりする。お子さんと一緒の時間が増えたという人も多いのではないでしょうか。夫婦の会話が増えたという調査結果もあるようです。(一方で喧嘩も増えたという意見もありますが……)ネット会議をしているとそれぞれの自宅の風景が見えたりします。子供の声やワンちゃんの鳴き声が聴こえることもあり、ほのぼのとした時間が流れます。

服装もラフになり、会社や仕事で見る顔と違った、人としての時間生活者としての顔が垣間見えたりします。これはとても良い側面があると僕は考えます。

人類は「時間」の使い方を学び直している

カール・ヒルティはその『幸福論』の中で、幸せな人生を送る秘訣は「人生の中で“一番長く使う時間”を幸せに過ごすこと」と述べています。人生の中で“一番長く使う時間”すなわち「仕事の時間」を、楽しく創造的に過ごすか、奴隷のように過ごすかで人生は全く違ったものとなると言います。

ステイホームで半年経つと、「お金を稼ぐ」っていう視点から見るとすごくムダに思えるような時間が増えていくのに気づきます。ベランダでハーブを育てたり、子供と散歩したり、家でゴロゴロする、友だちとしゃべる、絵を描く。どれも全部生産性はないし、効率化したり、タスク管理するようなことではないけど、この時間は、紛れもなくぜんぶ、自分が自分でいる時間だったりするわけです。

今、植物の検索アプリのダウンロード数が増えているそうです。散歩に行く人が増えて、歩いてる途中、路傍の花や季節の草木に目を止める人が増えたということ。

時間とは、生きるということ、そのもの。そして人のいのちは心を住みかとしている。その時間を計る物差しは「心」なのだ、と作家のミヒャエル・エンデは言っています。

“「光を見るためには目があり、音を聞くためには耳があるのとおなじに、人間には時間を感じとるために心というものがある。そして、もしその心が時間を感じとらないようなときには、その時間はないもおなじだ。」『モモ』ミヒャエル・エンデ”

社会が立ち止まっている間に、僕たちの心がいろんなものを感じ始めたように感じます。考えてみると頭は働いているけど、心が動いていない時間というのをどれだけ長く過ごしていたのだろうか、あらためて大切なものは何か、感じる心が少しづつ、動き始めたのではないか、と僕は思うのです。

*1:「withコロナ」yahooの安宅和人さんによるコロナと共存する社会の見方。コロナが完全終焉する「afterコロナ」はなく、コロナと共存する社会のことを「withコロナ」という。
*2:株式会社販売による、「緊急事態宣言」前後におけるアクティブワーカー(都内中心の20~39歳男女約300人の意識調査)のライフスタイルの変化調査によると、約7割以上の方がリモートワークへなったと回答。

プロフィール

谷崎テトラ(TETRA TANIZAKI)
1964年生まれ。放送作家、音楽プロデューサー。ワールドシフトネットワークジャパン代表理事。環境・平和・社会貢献・フェアトレードなどをテーマにしたTV、ラジオ番組、出版を企画・構成するかたわら、新しい価値観(パラダイムシフト)や、持続可能な社会の転換(ワールドシフト)の発信者&コーディネーターとして活動中。シュタイナー教育の教員養成講座も修了。

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FQKids VOL.03(2020年夏号)より転載

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