2022.01.20
2022.05.13
2023.02.25
おやおや? 気になる子ができたのかな? 幼いわが子の様子を見て、そんなふうに微笑ましく思うこともありますよね。あんまり可愛いので、ついからかったり、茶化したりしてしまいがちですが、最初が肝心。ちょっと深呼吸して考えましょう。自分の小さい頃を思い出してみると……どうでしたか?
たしか私が小学1年生の時に、幼稚園で同じ組だった違う小学校に通う男の子が遊びに来てくれたことがありました。庭で一緒に縄跳びをしたのを覚えています。
近所のおばさんに「わざわざお家まで遊びに来るなんて、あの子は慶子ちゃんのことが好きなのねぇー!」と言われて、びっくりしました。それでなんだか気まずくなってしまって、その子とは会わなくなってしまったのでした。
おばさんに悪気はなかったのでしょうが、別にあんなこと言わなくてもよかったんじゃないかなーと思います。黙って見守ってくれたら、私とその子はただ一緒に楽しく遊べるお友達でいられたと思うのです。
その時に、男の子と2人で遊ぶのは特別なことなのかぁと初めて性別を意識しました。でももしその子が私に恋愛感情を抱いていても、それをどうするかはその子が決めれば良いこと。周りがあれこれ言うのは余計なお世話ですよね。
私は中高以外は共学で育ったのですが、男子とふざけたり遊んだりするのが割と好きでした。小学校の中学年ぐらいから、そんな自分はもしかして「男好き」なのかなぁと悩んだものです。これも今思えば本当~にいらぬ悩みでした。一緒にいて楽しい人といれば良い、それだけのことなのに。何でも恋愛や性愛に関連づけてしまうのって、すごく窮屈な考え方だと思います。
すぐに「好きな子はいるの?」などと聞く大人も苦手だったなぁ。こちらの反応を窺いながらからかうように言われると、馬鹿にされているような、汚されるような感じがしました。それで不機嫌になると「わぁ、照れている」とか言われるのも、めちゃくちゃ腹立たしかった……。
でも、テレビでは仲の良い男女がからかわれたり冷やかされたりされるのが定番だったので、私も他の子にはそういうことを言ってしまっていました。昔は「あっちっち」などと囃し立てるのがお決まりだったのです。
子供なんてそんなものだよ! まだ小学校にも上がらない歳からポリコレ※なんか教えなくても……とうんざりしている人もいるかな。でも、三つ子の魂百までという言葉もあります。大人にされたことを、他の子にしてしまうこともあり得るので、恋愛感情の芽生えに気づいたら、からかったり冷やかしたりしないでそっと見守ってあげたいですね。
※ポリティカル・コレクトネス(英:political correctness)の略:言語表現や創作物、社会制度などからあらゆる差別をなくすべきだという考え方のこと。/weblio辞典より
男の子にちょっかいを出されて嫌がっている女の子に「◯◯くんはあなたのことが好きなんだよ!」と言うのもあるあるです。好きな気持ちをうまく表せないだけなんだよとか、モテてよかったねなんて、軽い気持ちで言ってしまう。
そう言われて、子供は「えっ、◯◯くんが私の髪を引っ張るのも、わざと変なあだ名で呼ぶのも、私のことを好きだからなの?(ポッ)」となるでしょうか。ならないですよね。嫌がらせされて困っているのに、大人に茶化されたら相談できなくなってしまうでしょう。
それに、そういう声かけは周りの子供に対して「好きな子に嫌がらせするのはアリ」というメッセージになってしまうので、百害あって一利なしです。こういう声かけはおじいちゃんやおばあちゃんが悪気なくやってしまうこともあるので、注意が必要ですね。
今年、オーストラリアの教育省は幼稚園児から高校生までの同意教育を必修化しました。きっかけは1人の高校生が「(性暴力を減らすために)性的同意についてちゃんと教えて」という署名運動をしたこと。
なんで幼稚園児から? と疑問に思う人もいるでしょう。ポイントは、いきなり性的同意について習っても身につかないから。幼稚園児の時から、まず人に敬意を払うことを学びます。
幼い頃から普段のコミュニケーションで「相手を大切にする」「何事もちゃんと相手の同意を取ることが大事」という習慣を身につけ、その延長上で、性的な接触をする年齢になったら性的同意の重要性を学ぶ必要があるというのです。
これにはとても共感しました。性的同意は単なるセックスの手続きではありません。性的な場面以外でも相手を慮って意思を尊重する態度と、不可分ですよね。敬意をもって人に接する教育を幼い頃から始めるのは、本当に大切なことだなぁと思います。
誰かを好きになるのは素敵なこと。うんと幼くても、その気持ちはそっと大切にしてあげたいですね。
同時に、どれほど仲良しでも他人の体をむやみに見たり勝手に触れたり、自分の体を見せたり触らせたりしてはいけないということや、恋愛感情は嫌がらせや暴力の理由にはならないということも、幼い頃から教えてあげたいもの。大人も、何でも恋愛とセックスに絡めて茶化してしまう習慣を捨てるチャンスです。
小島慶子(こじま・けいこ)
エッセイスト、タレント。東京大学大学院情報学環客員研究員。昭和女子大学現代ビジネス研究所特別研究員、NPO法人キッズドアアドバイザー。1995年TBS入社。アナウンサーとして多くのテレビ、ラジオ番組に出演。2010年に独立。現在は、メディア出演・講演・執筆など幅広く活動。夫と息子たちが暮らすオーストラリアと日本とを行き来する生活を送る。著書『曼荼羅家族』(光文社)、他多数。
Twitter:@account_kkojima
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公式サイト:アップルクロス
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