2024.02.02
2023.09.21
2022.05.23
>>関連記事【非認知能力を身につけると学力も伸びる!? ポイントは乳幼児期の「親の働きかけ」】
1960年代、スタンフォード大学の心理学者・ミシェル博士が作った、有名なマシュマロ・テスト※で判明するのは、『のちの満足のために今の欲望を我慢できるかどうか』。つまり自制心の有無だ。その結果が学力をはじめ、将来の社会的成果に影響する。
※:4歳児の目の前にマシュマロを置き、「15分間食べるのを我慢できたら、2個にしてあげる」と言って立ち去り、その子が我慢できるかどうかを観察する、という心理テスト。
非認知能力を象徴する「やりぬく力」に直結する自制心は、勉強やスポーツなどあらゆる目標達成のために不可欠な“生きる力”だといえるだろう。
「今の子供たちは、ゲームやさまざまな遊び道具が自分の半径2~3mに揃っているような環境にいます。その中で勉強を自ら選択するのは、難しいこと。むしろ、ゲームをしてしまう子供の方が自然だといえます。
でも、『今ここでゲームをせずに宿題を終わらせた方が、あとで思いきりゲームを楽しめる』と、その先を見通して考えることができる子は、誘惑に打ち勝つことができます。自制心とは、つまり『見通し能力』なのです」。
その見通し能力を身につけるのに必要なのが、前述した言語能力だという。
「4、5歳の子供は、『のりがうまくつけられないな』など、自分の思考をそのまま口にします。いわゆる独り言で、これを外言といいます。対して、発声を伴わず心の中で用いる言葉を内言といい、この内言への分化は幼児期に始まります。頭の中で一旦言葉にして整理してから話せるようになっていく。
この内言化が進むと、あらゆることを自分で考えてできるようになります。『こうしたらこうなるから今やっておこう』という風に見通しを持った子供になる。内言化とは、言語能力のひとつ。つまり、言語能力がないと自制心は育たないんです」。
自制心とは、自分で考え、自分で決める力。身につければ、人生の可能性が広がっていく。
自制心(見通し能力)
どうやって伸ばす?
「我慢できてえらかったね」で
終わらせない
自制心を育てるには、自制心が働いたことを褒めるだけではなく、その理由を大人が理解してあげることが大切だという。
「例えば、『我慢できてえらいね』だけじゃなく、『どうして我慢できたの?』『どういうことを考えたの?』まで聞いて、子供の思考過程を知り、大人が認めてあげることが大切。そうすることで、こう思ったからこういう感情になったんだ、と子供側にも納得感が生まれ、深いところで理解できるようになります」。
増田修治先生
白梅学園大学子ども学部子ども学科教授。1958年生まれ。埼玉大学教育学部卒。小学校教諭として28年間勤務経験を持つ。初等教育の教員育成に携わるとともに、保育・幼児教育・小学校教育における子どもの発達や学力、いじめなど多様な課題に取り組んでいる。著書に、『笑って伸ばす子どもの力』(主婦の友社)、『「ホンネ」が響き合う教室』(ミネルヴァ書房)、『幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿を育む保育実践32』(黎明書房)など多数。
文:曽田夕紀子
編集部のオススメ記事
連載記事