運動能力や集中力にも効果あり!? 9歳までに体幹を育てるメリット&理想的な方法

運動能力や集中力にも効果あり!? 9歳までに体幹を育てるメリット&理想的な方法
運動能力向上に関係すると言われる体幹の発達。ただ、幼児期から過度なトレーニングは必要なく、「遊んでいるうちに体幹が育まれた」というのが理想的だと言う。スポーツ科学の専門家・高橋宏文教授に詳しく伺った。

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過度なトレーニングはNG
遊びながら体幹の力を育もう

同世代の子供がスイスイとやっている遊具ができなかったり、鬼ごっこですぐにつかまってしまったり……。幼児期の子供が公園や遊び場で遊ぶ姿を見て「もしかして、うちの子って運動神経悪いのかな?」という場面に遭遇したことはないだろうか。そもそも、運動神経がいいとは、どういうことなのだろう。

スポーツ科学を専門とする、東京学芸大学の高橋宏文教授によると「『運動神経がいい人』の定義は難しいですが、私は『自分の体をイメージ通りに動かすことができる人』がそうであると考えます。

運動神経という神経はないので、つまり運動能力が高いという状態を指しますが、これは神経の回路が発達し、脳で考えたものを器用かつスピーディーに、的確に動きとして表現できるような状態にあることと言えるのです」。

その運動能力を発揮する条件の1つが「体幹」であると言う。

「体幹を鍛えたから運動能力が高くなる、という単純なものではありませんが『こうやれば身体はこう動くだろう』と自分のイメージ通りに身体を操作する時の根幹となる部分ですし、的確な動きや姿勢の安定、維持などに体幹・バランス能力は欠かせません」。

それでは、幼時期から体幹トレーニングに取り組めば、スポーツ分野で将来有望ということだろうか。

「それは少し違いまして、プレゴールデンエイジ期に過度な負荷のある体幹トレーニングをしてしまうと、子供が運動を嫌がったり、身長が本人の本来持つ最大値より伸びづらいなどのデメリットもあります。ですので、この時期には年齢と発達に応じた『全身を使う運動遊び』を多く経験させてあげるだけで十分です。

遊びや運動は姿勢の変化の連続です。その際は体にぐっと力が入り姿勢を維持しつつ、身体を思った通りに動かすという複雑なことを行っているので、体幹やバランス感覚が磨かれていきます。こうして手足をさまざまな形で使い、動き、遊ぶことを繰り返すうちに『勝手に』『いつのまにか』体幹の力が育まれ、運動能力の土台が築かれていくでしょう。

具体的には公園などの遊具やボール遊びなどを通して『立つ、座る、転がる、走る、跳ぶ、登る、蹴る、ぶら下がる』などの多様な動きを積極的に行うと良いと思います。その際は大人が一緒に遊んであげてください。子供は見本があると動作をつかみやすく、身につけやすくなります」。

運動能力の土台作りは2~9歳に!
「プレゴールデンエイジ」とは?

人間の一生の中で、運動に関する動きを身につけるのに最適と言われ、上達が早い9~12歳くらいの時期を指す「ゴールデンエイジ」。その前段階である2~9歳の時期を「プレゴールデンエイジ」と呼び、より専門的な運動ができる準備の段階といえる。

運動に関係する神経の回路が発達してゆき、体を動かす楽しさを知っていく時期なので、この時期は多様な運動・遊び、生活の中の動作によってさまざまな動きの基礎を習得し、身体能力や運動能力の土台を築く重要な時期と考えられている。

プレゴールデンエイジに
体幹を“育てる”メリット

手足の安定
身体の中心となる体幹がしっかりしていると、腕を振ったり走ったりと手足を動かす運動の際に安定しやすくなり、思うように動きやすくなる。

姿勢の維持
運動の基本となる構え姿勢などがしっかりとれるようになり、動き出しがスムーズになる。また、体勢が崩れても立て直すことが簡単にできるようになる。

ケガの予防
運動中の姿勢変化において、バランスを維持することができる。転びそうな時にも上手に体勢を保ち、思わぬケガの予防にも役立つ。

学習の集中力UP
体幹により学習時の姿勢の維持が簡単になり、集中力がアップ。特に低学年に多い「机に長時間座っていられない」現象の緩和も期待できる。

動作中の姿勢の安定
走る、ボールを取る時などの動的な姿勢変化の際に、姿勢の安定は不可欠。姿勢が安定することで動作がスムーズになり、能力を発揮しやすくなる。

教えてくれた人

高橋宏文さん
東京学芸大学教育学部健康・スポーツ科学講座教授。1970年神奈川県生まれ。1998年より東京学芸大学に勤務。現在は、運動指導全般において「運動する力」を伸ばす研究を行っている。著書に「子どもの身体能力が育つ 魔法のレッスン帖」(メディアパル)など。

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文:松永敦子

FQ Kids VOL.09(2022年冬号)より転載

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