2020.10.19
2022.05.09
2020.11.15
近年、教育の現場で重視されている新しい価値基準「非認知能力」。IQや偏差値など数値では測れない「学びに向かう力」「人間性」のことで、文部科学省の新学習指導要領(幼稚園2018年度、小学校2020年度〜)にも教育の柱のひとつとして明記された。“生きる力”ともいえる「非認知能力」を育てるうえで、「自然は最高の学び場」と、自然教育に長年取り組むアウトドアプロデューサーの長谷部雅一さんは話す。
木の実を見つけたよ。これ、食べられる?
「思考力、判断力、表現力といった人間性をさす非認知能力は、自然と触れ合うことで培うことができます。虫を見つけた、捕まえたいからこうやってみよう、うまくいかない、それなら次はこうしようと工夫してみたり。木の棒を拾ってチャンバラをしてみたり、魔法のステッキと見立ててごっこ遊びをしてみたり。子供たちの表現力が勝手に育っていく資質が自然にはあるんです」。
小さいお魚いっぱい! 捕まえられるかな
焚き火、川遊び、虫捕りなど、五感を刺激するさまざまな体験ができるキャンプは、まさにうってつけの機会だ。宿泊が伴うキャンプならさらに効果的だという。
「単純に自然のなかで遊ぶ時間が増えるだけでなく、夜間や早朝など時間軸が増えることで、得られる刺激も豊かになります。夜、真っ暗闇に包まれることも、普段の生活ではなかなかできません。それだけで特別な体験になります」。
「非認知能力」を育てるという視点で、キャンプをより濃密な体験にするためには、事前の準備も重要、と長谷部さん。
「現地に着いたら何をして遊ぼう、夕飯は何にしようなど、出発前から親子で作戦会議をするのがオススメです。虫を捕りたいなら『図鑑で調べておこう』など、アクションに結びつけるのも効果的。ただ連れて行かれるのではなく、『自分が行きたい』『自分でやりたい』という行動意欲に変わってきます。自分で考えて自分で行動を起こすきっかけになりますよ」。
子供の意欲を引き出すうえで重要なのは、親が大らかな気持ちで見守ること。その点においても、キャンプは非常に適した環境だという。
「日常だと、子供に何かを求められても、例えば『いま手が離せないからテレビ見てて』などと、違うものに置き換えてしまいがち。でも、自然の中なら大人も素直でフラットな気持ちになり、子供と向き合うスタンスも変わるはず。いつもより待てるようになったり、口出ししないで済むようになったり。
アウトドアなら子供が汚れても気になりません。日常では、『失敗しないために』子供に注意をしてしまいがちですが、それを「全部なしね」とすると、自分で失敗しながら答えを探していくようになる。普段やらないようなことも、ぜひ挑戦させてあげましょう」。
ふわふわの羽を発見。誰の落とし物だろう
実践編はこちら⇒おすすめのキャンプアクティビティ8選
長谷部 雅一さん
1977年4月5日生まれ。アウトドアプロデューサー、ネイチャーインタープリター。ナイフと焚き火をメインにしたプリミティブなキャンプの方法を伝え続けている。親子や子供向けの自然体験プログラムは、幼児施設で子供の非認知能力を育むための年間プログラムを展開。新刊「自然あそびで子供の非認知能力が育つ 」(東洋館出版社)が7月15日より発売。
写真・文:曽田夕紀子
モデル:関大樹さんファミリー
FQ Kids VOL.03(2020年夏号)より転載
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