子供の感性を育むのは特別な経験だけ? 本当に大切にしてあげたい日常の中の自然体験

子供の感性を育むのは特別な経験だけ? 本当に大切にしてあげたい日常の中の自然体験
わが子に幼いうちから自然体験をさせてあげたいと、お出かけに力を入れているファミリーは多い。でも、遠出やお金をかけたりしなくても特別な経験は得られると、小島慶子さん。日頃から大切にしたい、親子の習慣とは?

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お金をかけなくても
子供の心に残る自然体験

休みには、子供を自然の中に連れて行きたい! 本物の自然に触れて豊かな感性を育んでほしい。都市部で子育てをしている人は、そう思っているでしょう。

私も東京都心で息子たちを育てていたので、夏休みは地方の自然キャンプに参加させたり、ドライブで山の方に行ったりしました。オーストラリアに引っ越してからは周囲が国立公園だらけなので、家族旅行で大陸の雄大な自然を楽しんでいます。

でも、ちょっと原点に返って考えてみましょう。自然と親しむ、ってどういうことでしょうか。遠く離れた場所でしか、体験できないものでしょうか。お金をかけないと、本物は手に入らないのかな。

私は、オーストラリアのパースという街で生まれました。住宅地の目の前はスワン・リバーという大きな川。近所の砂洲で遊んだ記憶があります。3歳で日本に来て最初に住んだのは東京・清瀬市の団地でした。窓から鎮守の森が見えました。その後は郊外の新築一戸建て。周囲は空き地でいっぱい。

父の転勤先のシンガポールで暮らしたのは古い小さな一戸建て。濃密な熱帯の緑に囲まれていました。香港では高層マンション。島々が浮かぶ海の遠くから雨雲がやってくるのが見えました。猛烈な台風で、マンションがゆらゆらと揺れたものです。

どれも、絶景の大自然ではありません。人の暮らしのそばにある自然です。でも空き地で時間を忘れて虫取りをしたり、裏庭の椰子の木越しに南十字星を見上げた記憶は、色褪せることがありません。大人になってから住んだ都心の集合住宅では、近所の小さな公園から、夏になるとベランダにカブトムシが飛んできました。キュウリを育てたこともあったっけ。

自然を知って楽しむ、
大切にしたい親子の習慣

子供を遠くの大自然の中に連れて行くのは、もちろんいい経験になりますが、ただ自然の中にいれば目が開かれるわけではありません。大事なのは、普段から身の回りの小さな緑や生き物、季節を感じる景色などに目をやる習慣をつけることではないかな。

今、私がひとりで暮らしているのは都心のコンクリートだらけの街ですが、それでも散歩に行くと、季節ごとに小さな花が道路ばたに咲いているのに気がつきます。

子供の頃に育った郊外の一戸建ての庭には、両親がホームセンターから買ってきた色々な種類の木が植えてありました。そこで自然と植物の名前を覚え、中学からは池坊(いけのぼう)の華道を習ったので、花にも多少詳しくなりました。

高校から習った裏千家(うらせんけ)のお茶では、茶花に触れる機会がありました。だから今も、街を歩いていると「ああ、こんなところにシャガが」「おぉっフタリシズカが!」「もうコブシの花が膨らんでいるな」など楽しみがつきません。

私の部屋のある高さは何故か昆虫の通り道のようで、そばに木があるわけでもないのに、ベランダにタマムシやカナブンやセミがやってきます。それを救出がてら観察するのも、貴重な自然とのふれあいです。

山や海のそばに行かなくても、小さな自然は案外身の回りにあるものですね。

大人が教えるまでもなく、子供たちはいろんなものをじーっと眺めています。ダンゴムシや蝉の抜け殻を集めたり、蟻をつまんだりしていますよね。それを極力邪魔せず、親も一緒に楽しむことが大事なんじゃないかと思います。

わが子の視点に気づかされる
身近な世界の美しさ

次男がオーストラリアでまだ小学生だった頃のこと。一家で山の方へドライブに行き、中腹の見晴台へ。夫と長男と私が美しい丘の連なりに目を奪われている時、次男は腹這いになって、岩の窪みに隠れている小さな虫を眺めていました。

またある時、内陸の方にある巨大な一枚岩を見に行った時のこと。てっぺんに登ると、地平線まで続く雄大な原野を360度パノラマで眺めることができます。絶景に感動している私の足元で、次男は水溜まりの中の小さな小さなエビを見つめていました。

強風吹き荒ぶインド洋に面した断崖に延々と立ち並ぶ発電用風車を見に行った時には、「うおぉぉぉすごい」と叫ぶ私の横で、次男はそれはそれは美しい殻を背負った小指の先ほどのカタツムリを見つけました。

あぁ、なんて尊い、と毎度思います。次男の視点は私に、世界が命と驚きに満ちていることを教えてくれます。大自然の中で自分のちっぽけさを思い知ると同時に、足元にも、精緻で色彩豊かな生態系が広がっていることに気づかせてくれるのです。

一緒にしゃがんで小さな命を丁寧に見つめたら、世界の複雑さをより立体的に感じることができました。私は次男のこういうところが大好きです。

都会で忙しく暮らしていると、自然はどこか遠くの広々とした場所にあるものだと考えがちですよね。もちろん、旅は素晴らしい体験です! だけど実は、自然はすぐそばにある。それに気づく視点を持てたら、世界はもっと身近で、驚きに満ちた場所になるでしょう。

プロフィール

小島慶子(こじま・けいこ)
エッセイスト、タレント。東京大学大学院情報学環客員研究員。昭和女子大学現代ビジネス研究所特別研究員、NPO法人キッズドアアドバイザー。1995年TBS入社。アナウンサーとして多くのテレビ、ラジオ番組に出演。2010年に独立。現在は、メディア出演・講演・執筆など幅広く活動。夫と息子たちが暮らすオーストラリアと日本とを行き来する生活を送る。著書『曼荼羅家族』(光文社)、他多数。
Twitter:@account_kkojima
Instagram:keiko_kojima_
公式サイト:アップルクロス

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