「○○しちゃダメ」は子供の主体的を欠く? 発達心理学者・内田伸子先生が薦める“共有型しつけ”とは

「○○しちゃダメ」は子供の主体的を欠く? 発達心理学者・内田伸子先生が薦める“共有型しつけ”とは
親は子供に対して「こうしたい」とか「子育てはこうすべき」と考えがちだ。しかし、そういう育て方は「強制型しつけ」とされ、百害あって一利なし! 発達心理学・認知心理学の第一人者・内田先生に、どうしたら子供の力を伸ばせるのかお話を伺った。

共有型と強制型のしつけ
あなたはどちらのタイプ?

子供の頭をよくするにはどうしたらいいのだろう。発達心理学・認知心理学の第一人者として知られる内田伸子先生によると、親のしつけの仕方が大きく関わることがこれまでの調査から明らかになっているという。

「小学校のPISA型学力(覚えた知識を使って実生活の中で活用する能力)が高いお子さんに共通するのは、次の4点です。1つめが、幼児期に絵本体験が豊かで語彙が豊富であること。造形遊び・ブロック遊びが多く指先が器用であること。保育環境においては子供中心の遊びを大事にする環境であること。そして最後がとても重要なのですが、幼児期に“共有型しつけ”を受けているという点です」(内田先生)。

内田先生が行なった絵本の読み聞かせの場面やブロックパズルの解決場面での親子のやりとりを観察した調査によると、親のしつけの仕方には大きく2つのタイプがあるという。

「1つは、こうしたいという子育ての目標を強く掲げ、そこに向かって突き進んでいくタイプです。読み聞かせの時に先生役になることが多く、1つの言葉を是が非でも覚えさせるようにして、子供に教えこんでいきます」。これが強制型しつけだ。

「もう1つが子供中心のしつけ。禁止や命令ではなく、提案の形で選択の余地を残すような言葉がけをします。このタイプの親たちは、子供の視線が絵本のどの部分を捉えているかをよく見ながら、『ああ、ワンワンいたね』など子供が関心を持っている対象に敏感に応じてあげていました。これが共有型しつけです。どちらのしつけスタイルで育ったお子さんが、語彙が豊かで、主体的で自律的な行動ができるでしょうか。その答えは『しつけスタイルと語彙能力』のグラフを見れば明白です」。

実生活で活用できる「PISA型学力」

PISA(Programme for International StudentAssessment)は国際的な学習到達度調査。OECD(経済協力開発機構)加盟国を中心に2000年から3年ごとに行われている。

日本では義務教育を終えた高校1年生が対象。学校で学んだ知識・能力を実生活でも使えるかを問う「新しい学力」を測る試験とされる。「読解力」「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」の3分野に対し、選択式と記述式で構成され、2015年では72か国54万人を対象に実施。その結果、日本は「科学的リテラシー」で前回4位からシンガポールに次いで2位へ順位を上げた。

一方、以前から語彙力や読解力の低下が指摘されていた「読解力」は、前回の4位から2015年の8位へ。約4割を占める自由記述式の問題で日本人の無答率が高い。

普段の国語のテストでは自分で発信するより選択式の問題が多く、論理的に根拠を持って記述する形式には慣れていないのが原因とされる。

しつけスタイルの違いが
語彙能力にも影響を及ぼす!?

左のグラフの調査では、共有型しつけを受けた子供は語彙力が高く、強制型のしつけの子供は語彙力が低い傾向にあるという結果となった。強制型の親は「決まりを作りやかましく言う」、「すべきことを、するまで何回も指示する」。

一方的に親が指示するだけで、これでは語彙力は伸びない。共有型の親は「一緒に楽しい時間を過ごす」「一緒に外出や旅行するの
が好き」。すると子供は語彙力が豊富なだけではなく、リテラシー得点も高くなった。

子供を伸ばすのはやっぱり遊び!
絵本の読み聞かせも欠かせない

右グラフにある難関突破経験者とは、裁判官、検察官、弁護士などの司法試験や医者になるための医師国家試験、不動産鑑定士試験といった非常に合格率の低い試験や、偏差値68以上の大学・学部の試験に合格した人のこと。

首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)2000名を対象にしたweb回顧調査によると、難関試験突破組は、難関突破未経験者よりも子供時代に思い切り遊んだという人が12.7%も多い

特に、難関試験突破組の親は絵本の読み聞かせの時間と、子供が集中して何かに取り組める環境をしっかり確保していることがわかる。

難関試験合格者の多くは
共有型しつけを受けていた!

こちらも、難関試験に合格した経験を持つ人に対しての調査。こちらでもやはり、共有型しつけを受けていた方が合格率が高いという結果になった。

続きを読むにはこちら


文:脇谷美佳子

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