「パパママの大切なものって何?」子供に聞かれたら思い出したい“星の王子さま”の話

「パパママの大切なものって何?」子供に聞かれたら思い出したい“星の王子さま”の話
子供から「ねぇ、パパママの大切なものって何?」と聞かれたら、あなたはどう答えるだろう。COVID-19でより自分と向き合う時間が増えた今、自分が大切にしていることを改めて考えてみてほしい。

» 谷崎テトラさんの連載一覧はこちら!

あなたにとって、大切なものは何か?

あるインタビューで「あなたにとって、大切なものは何か?」というお題をいただきました。皆さんならどう答えますか? たとえばお子さんから尋ねられた時、どのように答えますか? 何が大切だと教えますか?

「愛」「やさしさ」「思いやり」「仕事」「お金」「生命」「地球」……。いろんな答えがあると思います。どれも大切。答えは一つと言うことはないかもしれません。

そもそも「大切」という言葉の意味はどういうところから来ているのでしょう? 「大事」とはどう違うのでしょう? wikipediaによると、言葉の定義は、以下の通り。

大切(たいせつ):重要または急を要することやもの。「大いに迫る」「切迫する」を語源とする和製漢語で、当初の意味は「急を要する」、後にこれが転じて「重要な」、さらにそこから派生して「愛しい」。

「大切」は、そもそも「大きく切る」と書きます。僕は「大切」とは自分の「人生の時間」を切り分けた時に、最も長い「時間」を占めているものなのかなと考えています。時間は有限で、人生は短い。そのなかで本当に大切なことってなんでしょうか? 優先すべきものは何なのでしょう?

自分が自分らしくあるために、「自分」である時間が大切なのはいうまでもありません。しかし、もちろん生活のために仕事をすることも、大切です。自分の人生をどう使うか、自分の時間をどう切り分けるか、そのバランスが大切です。

「仕事」の時間と自分のプライベートに使う「個人」の時間のバランスを「ワークライフバランス」と言いますが、さらに仕事以外に「社会」にかかわる時間を加えるのも大切です。

「個人」「仕事」「社会」の時間の切り分け

人生の時間を3つに切り分けて、「個人」「仕事」「社会」のそれぞれに配分するという考え方があります。こういった考え方は、古代ギリシャからの「道徳律」の一つですが、キリスト教や騎士道の精神の中で育まれてきました。「社会」や「地域」のために、「共同体」のために奉仕する時間、現代はそれに加えて、「地球」のために捧げる時間、それが「大切」です。

この「個人」「仕事」「社会」のいったい何にどのくらい「時間のウエイト」をおくかで、自分が何を「大切」にしているかがわかるのではないでしょうか。「個人」「仕事」「社会」に対する時間はきっちり分けられるわけではなく、それぞれにマージしているわけですが、どれかの時間が他の時間を圧迫していたりする場合は、どれも「大切」であることを思い出す必要があるのかもしれません。

でも考えてみると、1日24時間、すべての時間において、僕たちは「呼吸」をしているわけですね。「空気」や「水」は大切です。あらゆる時間において「生命」の維持のためには「食べ物」も大切です。その食べ物を生み出している「大地の恵み」や生産者さん、その「食べ物」を運ぶ配送業者や販売するお店によって、社会は成り立っています。その「つながり」こそが「大切」なのかもしれません。そしてその「つながり」に気づくこと、「感じるこころ」こそが「大切」なことと思うのです。

大切なのは「感じるこころ」

サン=テグジュペリの『星の王子さま』の中に有名な一文があります。

とても簡単なことだ。ものごとはね、心で見なくてはよく見えない。いちばんたいせつなことは、目に見えない

「大事なこと」は頭でもわかるけど、「大切なこと」は心で感じることでしか掴めないのかもしれません。その価値を判断するのではなく、感じること

環境哲学者のジョアンナ・メイシーはこのように言います。

『大切にする』という言葉は、あるものの価値を認識し、敬意をもってそれを歓迎する、ということを意味する。私たちが感じる、世界に対する痛みは、私たちに危険を警告してくれるだけでなく、私たちの深い思いやりを露わにする。この思いやりは、あらゆる生命が互いにつながり合っていることから生まれるものだ。それを恐れる必要はない」。

今回、当たり前のことを、力強く語ってみましたが、COVID-19でより自分と向き合う時間が増えて、この「大切なこと」を長らく忘れていたような気持ちになったことが、この原稿を書こうと考えた動機にあります。

最初の質問に戻りましょう。

「あなたにとって、大切なものは何ですか?」

皆さんならどう答えますか? またはお子さんから尋ねられた時、どのように答えますか? どのように、教えていますか?

プロフィール

谷崎テトラ(TETRA TANIZAKI)
1964年生まれ。放送作家、音楽プロデユーサー。ワールドシフトネットワークジャパン代表理事。環境・平和・社会貢献・フェアトレードなどをテーマにしたTV、ラジオ番組、出版を企画・構成するかたわら、新しい価値観(パラダイムシフト)や、持続可能な社会の転換(ワールドシフト)の発信者&コーディネーターとして活動中。シュタイナー教育の教員養成講座も修了。

» 谷崎テトラさんの連載一覧はこちら!


FQ Kids VOL.04(2020年秋号)より転載

連載記事 連載記事

〈連載〉照英さんの「子育て・夫婦のお悩み」一緒に考えます!
〈連載〉寺島知春さんの「非認知能力を育てる絵本」
〈特集〉「おうちで・楽しく・短時間で」実践に使える英語力をみにつける
〈連載〉てぃ先生の子育てお悩み相談室
〈連載〉小島慶子さんが語る「子育て 世育て 親育て」
〈連載〉平田オリザ “わからない”を超えるチカラ -演劇×コミュニケーション能力-
〈連載〉鶴岡そらやす先生の「子供の力を信じて伸ばす関わり方」
〈連載〉アフロ先生・阪田隼也さんの「大人と子供が響き合って、育ち合う」
〈連載〉佐藤卓/親子の「デザイン的思考」入門
〈連載〉和田明日香さんの「むずかしくない食育」
〈連載〉照英さんが実践する「子供の才能を伸ばす接し方・話し方」
〈連載〉谷崎テトラの「未来の地球人育て」
メニューフォームを閉じる

FQ Kids | 親子のウェルビーイング教育メディア

メニューフォームを閉じる