幼児期の性教育は5歳までに始めるべき!? 保護者&保育者に聞いた実態と必要性とは

幼児期の性教育は5歳までに始めるべき!? 保護者&保育者に聞いた実態と必要性とは
自分と他者を大切に思う心を養い、生命の尊さを感じる。そのために必要なのが性教育だ。幼児への性教育は簡単ではないが、保護者や保育に関わっている人たちへの意識調査の結果から、その方法を考えてみよう。

親同士でも相談しづらい
「性教育」の実際とは

あらゆる教育メディアで重要性が語られている「性教育」だが、実際家庭ではどうしているのだろうか? 自身が家庭で教わった経験が乏しい親世代は、わが子に必要だと思いつつも実行に移すには悩ましいところもあるだろう。親同士でも相談するのはためらわれるテーマかもしれない。

何歳くらいから、どんな内容を教えていけばいいのか? 調査結果から、多くの親が悩んでいることや、保育に携わっているプロの考えを探ってみよう。

いつから始めるのがいい?
保育園の考えは?

全国で認可保育園、認証保育所、児童発達支援センターや児童発達支援事業所などを運営するどろんこ会グループでは、自社の保育園、発達支援つむぎを利用する保護者、および勤務する全スタッフを対象に、幼児期の性教育に対する意識調査を行った。

まず、保護者の回答を見ていこう。「性教育にどのようなイメージをもっていますか?」の質問に対しては、大多数の保護者が「大切なことだと思う(96.2%)」と答えた。

また、「性教育はどの時期から始めるべきと思いますか?」と尋ねたところ、「3歳児から(25.4%)」が最多で、7割以上の保護者が5歳までに開始すべきと考えていることがわかった。保護者は早期に性教育を始めるべきだと感じているようだ。

理由には以下のような声が寄せられている。
●小さい頃から始めることで先入観なく子供が受け入れられると思う。3歳頃から自分の性器を触ったりと、特に男児は興味を持ち始めるようにも思うので。
●自分の体に興味を持つようになったり、他者と自分の体の違いに疑問を持つようになったり、質問されることが増えたのが3歳の頃でした。
●言葉を理解しコミュニケーションがとれるようになること、男女の性別を意識し始めるのが3歳頃だから。命の大切さを親から自然と伝えることができ、一番偏見なく受け入れてもらうには、意識の芽生える頃から始めることが大切だと思いました。

さらに、性犯罪に巻き込まれることを未然に防ぐことを意識した回答も多かったようだ。

続いて、「ご家庭で性教育は実施していますか?」に対しては、「必要だと思うが実施はしていない(49.7%)」「実施していない(21.9%)」が合わせて7割を超え、「実施している(28.5%)」のは3割弱にとどまった。

「保育園で性教育を行うことについてどう思いますか?」という質問に対しては、「必要である(73.2%)」との回答が7割を占めた。幼時から性教育が必要だと考えつつも、家庭では十分に実施できず、保育園へ期待している様子がわかる。

具体的には次のような声が寄せられた。
●1人目の子供であり、適正な教育方法がわからないので、経験のある保育園で実施いただけると非常に助かる。
●自分が正しい性教育を受けておらず、どう教えていいのかわからないので、保育園で行ってもらいたい。
●保育園で学ぶということは、子供にとっては家以外の場所で学ぶということ。家以外でも性のことに触れることで、子供ながらに公共性を感じられると思うため。
●同世代の異性の友達もいて、本人にとってより身近な話題から教えてあげられると思うから。

そして「保育園で子供たちに性教育を実施する場合、どのような内容を希望しますか?(複数回答)」という質問には、「プライベートゾーンについて」「自分の体の守り方」といった実生活に即したものが期待されている一方、「命の大切さ」「男女の体の違い」と根本的な内容も望まれていることがわかった。

次に、保育従事者の回答も見ていこう。「性教育にどのようなイメージをもっていますか?」の質問には、保護者同様に大多数のスタッフが「大切なことだと思う(93.2%)」と回答した。

性教育を開始する時期については、「5歳児から」の意見が多く見受けられたが、これはどろんこ会グループが2004年以降全園で性教育を5歳児から実施していることを反映していると思われる。

「保育園または発達支援の現場で性教育を実施する時に、必要と感じることは何ですか?」と尋ねると、最多は「スタッフの研修(71.1%)」だったが、「スタッフ間の考え方の一致」「保護者の理解」「適切なプログラムや教材」も多かった。いずれも保護者にとっても望まれるところだろう。

「園児の性的な行動(性器タッチや友達同士で見せ合い、自慰行為など)を目にしたり、園児から胸を触られるなどの行為を受けたりしたことがありますか?」と質問すると、6割以上のスタッフが「ある(67.2%)」と回答した。

親としては、そうした行動には適切な対処をしてほしいと考えるだろう。やはり、幼児期の性教育は必要なようだ。

どろんこ会グループでは発達の特性がある子供を支援する子ども発達支援センター、児童発達支援事業所「つむぎ」も運営している。発達支援に勤務する保育士に「保育園では要支援児にも性教育を実施していますが、同様に、つむぎ利用児にも性教育を実施すべきだと思いますか?」と質問したところ、8割のスタッフが「実施すべき(84.6%)」と回答した。

理由としては次のような意見が寄せられている。
●支援の必要有無にかかわらず、性教育は必要。自分の大事な身体だから。
●理解できるかどうかは子供の発達段階によって異なるが、大切なことなので伝えていった方が良いと感じる。子供だけでなく保護者にも伝えて、共に学ぶ必要があると思う。
●性に関する興味はどのお子さんも同じように持っているもので、そのお子さんの興味や意識に合わせて伝えていくべきだと思います。

文部科学省は 「性犯罪・性暴力対策の強化の方針」を踏まえ、子供たちが性暴力の加害者、被害者、傍観者にならないよう、全国の学校において「生命(いのち)の安全教育」を推進することとしている。

文科省のサイトには、幼児期向けの教材もアップされているので、家庭でも参考にしてみてはどうだろうか。

まずは子供の疑問に
真摯に向き合おう

性教育については、かえって子供の好奇心を喚起するのではという「寝た子を起こすな論」もある。しかし現実には、子供が目にするメディアでも性に関する情報があふれている。幼児期に初恋の感情を体験する子も少なくない。人を好きになる気持ちを肯定的に認められるための教育も性教育だ。

家庭では、「大人になればわかるよ」と先延ばしせずに、子供の関心や疑問に真摯に答えてあげよう。変にごまかしたり隠したりすると子供は敏感に気づき、不信や誤解につながることにもなりかねない。

〈調査概要〉
「①保護者への幼児期の性教育に対する意識調査結果」
・調査期間:2022年8月5日~9月9日
・調査機関:どろんこ会グループ(自社調査)
・調査方法:PCやスマホなどからアクセス可能なアンケートフォーム
・調査対象者:どろんこ会グループの保育園、発達支援つむぎをご利用の保護者様(東京都、埼玉県、神奈川県、千葉県、茨城県、群馬県、新潟県、宮城県、福島県、兵庫県、福岡県、沖縄県在住)
・有効回答者数:3173人(母親84.2%、父親15.6%、親族0.2%/30代63.9%、40代26.5%、20代9%、50代以上0.5%、10代0.01%)
・公式サイト:www.doronko.jp/action/20221226a

「②保育従事者への幼児期の性教育に対する意識調査結果」
・調査期間:2022年8月1日~31日
・調査機関:どろんこ会グループ(自社調査)
・調査方法:PCやスマホなどからアクセス可能なアンケートフォーム
・調査対象者:どろんこ会グループの保育園、発達支援つむぎに勤務する全スタッフ(保育士、栄養士・調理師・調理スタッフ、看護師、保育補助、用務、園事務、発達支援に関わる専門士など)
・回答者数:1376人(女性89%、男性9.4%、無回答1.6%/20代38.7%、30代20.4%、40代17.7%、50代13.5%、60代以上9.5%、10代0.1%、無回答0.01%)
・公式サイト:www.doronko.jp/action/20221226a


文:平井達也

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