スポーツの習い事は急がなくて大丈夫。ヒヤッとする場面こそ、子供の絶好の運動体験になる!?

スポーツの習い事は急がなくて大丈夫。ヒヤッとする場面こそ、子供の絶好の運動体験になる!?
私達が子供の頃、サッカーもできて、かけっこもうまい。そんな「スポーツ万能」な子がいただろう。いまそんな子が減っている。その背景を知ると、現代の子供たちがかかえる問題がみえてきた。

自由遊びの園のほうが
運動のバリエーションは多い

「本来は、公園の木登りとか河原の土手下りとか、親が見ていて思わず“危ない!”とヒヤッとする場面こそ、子供にとって絶好の“運動体験”の場なんです」。

そう話すのは、アンダーアーマー正規日本ライセンシー「ドーム」が運営する「DAHアスレティックアカデミー」の小俣よしのぶさんだ。

「“運動体験”とは、自発的な身体活動(運動)のこと。大人や指導者から与えられる運動やスポーツ活動をするのではなく、子供が自分自身の興味や心の赴くまま無意識的に運動を行い、楽しむことです」。

これはまさに“遊び”そのものである。

「ゴールデンエイジ理論が広く世の中に浸透していますから、早くスポーツを始めなければいけないという親の焦りもあって、小さいうちにサッカーチームに入れたり、体操教室に通わせたりしがちです。

でも、保育園での園庭遊びを自由に遊ばせている園と、専門の体操教室のコーチが指導した園を比較した調査結果を見ると、自由遊びの園のほうが圧倒的に多様な運動体験が多く、同時に運動量も多くなり、結果として体力も運動能力も向上・改善されます」。

人間の複雑な体の動きは
36種類に分類される

「例えば野球のコーチが子供たちにカーブの打ち方のコツを教える時、『虫網で飛んでいる蝶を捕まえるような感じ』と伝えます。でも、虫とり経験のない子供には全くイメージが湧かずコツを掴むのに時間がかかります。

また、バットは雑巾を絞るような感じで握る、メンコを打つような感じでボールを投げるなど、幼少期の“遊び体験”がないと、感覚が掴めません」。

例えばメンコを打つ腕の振りが野球の投運動と似ているため、メンコの腕振りが野球のボール投げに転用され、野球のボール投げがテニスのサーブやバドミントンのスマッシュの腕振りと似ているため、それらに転用できる。

これは運動の類縁性といわれる。運動の類縁性とは動きが似たような運動という意味だ。

「鬼ごっこの中に3つの要素があります。これは類縁性というよりも類似した、あるいは体力運動能力の要素が重なる部分のことを言います」。

発育発達学を専門とする山梨大学の中村和彦教授によると、人間が普段無意識に行っている複雑な体の動きは36種類に分類されるという。それが以下の図で示した「基本動作36」だ。この基本動作は、幼児期にできるだけたくさん経験し、身につけることが望ましく、この時期に身につけた動きは生涯消えることはない。

人間の基本的な動きは36種類に分類でき、これが基本となり人間の複雑な動きを支えている「山梨大学中村和彦氏が提唱する子供が伸びる36の基本動作」。

つまり、幼児期に「危ないから“運動体験”をさせない」のではなく、大人が安全を確保して、見守りながら体験させることが重要となる。

また、文部科学省の「幼児期運動指針ガイドブック」には、次のようなことが書かれている。「日常生活や体を動かす遊びなど様々な“運動体験”の中で、動きの多様化と洗練化が起こる」。

つまり3つに分類される基本運動のパターン「体のバランスをとる動き」「体を移動する動き」「用具などを操作する動き」を経験することで、易から難の動きへ、一つの動きから類似した動きへと動きのレパートリーやバリエーションが拡大し、多様な動きを獲得していく。

そして、目的に合った合理的な動きによる滑らかな運動や動きの組み合わせが成立して動きの洗練化も起こる。

早い時期から始める
専門スポーツはむしろ弊害

「実は今、子供たちの間で運動器機能が低下した状態とされるロコモティブシンドローム(通称ロコモ)が問題になっています。通常は高齢者の運動器症候群を指すのが一般的でしたが、しゃがめない、前屈できない、転んでも両手首がうまく反り返らずに骨折してしまう子が急増しているのです」。

これは1週間に10時間以上もスポーツに打ち込んでいる運動量の多い子供でも、足首が硬いためにうまくしゃがむことができずに後ろに転んでしまうというのだ。一体なぜそのようなことが起こっているだろうか。

「原因の一つと考えられているのが、早いうちに始めるスポーツ活動です。自由に遊び回る時期に、1つのスポーツに特化したスキル習得や専門的体力運動能力の養成を行うと、体力運動能力に偏りが生じてしまうからです」。

この問題を解消するために何か良い策はあるのだろうか。

「解決策はいたってシンプルです。子供に時間、空間、一緒に遊ぶ仲間という“3つの間”を提供すればいいだけのことです。究極は“空間”さえあればいい。オリンピックアスリートに行われた調査によると、5割以上が2時間から3時間以上の外遊びをしていたという結果でした」。

トップアスリートの幼少年期の遊び時間
出典:中村和彦:トップアスリートの幼少年期における運動・スポーツ経験に関する調査研究, 2011
オリンピックに出場するようなトップアスリートの28.1%が、幼少期に3時間以上外で遊んでいた。外遊びが運動量を高め運動能力にも強い影響を及ぼす1つの結果。

外遊びやそれに類した遊具には、子供の多様な動きを引き出す遊びの宝庫といえるだろう。たくさん遊ぶことで、体力と運動能力の両方が向上することになる。

教えてくれた人

DAHアスレティックアカデミー
小俣よしのぶさん

アンダーアーマーの専門機関施設で
キッズプログラムが開講中!

アンダーアーマーを取り扱う株式会社ドーム本社にある「ドームアスリートハウス」(通称:DAH)は日本唯一のアスリート専用のパフォーマンス開発機関。そのDAHが昨年より、子供たち向けの新しい運動プログラム「DAHアスレティックアカデミー」をスタート。未就学児から通うことができ、遊びを通じて様々なバリエーションの運動を取り入れ、スポーツ万能の子供を育てようというプログラム。
TEL:03-5656-6220


文/脇谷美佳子

FQ Kids VOL.02(2020年春号)より転載

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