2022.01.13
2022.02.07
2024.07.17
田中弘美さん
保育士、幼稚園教諭、国際モンテッソーリ教師。幼児期から学童期まで、一貫してモンテッソーリ教育を行なう株式会社ウィズチャイルド創始者。現在は保育顧問としてグループ4園を回りながら、次世代の保育士や職員の育成に力を注ぐ。また、未来の子どもたちの保育環境を考える「日本こども育成協議会」の相談役でもある。
モンテッソーリ教育
年齢別「生活のおしごと」実例
赤ちゃんが認識しやすいモノクロカラーの、風で揺れるムナリモビール。
まだねんねの時期におすすめなのはモビールだ。といっても電動でくるくる回るものは、赤ちゃんの目が速さについていけない。風の力や、ちょっと触れたときに揺れるものだと目で追いやすく、追視の力を高めてくれる。
また、鏡を置くのもおすすめ。赤ちゃんが自分と他人の違いを認識したり、部屋全体の構造をとらえて移動するきっかけを作ってくれる。
赤ちゃんの布団のそばに鏡を置く。
小さな階段や段差を置くと、身体を動かす練習のきっかけに。
ハイハイの時期になれば、ごく小さな階段や段差になるものを置くのがおすすめ。赤ちゃんは一生懸命そこをハイハイしたり、もう少し大きくなると、つかまり立ちの練習を始める。
また歩き出してからも、階段を登ったり下りたり、周囲をぐるぐる歩きまわる子もいる。また布製でゆっくり転がるボールもおすすめ。追いかけてつかむことができるので繰り返し挑戦できる。
さまざまなスイッチを用意すると手指の運動に。
市販のおもちゃにもあるが、パチパチと切り替えられるさまざまなスイッチや、上げ下げできるファスナー、カチャンとはまるアジャスターなどを子どもの側に置くと、興味を引き、手指の運動という「おしごと」につなげられる。パチンと開け閉めできるがま口財布もおすすめだ。
上げ下げして遊べるファスナーを壁に下げるのもおすすめ。
こんにゃくをちぎって料理に参加。
好奇心が高まり「何でもやりたい」2歳児には、ゆで卵の皮をむくことやレタスをちぎるといった料理の下ごしらえをしてもらうのがおすすめ。モンテッソーリ教具で「着衣枠」と呼ばれるものを用意して、ボタンやスナップ留めに繰り返し取り組むことは、自分で洋服を脱ぎ着することにもつながる。
また、自分のコップを置く場所をシールや写真などで決めてあげると、自分で自分のコップを用意したり、お片づけすることもできる。くるくるハンドルを回して紙を細かくする「手動式シュレッダー」も、小さな子どもが楽しんで取り組める立派な「おしごと」だ。
「着衣枠」の例。布を2枚合わせて安全ピンでとめる練習もおすすめ。ボタン、ファスナーなどを使っても◎。
毎日のお米とぎも大切な「おしごと」に。
この時期からおすすめの「おしごと」がお米とぎ。といだあと炊飯器に入れ、スイッチを入れれば立派な料理となる。
また、マッチでキャンドルに火をつけたり、包丁できゅうりを切る、針と糸で縫い物や刺繍をするといった慎重さが必要なことも、本人が興味を持ち、気分が落ち着いているタイミングなら挑戦してもいい時期。
テーブルクロスを敷いて、食卓をセッティング。
その他、「花を活ける」「食卓のセッティング」「エプロンを自分でひもを結んで付ける」「くしで身だしなみを整える」などの日常のちょっとした家事や習慣も、環境を整えれば自分でやることができ、「おしごと」として楽しめる。
さらに、年下のきょうだいがいる場合は、その子たちの面倒を見ることも大切な「おしごと」である。
モンテッソーリ教育は、異年齢で構成された少人数の集団で行われる。異年齢が同じ空間で暮らすことで、思いやりやコミュニケーション力を育むことができるからだ。
教育現場では、小さな子どもが大きな子どものすることを見て尊敬したり、大きな子どもは小さな子どもに頼られてやさしい気持ちがあふれてきたり。ときには、泣いている大きな子どものそばに黙って小さな子どもが寄り添うなど、微笑ましい姿がたくさん見られる。
ただし、子どもには一人でいたいときもある。そんなときは一人にさせてあげよう。一人でいるときにしか起こらない成長があるからだ。みんなと一緒でもいいし、一人でもいい、何もしなくてもいい。そうやって、自分の活動を自分で選んでいくことこそモンテッソーリ教育の原点なのだ。
田中先生が創設した「ウィズチャイルド」は、東京・聖蹟桜ヶ丘を拠点に4つの保育園(東京都認証保育所企業主体型)、学童保育施設兼コミュニティカフェ、そして病児保育施設を運営するグループだ。乳幼児から小学生(学童)まで、切れ目なく一環してモンテッソーリ教育の理念に基づいた保育を行っている。
施設内は、子どもたちが「内なる生命力」を伸ばすために必要な環境が整えられており、イベント行事は少なめに、質の高い日常生活を送ることが大切にされているのが特徴だ。
子どもたちは、日々「生活のおしごと」を通じて、よく遊び、考え、挑戦し、食べ、寝る。やりたいことはとことんやり切ることができ、失敗も成功もすべて成長に必要なプロセスとして認めてもらえる安心感に包まれて育つ。
食育に力を入れているのも特徴で、保育園は和食中心のこだわりの給食。園児たちが毎日みずからお米をといでいる。不定期だが、「命をいただく日」として、各園で魚をおろして見せることもある。
また、学童保育施設は、子どもが来る時間以外はコミュニティカフェ「子どもリビング」として開放。子どもが食べる、安心で健康に配慮された給食のエッセンスを生かしたメニューを提供し、地域住民との橋渡し的な役割を果たしている。
京王線 聖蹟桜ヶ丘駅から徒歩3分。駅前ビル内にあり、北側の大きな窓からは多摩川の自然が一望できる幼保園。0~5歳児までの定員40名。
HP:with-child-sakura.jimdo.com
聖蹟桜ヶ丘駅から徒歩7分。0~5歳児までの定員40名。平成24年4月に開所した新しいこども園。園庭からは多摩川が望める自然豊かな保育環境。
HP:with-child-kodomo.jimdo.com
聖蹟桜ヶ丘駅から徒歩5分。さくらがおか南口商店街の一角に位置し、木の香りがいっぱいの戸建ての保育園。0~5歳児までの定員38名。
HP:with-child-minami.jimdo.com
0~2歳児の保育園の他、病児病後児保育・一時保育などを行なう多様なサービスを備えた企業主導型保育園。
HP:www.seiseki-kodomo-terrace.com
「自活」がテーマの児童保育施設。小学1~6年生が利用できる。定員30名。「人を大切にする」「物を大切にする」「自分の事に責任をもつ」を3カ条とし、「子どもたちによる、こどもたちのための、こどもたちの居場所づくり」を目指す。9:00~15:00はコミュニティカフェとして一般に開放(土曜日は9:00~17:00、夏・冬休み期間を除く)。
楽しくモンテッソーリ教育を実践!
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子どもの成長や親子コミュニケーションをサポートする子ども向け調理シリーズ「リトルシェフクラブ」。包丁は、丸刃(刃なし)・ギザ刃・本格刃付けと、年齢や成長度に応じて選べるので安心だ。「子どもサイズの本物を用意する」というモンテッソーリ教育の実践にもピッタリ。
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文:笹間 聖子
FQ Kids VOL.16(2023年秋号)より転載
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