子どもが「時間と約束」を守れるようになるには? 年齢別の働きかけ方を専門家が伝授

子どもが「時間と約束」を守れるようになるには? 年齢別の働きかけ方を専門家が伝授
子どもが「時間と約束」を守れるようになるためにはどうしたらいいのか。家庭内での働きかけ方について、岡山大学の准教授として教育方法学を研究し、「非認知能力の育成」を中心とした教育実践の在り方を提唱する中山芳一さんに聞いた。

生活全体を俯瞰(ふかん)して
自分でルールを決める手助けを

子どもがゲームやデジタルメディアに触れる機会が増え、なかなかやめることができないという声をよく聞く。「ゲームばかりやってしまう子ども」に親ができる働きかけとして、中山さんは、ゲームを「eスポーツ」だと考えることを推奨する。

スポーツにはルールがあり、野球なら「9回裏で終わり」など、終了時間も決まっている。だからまずは、終了時間を決めることが最低限のルールだ。ただしこのとき、親が勝手に「ゲームは○時間まで」などと決めると、自分で「時間と約束」を守れるようにはならない

基本の姿勢として親は、「~しなさい」という命令ではなく、「~したら?」「~してみない?」などと問いかけ、「あくまで決定するのは本人」という姿勢で接することが重要だ。

「もし本人が『ゲームを毎日3時間やりたい』など、親が多すぎると感じる時間を希望したら、一日の生活全体を本人が俯瞰(ふかん)できるよう、ご両親が手助けをしてあげてください。

『10時に寝るとしたら、ゲームは何時から何時までやるの? ご飯や宿題は何時?』などと問いかけ、他の生活や睡眠とのバランスをトータルで考えられるよう、視野を広げてあげるのです。子どもは生活全体が見渡せていないから、ゲーム1点に集中してしまっているだけなのですから」と中山さん。

大人が手帳を開いて1ヶ月のスケジュールをとらえるように、1日のスケジュールを俯瞰(ふかん)できれば、たとえ幼い子どもであっても「時間と約束」を守れるようになるという。そして、スケジュールを見渡せる視野は、いずれ大きな目標を持って、長期間に及ぶ計画が必要になった際にも必ず役に立つ。

では俯瞰(ふかん)する視野を育てるために、具体的に何をすればいいのか。以下に、中山さんが推奨する年齢別のポイントをまとめているので、ぜひ取り組んでほしい。

年齢別
働きかけのポイント

幼児(3~5歳)
幼児期は、ルールや時間を把握できず、「みんながやっているから、先生が言っているから」と真似をして行動している時期。そんな時期はすごろくをイメージして、1時間先、2時間先、1日先、2日先……と、1マスずつ「1日の生活でやるべきこと」や「1週間の予定」などを伝えていくのがおすすめだ。


小学校低学年(6~7歳)
低学年になると、1週間先、2週間先まで視野を広げられる。「次は何をする?」「午後は何をする?」などと問いかけ、スケジュールを組み立てよう。また言語が発達する時期でもあるので、スケジュールを立てるときは、「ご飯」「寝る」など、簡単なキーワードで立てていくのがおすすめだ。


小学校中学年(8~10歳)
「ゲームは○時間まで」など、明確な約束を決めよう。この時、大人が決めたルールではなく、あくまでその子ども自身に目的意識を持って決めさせるのがポイントだ。また、親は子どもを守ろうとするほどコントロールしようとし過ぎてしまう危険があるので、「頭の中が大人になり始めている子ども」として捉えてみよう。


小学校高学年(11~12歳)
一人で考えて行動ができる年齢。困った時や、お金が必要な時など、「最低限のところは親が支える」姿勢は持ちつつ、手・口を出し過ぎずに見守ろう。対等な立場でのアドバイスはいいが、本人の意思を尊重し、親の思い通りにならなくても“前向きに諦める”姿勢を心がけよう。

自分で時間と約束を守れるようになる
親子で取り組む「振り返り」ワーク

子どもが「時間と約束」を守れるようにするために、親子で取り組みたい簡単なワークを紹介する。子どもに「やってみない?」と尋ねて、興味を持ってくれたらやってみよう。嫌がっている子どもに押し付けたり、内容に口を出すと、効果は出ないので要注意。親も自分で取り組んで、親子で共有し合うのがおすすめだ。

1.好きなこと、楽しいことを
ノートに書く

まずは、自分がどんなことをしていると本当に楽しいのか、ワクワクするのかを考えて書き出す。学校や家、休日など、具体的なシーンを思い浮かべて考えると出てきやすい。

2.やりたいこと、やるべきことを書く
自分がワクワクすることの中から、「やりたいこと」を書き出してみよう。次に親子で相談して、「やるべきこと」を考えて書き出す。そうすると、「今自分が何をすべきか」がわかる。

3.毎日やってみる
自分で決めた「やりたいこと」「やるべきこと」を毎日やってみる。自分が決めたことだから、守れるはず。1日の最後に「すべてできたか」をチェックする時間を持とう。

4.振り返る
1週間やってみて、自分で決めたことをすべてできたか振り返ってみよう。もしうまくできていなくても大丈夫。「来週どうやったらできるか」を考え、もう一度取り組んでみよう。

中山さんおすすめの書籍

“前向きに子どもを諦める”姿勢を教えてくれる
『「やってはいけない」子育て 非認知能力を育む6歳からの接し方』

中山芳一著/日本能率協会マネジメントセンター ¥1,760(税込)

「子育てでやってはいけないこと=子どもの権利を侵害すること」と定義し、やってはいけないことを具体的に教えてくれる。なぜそれを避けるだけで子どもの自己認識が変わり、自己肯定感や非認知能力が高まっていくのかも解説されているので必見だ。

「自分の叱り方はこれでいいんだろうか」「子どもにどう接したらいいのだろう」と迷っているパパ・ママにおすすめ。

親子の取り組みをサポート!
中山芳一さん監修のおすすめワークブック

かいけつゾロリのときデザインノート

監修:中山芳一 発売元:日本能率協会マネジメントセンター

時間と約束を守ることができる! ¥1,320(税込)

気持ちが元気になる! ¥1,320(税込)

目標達成が楽しくなる! ¥1,430(税込)

いざワークに取り組もうと思っても、「子どものモチベーションが上がらない」「なかなか興味を持ってくれない」というときにおすすめのワークブック。子どもに人気の児童書「かいけつゾロリ」のキャラクターの漫画やシール、塗り絵が付いていて、ワークを楽しく演出。

また、LINE公式アカウントの動画とメッセージが、保護者をサポートしてくれるのも嬉しい。シリーズは3冊あるため、子どもの興味・関心に合ったブックを選ぼう。中山さんのおすすめは、同じものを2冊買って、親子で取り組むことだ。

教えてくれた人

中山 芳一さん

1976年岡山県生まれ。岡山大学教育推進機構 准教授、専門は教育方法学。岡山大学教育学部卒業後、学童保育指導員として9年間在職。在職中、学童保育の研究が将来必要不可欠と確信し、教育方法学研究の道へと方向転換。以降、幼児教育から学校教育まで、さまざまな教育現場と連携した実践研究に従事。一方で、全国で非認知能力の育成を中心とした教育実践の在り方を提唱している。

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監修:中山 芳一
文:笹間 聖子

FQ Kids VOL.15(2023年夏号)より転載

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