子供には手料理じゃなきゃかわいそう? 手作り信仰の呪縛を解く、海外の食習慣とは

子供には手料理じゃなきゃかわいそう? 手作り信仰の呪縛を解く、海外の食習慣とは
子供のためにと、忙しくても無理して頑張った手作り料理をなかなか食べてもらえずイライラ……そんなパパママに、小島慶子さんが語る、子供たちの食事にとって本当に大事なこととは?

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無理して手作りするよりも
してよかったと思うこと

あなたの思い出の味はなんですか? お母さんの手作りのおかずや手の込んだお弁当を食べて育った人もいるでしょう。今では考えられませんが、かつては冷凍食品や買ってきた惣菜を食卓に並べるのは「手抜き」だと言われていました。50年前、専業主婦世帯が大半を占め、家庭料理の本が売れに売れていた頃は、ママの手料理が並ぶ食卓を囲むのが憧れのファミリーの姿だったのですね。

今もお弁当作りなど、手料理信仰はなおも受け継がれています。共働きでバタバタだけど、うちの子だけが地味なお弁当だったらかわいそう……と頑張っている人もいるでしょう。

だけど、親の手作りでなければ栄養が摂れないわけではないし、愛情が伝わらないわけでもありません。手作りが「良い親の証明」になってしまっていませんか。もし誰にも何も言われないのなら、もっと楽をしたい……と思いながらの料理はつらいですよね。

私は、今は家族のために料理を作っていません。作っていた時期も、やめた時期もあります。長男が1歳ぐらいの頃、初めての育児で完璧主義だったせいもあり、あまりにも育児と仕事の両立が大変で、ご飯作りは夫に任せることにしました。

しばらくしてまた料理に復帰し、夫婦で回すように。料理がいい気分転換になっていた時期もあります。生協で各地の野菜を注文し、会社帰りに旬の魚を買って、子供たちに食材の名前と産地を説明するのも楽しかったです。

ただ、私はADHDの影響もあるのか、几帳面さが裏目に出るのか、料理にとても時間がかかりました。ただでさえ忙しい共働き育児で、これは大きな痛手です。しかも先述の通り当時は完璧主義だったので、少しでもうまくいかないと自分にとても腹が立ってしまい、機嫌が悪くなるのです。

息子たちは驚異の低燃費体質で、極めて少食の上に食べるのがのんびりでした。それにも苛立って、どうして早く食べないの、なんでもっと食べないのとつい小言が。これじゃ、食卓が全然ハッピーじゃないですよね。

そこである時から、出前でうどんを取ったり、時間がない時はレトルトカレーで済ませたりすることを自分に許すことにしました。そうしたらまぁ、ご飯が楽しくなったこと! 先日、大学生の息子も「あのアニメキャラのカレー大好きだったなぁ」などと懐かしんでいました。

子供の健康のために栄養バランスや添加物に気を配るのはもちろん大事なことですが、それが100%手作りでなければならない理由はありません。ちなみに少食だった息子たちは、大学2年と高校2年になった今は、私より背が高くなり立派な歯も生え揃って、たくさんご飯を食べるようになりました。

成長すれば、言われなくてもできるようになることがたくさんあります。あんなにイライラしなくてもよかったのにな。怒られていた息子たちも、つらがっていた自分もかわいそうでした。

親も子も嬉しい、
オーストラリアの食習慣

8年前にオーストラリアに引っ越して驚いたのは、学校で午前中に“リセス”というおやつの時間があり、スナックなどを食べていいことと、小学校(公立)にも“キャンティーン”という売店があって、お昼ご飯を買えることです。近所の公立小ではネットで3週間先まで予約可能でした。

自宅からランチボックスを持ってくる場合は、リンゴとシリアルバーだけとか、バターとベジマイト(オーストラリアで人気の発酵ペースト。しょっぱくない八丁味噌のような感じ)を塗っただけのサンドウィッチとか、とってもシンプルです。スーパーにはランチボックスにポンと入れればいいだけのミニサイズのリンゴやオレンジが袋詰めで売っています。

うちでは夫が作ったおにぎりかサンドウィッチ、フルーツ、スナック菓子の小袋というメニューが定番でした。ハイスクール(中高)に上がると、学校のキャンティーンの品揃えが増えて、生徒証と交通系ICカードが一体化したもので支払いができます。

長男が通っていた近所の公立ハイスクールでは、12年生(高3)は学校に備え付けの電子レンジなどで持ち込んだ食事をあたためたり、簡単な調理をしてもOKでした。カップ麺が人気だったそうです。

食を通して
子供に本当に伝えたいこと

日本でほとんど知られていませんが、オーストラリアでは日本食が完全に日常食として定着しており、サンドウィッチと同様にどこの売店でも太巻き寿司を売っています。次男が通っている学区外の公立ハイスクールのキャンティーンでも太巻き寿司が人気で、中身はカニ風かまぼこ、照り焼きチキン、タスマニアサーモンのお刺身など。

息子たちはハイスクールに上がってからはもうランチボックスを持って行くことはなくなりました。私は日本と行ったり来たりなので、現在、家での食事は夫が作ってくれています。

健康的な食事の知識と調理技術は、生きて行く上で不可欠です。子供には「手作りこそが愛情の証」と教えるよりも、栄養素、食材名、調理法、添加物の種類、食中毒の注意点、買い物のコツや外食にはお金がかかることなどを教えてあげる方が親切です。買うのか作るのか、今何を食べるべきなのかを自分で適切に判断できるようにしてあげたいですね。

プロフィール

小島慶子(こじま・けいこ)
エッセイスト、タレント。東京大学大学院情報学環客員研究員。昭和女子大学現代ビジネス研究所特別研究員、NPO法人キッズドアアドバイザー。1995年TBS入社。アナウンサーとして多くのテレビ、ラジオ番組に出演。2010年に独立。現在は、メディア出演・講演・執筆など幅広く活動。夫と息子たちが暮らすオーストラリアと日本とを行き来する生活を送る。著書『曼荼羅家族』(光文社)、他多数。
Twitter:@account_kkojima
Instagram:keiko_kojima_
公式サイト:アップルクロス

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