2021.04.24
2022.03.12
2022.05.14
《今回の相談内容》
時々かなり激しい夫婦喧嘩を子供たちの前でしてしまうことがあります。夫婦喧嘩を見た子供のダメージサインに関する記事を読み、泣かずに仲裁に入るようになった息子の心がとても心配になっています。
普段は仲良しですし、家族全員でにぎやかに過ごし、毎日、子供とのスキンシップや愛情表現も欠かさないのですが、夫婦喧嘩を見せてしまった時点で取り返しがつかないものなのでしょうか?
(acoさん・5歳男の子の親)
夫婦喧嘩は、別に我慢せずにしてもいいんです。大切なことは、子供の前で喧嘩したなら、子供の前でちゃんと仲直りすること。これをルールにしていただければ、喧嘩するのはかまわないと思います。
家族で生活していると、どうしても譲れない場面は起こってきます。夫婦がどんなにお互いを気遣い合っていても、子供の前でつい軽く言い合いになってしまう……。そんな経験、誰にでもよくあるものです。
今のコロナ禍でリモートワークが増え、夫婦間、親子間でのストレスが溜まりがちです。「感情が抑えきれなくなってつい言い合いに」「夫婦で子育ての方針が一致せず喧嘩に」といった悩みを抱えているお父さんお母さんも多いことと思います。
夫婦喧嘩といっても、「してはいけない喧嘩」と「してもいい喧嘩」の2つがあるのをご存知でしょうか? 「してはいけない喧嘩」というのは例えば、「お金にまつわる喧嘩」です。お金の問題は、いくら喧嘩しても根本解決にはなりません。「お金」の問題は、子供の前では解決できないので、仲直りしようがありません。
一方の「してもいい喧嘩」というのは、その場で関係修復ができる喧嘩です。仲直りができる喧嘩というのは、例えば「テレビのリモコンが定位置に戻っていないストレス」「靴下が脱ぎっぱなし」「当番制のお風呂掃除がされていない」など、子供も一緒になって解決策を考えられるような問題の場合です。
喧嘩ではなく前向きに解決策を話し合えるような喧嘩なら、しても問題はないと思います。
もう1つ、お子さんの前で「してはいけない喧嘩」があります。それは、お子さん自身のことです。「おむつがなかなか外れない。育児にもっと積極的に参加してほしい」「ご飯を食べる時に箸を使わずに手で食べてしまって世話が大変だ。もっと早く仕事から帰って来てほしい」などです。
このように、お子さんに関することで喧嘩してしまうと、「僕のこんなところがダメだから喧嘩しているんだ」と過剰に意識してしまい、自己肯定感を下げる結果になりかねません。お子さんの自信が持てなくなる話題は控えた方がいいでしょう。
子供は、作法や考え方、行いなど数多くのことを親から学んでいきます。幼い頃は、親の影響をそのまま受けます。喧嘩も見られていないつもりでも、子供は実はよく見ているものです。
子供への教育として、きっとお子さんには「ケンカをしちゃだめ」「ケンカしたら、ごめんねと謝ろうね」などと教えているのではないでしょうか。それなのに、大好きなパパとママが喧嘩して、謝るどころか白熱してしまったら……示しがつきませんよね。
一般的に、夫婦喧嘩による子供へのダメージサインとして「泣かない」「黙り込む」「身体的成長の阻害」など、さまざま言われています。しかし、ご相談者の家庭は、普段は仲が良いようですし、子供とのスキンシップや愛情表現も欠かさないとのことですから、あまり心配することはないでしょう。
ここまで、「してもいい夫婦喧嘩」と「してはいけない夫婦喧嘩」についてお話してきましたが、一概に夫婦喧嘩の全てが悪いというわけではありません。夫婦喧嘩には実はメリットもあります。それは、「関係修復までのプロセス」を目の前で実体験として子供が学べることです。
お子さんは、今、5歳ですよね。5歳といえば年長クラスで、発達的には「仲間意識が強くなる」「友達とお互いに主張したり、妥協したりしながら遊ぶ」「友達がやってもらいたいことを察してやってあげる」といったことができるようになっていく年齢です。
もし、園でお友達と喧嘩してしまった時、どんなふうに解決したらいいのか、そのお手本になるのがお父さんお母さんの喧嘩です。夫婦喧嘩をしても仲直りする方法を子供の前で見せてあげれば、お子さんもそれを真似して、お友達と話し合って譲歩するなど、自分なりに解決策を学んでいくのです。
子供にとって夫婦喧嘩も必ずしも悪いことだけではありません。お子さんの成長のためにも、子供のお手本になるような喧嘩と仲直りに心がけるといいかもしれませんね。
てぃ先生
関東の保育園に勤める保育士。名前の読み方は「T」先生。Twitterフォロワー数は50万人、YouTubeチャンネル登録者は20万人を超える。著書である『ほぉ…、ここがちきゅうのほいくえんか。』(KKベストセラーズ)は15万部を超える大人気作に。近著の『てぃ先生の子育てで困ったら、これやってみ!』は自身初となる育児本であり、こちらもベストセラーとなっている。現在は保育士の専門性を生かし、子育ての楽しさや子供への向き合い方などを発信中!
文:脇谷美佳子
編集部のオススメ記事
連載記事