2022.11.21
2022.08.12
2022.11.26
「子供との遊び方がわからない」「話が通じない年齢の子供と遊ぶのは正直苦痛……」そう密かに悩む親御さんもいるでしょう。私も振り返ると、息子たちが幼かった頃はいつも時間に追われていて、せがまれて一緒に遊びながら、家事を片付けたい……1人の時間が欲しい……と思ったことは数えきれません。
幸い、レゴやミニカーや恐竜が好きだったので、息子たちとその手のおもちゃで遊ぶのは結構面白かったのですが、もしあまり興味を持てないおもちゃで遊んであげなくちゃならないのだったら、もっとしんどかっただろうと思います。きっと、そういう親御さんも多いはず。
子供が小さい時には、体の触れ合いが大事だといいますよね。そこで、今回はわが家で大人気だった遊びを3つご紹介します。「たまごごっこ」と「とれないとれない」そして絵本の読み聞かせです。
「たまごごっこ」は、謎のたまごを孵化させる遊び。子供がたまご、親はそれを孵化させる人です。まずは子供が床で頭を抱えて丸くなります。それを通りすがりの親が見つけ「おや、こんなところにたまごが落ちている。よし、あっためてみよう」とたまごに覆いかぶさります。
そして「何が出てくるのかなぁ、楽しみだなぁ。パカ! ピヨピヨで鳥かな? パカ! ノソノソで亀かな。早く大きくならないかなぁ」と言いながら抱卵。子供は頃合いを見計らって、体をちょっと揺らします。すると親は「あ、動いた! 生まれるのかな、生まれるのかな」子供はますます揺れて、覆いかぶさった親をどかそうとします。
親は「あ、生まれる、生まれる、うーまーれーるーー、パカ!!」このパカ! に合わせて子供は孵化。出てきたのが鳥なのかトカゲなのか虫なのか、はたまた怪獣なのかは、子供が決めます。動きや鳴き声から、親は中身を当てます。「さては、イグアナだな」「さては、ワニだな」「さては、カブトムシだな」など。
うちではよくイモムシや獰猛(どうもう)な怪獣が出てきました。孵ったばかりの怪獣に親が食べられてしまうこともしょっちゅう。ある時次男が「パカ!」のあとにグニャッとなって「どろーん」と言ったので何かと思ったら、生たまごでした。笑っちゃったけど、切ない展開……工夫ぶりに成長を感じて感動したなぁ。
「とれないとれない」は文字通り、子供に絡みついたママがとれなくなってしまう遊びです。一緒に遊んでいる時や抱っこした時なんかに、自然発生的に始まります。私は「とれない、とれない」と言いながら、子供を圧迫しないようにしつつ手足をロック。子供は、それを全力で振りほどきます。
ルールは「痛くしないように工夫しながら、本気で抵抗する・絡みつく」こと。もちろん、子供の同意を確認してから。絶対に、嫌がるのにやってはいけません。楽しく安全に、かつ本気で勝負するのです。3歳ぐらいでも子供の力はかなりのもの。互角の戦いでも、最後は子供が勝ちます。
やがて子供が成長して抱えきれなくなり、ついには力でもまったくかなわなくなりました。「たまごごっこ」も「とれないとれない」も、触れ合いながら子供の成長を実感できる遊びです。親子で互いを気遣い、呼吸を合わせるのも楽しいですよ。
絵本の読み聞かせでは知育の面が重視されますが、私は楽しむことが何よりだと考えています。親は仕事と育児でくたくた。義務感で読み聞かせるのはしんどいですよね。親がワクワクしながら話を読んでいる様子を見せることこそが、いい教育です。その方が子供も楽しいじゃないですか。
わが家の書棚には、子供たちに「好きな本を買っていいよ」と自由に選ばせてあげて買った絵本と、私が仕事帰りに立ち寄った書店で、完全に自分の好みで買った絵本とが混在していました。
ちなみに私セレクトの絵本の中で、おそらく皆さんが知らないであろう作品は、『あたごの浦 讃岐のおはなし』(脇和子・脇明子/再話、大道あや/画、福音館書店)。讃岐地方に伝わる昔話です。満月の夜に、海から上がってきたお魚たちが浜辺の松の下で一発芸大会をするお話。
絵が素朴でとっても可愛い! そして仲間の一発芸に盛り上がるお魚たちの「妙々々々々々(みょうみょうみょうみょうみょうみょう)」という掛け声の楽しいこと。煌々と月に照らされた誰もいない浜辺で、盛り上がるお魚たちの様子がイキイキと描かれていて、それはそれは美しい作品です。息子たちに聞くと覚えていないのですが、当時私は何度も読み聞かせてあげました。
子供がお話を覚えていなくても構いません。楽しげに読み上げる私と時を過ごしたことが、きっと彼らの栄養になっているはずだと思うから。大人になってからの読書もそうですが、読んだ本のタイトルを羅列するのは、豊かな読書ではありません。書名も、著者名も、なんなら話の筋も忘れてしまっていいのです。その読書の時間が、幸福な時間であったことにこそ価値があるからです。
きっと親子の遊びも、そういうものではないかと思います。一緒に、生きる喜びを感じる時間にしたいですね。
小島慶子(こじま・けいこ)
エッセイスト、タレント。東京大学大学院情報学環客員研究員。昭和女子大学現代ビジネス研究所特別研究員、NPO法人キッズドアアドバイザー。1995年TBS入社。アナウンサーとして多くのテレビ、ラジオ番組に出演。2010年に独立。現在は、メディア出演・講演・執筆など幅広く活動。夫と息子たちが暮らすオーストラリアと日本とを行き来する生活を送る。著書『曼荼羅家族』(光文社)、他多数。
Twitter:@account_kkojima
Instagram:keiko_kojima_
公式サイト:アップルクロス
編集部のオススメ記事
連載記事