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2021.10.22
2022.04.01
昨今普及したオンライン医療相談。風邪をひきやすい小さい子供を持つパパママにとって、受診ハードルが上がったコロナ禍において心強い存在だ。24時間連絡できて専門家の助言が得られるこうしたサービスは、今後の医療でさらに広がっていくだろう。
実際には、どのような相談が小児科系で利用されているのだろうか? コロナ感染拡大後の利用状況から明らかになったのは、子育てをしていく上での本質的な課題だった。
遠隔健康医療相談サービス「小児科オンライン」を運営する株式会社Kids Public(kids-public.co.jp)は、2018年から2020年の1~5月に寄せられた相談8,927件を解析し、日本小児科学会学術集会において学術発表を行った。
発表では1~3月と4~5月の相談の傾向が分析されている。1~5月といえば、寒い冬から入園などの季節。「発熱」「せき・はな」などの感染症に関連する相談と、「成長・発達」「栄養・食事」「育児相談」など感染症以外の相談との比率に注目だ。さらにコロナ以前の2018、2019年と2020年を比較することによって興味深い結果を得ている。
まず、4~5月期について見てみると、2018年、2019年には感染症に関連する相談はそれぞれ25%、29%だった。ところが2020年の4~5月期には16%と有意に減っていた。その分、感染症以外の相談が占める割合が増えているのだ。コロナの脅威が社会を不安に陥れた時期に、感染症関連の相談割合がかえって減ったという意外な事実をどう捉えるべきなのだろうか。
1~3月期と4~5月期それぞれの感染症関連の相談の占める割合を比較する視点からも見てみよう。2018年には1~3月期24%に対して4~5月期25%。2019年には1~3月期25%に対して4~5月期29%。4~5月に感染症関連の相談割合が増える傾向がある。これは新年度の環境の変化などにともなう増加だと考えられる。
ところが2020年には、1~3月期21%に対して4~5月期16%と減少に転じているのだ。これは何を意味しているのだろうか。
2020年の4~5月といえば、初の緊急事態宣言が発せられ、対象が全国に拡大された時期だ。人の交流を極端に制限せざるを得なくなり、孤立化が一気に進んだ。こうした状況でパパママたちがオンライン相談に求めたのは、以前なら対面で交換していた子育て情報だったのは想像に難くない。
コロナ対策はメディアが毎日洪水のように流していた。さらに乳幼児の感染は少ない、重症化しにくいと言われていた。一方、個々の家庭に目配りされた子育て情報が得られる場は、公共施設の閉鎖などもあり激減していた。
Kids Public代表 小児科医 橋本直也さんはこう語る。
「日本小児科学会も『小児のコロナウイルス感染症2019(COVID-19)に関する医学的知見の現状』において、『教育・保育・療育・医療福祉施設等の閉鎖や大人(養育者)のストレスが小児の心身に影響を及ぼしており、COVID-19流行による周りの環境変化に関連した健康被害が問題となっている。』としています。
こうした、新興感染症流行下で生まれた『感染症以外の相談』に対応するセーフティネットの重要性を感じると同時に、オンライン相談であればその不安にリーチできる、と今回の研究結果は示唆を与えました。長引くコロナ禍における子供たちの心や保護者のストレスが心配です。小児科オンラインは、オンラインで小児科医と家庭を繋ぎ、私たちなりの方法で、これからも全力サポートしていきたいと思います」
コロナ禍であろうとなかろうと、子育てにおいて成長は重要事項だ。気軽に情報交換がしにくい事態が続く中、不安を抱え込みながら過ごすことはパパママの精神衛生にも良くないことは明らか。紹介した調査結果から浮かび上がってきたのは、孤立化が親たちの不安を深めている状況だった。
不便な状況でこそ便利なオンラインを活かして、健やかに過ごしたいものだ。そのためにも、支え合いながら子育てしていける社会をどう作っていくか、改めて問われているといえるだろう。
〈調査概要〉
・調査対象:2018年、2019年、2020年の1~5月に「小児科オンライン」に寄せられた相談
・サンプル数:2018年1~3月 609、4~5月 637
2019年1~3月 1,402、4~5月 1,257
2020年1~3月 2,132、4~5月 2,890
・株式会社Kids Publicによるプレスリリース原文:prtimes.jp/main/html/rd/p/000000121.000019477.html
文:平井達也
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