なぜ今「STEAM教育」が必要なの? 非認知能力を伸ばす学びを第一人者が解説!

なぜ今「STEAM教育」が必要なの? 非認知能力を伸ばす学びを第一人者が解説!
理数系教育とアートをかけあわせ、教科を横断しながら学んでいくSTEAM教育。子供たちの創造性を育む未来の学習スタイルが、日本でも注目を集めている。非認知能力を育むSTEAM教育とは? 第一人者に話を聞いた。

STEAM教育が
求められる背景とは

小学校でプログラミング教育が必修化されるなど、日本の教育現場でも近年急速に浸透しつつあるSTEAM教育。Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art/Arts(芸術/リベラルアーツ)、Mathematics(数学)の頭文字をとったSTEAM教育は、技術を習得するだけでなく、非認知能力を伸ばす効果があると言われている。

STEAM教育の第一人者である、株式会社STEAM代表取締役・中島さち子さんは、STEAM教育が求められるようになった社会的な背景についてこう話す。

「STEAM教育では創造力を育みますが、AIが台頭する世の中で重要になるのが創造力です。ビッグデータに基づいて判断するAIに対し、違う分野からアイデアを着想したり、哲学的なことを考えたりすることが人間の得意分野。それと、人の心の喜びに関するものもそうですね。人はそもそも何かを作り出すことが喜びなんです。万人に創造力が求められる時代になっているんです」。

そしてもう1つ、あらゆる物事の境界がなくなってきたことも大きいという。

「例えば、ビジネスでいえば、シェアリングエコノミーやサイバーリスクなどに端を発するように、同業や多分野での競合や境界がなくなり、新しい業種が生まれています。また、学術界でも、数学と生物など垣根を超えた共同研究が盛んになっています。ジャンルを超えてすべてが融合する時代になってきているなかで、STEAM教育の横断的な能力が求められるようになっていると思います」。

学び方の軸にあるのは「ワクワク」

まさに未来を生きる力を養ううえで欠かせないSTEAM教育。とはいえ、まだ新しい教育概念ゆえ、その哲学や概要をしっかり理解する保護者はそう多くないだろう。STEAM教育の定義とは一体何なのだろうか。その核にあるのは、中島さんいわく「ワクワク」なのだという。

「STEAM教育とは、創造的、実践的、横断的で、そして、プレイフルな学び方。経済産業省『未来の教室』では、ワクワクを軸とした“創る”と“知る”の循環と表現しています。科学や数学そのものを学ぶというよりは、『科学者や数学者のように考えて、芸術家やエンジニアのように作る』という感覚が近く、海外でもよくそのように表現されていますね」。

中島さんは続けてこんな例を挙げてくれた。科学者になるには、正しい知識を学ぶだけでは足りない。かつて天動説が信じられていた時代があったように、長年、支持されてきた説がひっくり返ることもある。科学者に求められるのは、現実を疑ったり、仮説を立てて考えたり、「自分で問いを立てる力」なのだ、と。そこで重要な役割を果たすのが、STEAMにおける「Art」なのだという。

「一足先に日本でも普及が進んでいたSTEM教育に、“A”が加わったのがSTEAM教育ですが、Artイコール、絵を描く、彫刻をするということだけでもないんです。本来的にはArtにはもう少し広い意味があって、“新しい視点を生み出すのがArt”。実は科学者や数学者のように、問いを自分で立てて考えるという行為には、Artの要素が必ず入っているんですよね」。

STEAM的な能力を伸ばす方法は?

中島さんが率いるsteAm,Inc.では、研究者や芸術家や各界のスペシャリスト、ユニークな教育者たちが集い、様々なSTEAM教育的ワークショップを開催している。例えば、デザイン、作曲、社会課題など異分野と数学をかけ合わせた「数学×◯◯シリーズ」、フィジカルコンピューティングを体験する「スライム楽器・果物楽器づくり」、AI思考や戦術にも落とし込める「スポーツ×STEAM」など、ジャンルレスで心躍るものばかりだ。

なかには、幼児や低学年でも体験できるものもあるというが、「日常の中にもSTEAM的な能力を伸ばす方法はある」と中島さんは言う。

「幼児でも遊べるロボットやタブレットなどのソフトも現在では充実していますし、ツールを使うことももちろん1つの方法ではあります。でも例えば、折り紙だって立派なエンジニアリングだし、あやとりだって面白い。必ずしもプログラミングをやらなきゃ、ということではないんです。

プログラミングだって、問いを見つけて、解決したいものがあって初めて生きてくるものですから。自由度の高い自然の中にも学びはいっぱいある。ワクワクを基軸に、知る・創るの螺旋で問いを深めていくことこそがSTEAMの学びなんです」。

教えてくれた人

中島さち子さん
steAm, Inc.代表取締役。主に音楽・数学・STEAM教育・メディアアートなどの世界で、国内外にて多彩に活動。国際数学オリンピック金メダリスト。大阪・関西万博テーマ事業プロデューサー。明治大学先端数理科学インスティテュート・東京理科大学研究員。経済産業省「未来の教室」実証/STEAMライブラリーに多数関わる。主な著書に『人生を変える「数学」そして「音楽」』『音楽から聴こえる数学』(講談社)、絵本『タイショウ星人のふしぎな絵』(絵:くすはらじゅんこ、文研出版)ほか。

>>【STEAM教育】分野ごとの詳しい記事一覧はこちら!
・サイエンス(科学):【STEAM教育】サイエンス(科学)の面白さって? ポイントは問いを生む環境づくり
・テクノロジー(プログラミング):【STEAM教育】プログラミングで身につく力って? 幼児期の遊びが習得のカギ!?
・エンジニアリング(工学):【STEAM教育】エンジニアリングのセンスは幼少期から磨ける!? 大切な体験とは
・アート(芸術):【STEAM教育】創造×興味が価値を生み出す! 子供にアート(芸術)が重要な理由
・マセマティクス(数学):【STEAM教育】幼児でも数学的遊びが家庭でできる!? 注目の数理的思考を育むコツ


文:曽田夕紀子

FQ Kids VOL.07(2021年夏号)より転載

人気の特集・連載記事 人気の特集・連載記事

〈特集〉「おうちで・楽しく・短時間で」実践に使える英語力をみにつける
〈特集〉おうちで遊ぶ・おうちで学ぶ
〈特集〉非認知能力をはぐくむ「おんがくのチカラ」
〈連載〉アフロ先生・阪田隼也さんの「大人と子供が響き合って、育ち合う」
〈連載〉てぃ先生の子育てお悩み相談室
〈連載〉佐藤卓/親子の「デザイン的思考」入門
〈連載〉和田明日香さんの「むずかしくない食育」
〈連載〉小島慶子さんが語る「子育て 世育て 親育て」
〈連載〉平田オリザ “わからない”を超えるチカラ -演劇×コミュニケーション能力-
〈連載〉照英さんが実践する「子供の才能を伸ばす接し方・話し方」
〈連載〉鶴岡そらやすの「LGBTを通して子育てを考える」

FQKids | これからの幼児教育を考えるメディア

Follow us!