2020.08.29
2022.03.14
2022.01.13
STEMの理数教育に、A(芸術/リベラル・アーツ)の創造性教育を加えた教育概念がSTEAM教育だ。Aが重要視される理由について、先進的な図工授業を展開する小学校教員の山内佑輔さん(新渡戸文化学園)は、こう話す。
「ワクワクすること、“プレイフル”の要素がもっとも強いのがアート。遊んだり、作ったりする中で興味や疑問を持ち、そこから出会える科学や数学の世界は、子供たちにとって魅力的です。僕の場合は、アートというより、“何かを作る”ということが学びのコアになる可能性があると考えています。作るという自分事の作業や活動から、知識が紐づいていく瞬間こそ、身になっていくものだと思うんです」。
山内先生の授業は、子供たちの興味を引き出すトリガーであふれている。例えば、小学4年生の図工の時間では、廃材活用や環境問題をテーマにしたクリエイティブな工作の授業を展開。アップサイクルを推進する企業と連携し、ゴミ問題やそれに伴う環境問題などを学びながら、実際に廃材を使って、子供たちの自由な発想によって新しい作品(=価値)を創造していく。作った完成品は、渋谷にある実店舗で陳列して販売するという本格的な取り組みだ。
不要となってしまった廃材を使い、新しい価値を創り出していく。
「材料を持ってきてさぁ作りましょうとやっても、それはそれで楽しいと思いますが、活動の価値をもっと深めたい。子供扱いせず、ストーリーや必然性をしっかり設定し、子供たちに伝えることが大事だと考えています。子供たちはすごいですよ、手が止まりませんから。そこに例えば今回のように『作品を販売する』という要素が加わると、また新しい発想が生まれてくる。創造する力にあふれています」。
教室や教科、学年など、これまでの学校の仕組みを超え、先生も生徒児童もともにつくり、ともに学ぶ場「VIVISTOP NITOBE」。
新渡戸文化学園では、キャンパス内に、子供たちが創ってみたいモノ・挑戦してみたいコトを実現できる場所「VIVISTOP NITOBE」を一昨年9月にオープン。「教室や教科、学年などの枠をなくし、教師も生徒も共につくり、共に学ぶ」を掲げ、毎週土曜日には、地域の子供たちも受け入れながら、ワークショップを開催している。運営を一任されている山内さんは、こう話す。
「STEAMは縄文時代からある、と、中島さん(steAm,Inc.)は言っていますが、僕もすごく共感していて。世の中は昔から混沌としていたけど、効率化を求めるなかで社会が変わり、学校教育も変化した。今、その状態が見直されているのなら、1回それを外してみよう、と。ここは小中高生、大人が垣根なく混じり合う一見超カオスな空間ですが、今後のSTEAM教育のヒントがありそうな気がしています」。
「VIVISTOP NITOBE」で使用する椅子を、小学5年生とデザイナーが一緒にデザイン・制作。
大人が“一緒に遊ぶ”という感覚が大切、という山内さんが、最近わが子と楽しんでいるのが「五十音散歩」。
「看板、自販機、ポスターなど、街の中から五十音を順番に探してみる。すると、普段の通学路も途端に面白くなるし、ポスターのデザインやフォントなど他のことにも興味が広がっていく。デザイン、社会科、マーケティングなど様々な学びの入口に立てる遊びで、僕自身も面白かったですね」。
研究者や芸術家、各界のスペシャリスト、教育者などが結集するSTEAM教育の専門チーム企業。1人ひとりの隠れた創造性を解き放ち、「様々な境界を超えた心躍る共創(協奏)」や「自然やAIとの豊かな共存」に満ちた、プレイフルな参加型社会を目指す。ワークショップや講演を多数開催。
HP:steam21.com
山内佑輔先生
steAm, Inc. Playful Teacher Architect。プロジェクトデザイナー。VIVISTOP NITOBEチーフクルー。学校内外で創造性を育む環境づくりに携わる。大学職員、公立小教員を経て、2020年4月から現職。VIVITAと連携し「VIVISTOP NITOBE」を開設。「教師も生徒も共につくり、共に学ぶ」を掲げ、学校と放課後の活動をアップデート中。
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文:曽田夕紀子
イラスト:岡本倫幸
FQ Kids VOL.07(2021年夏号)より転載
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