2020.11.07
2024.07.24
2021.06.01
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子供が“将来なりたい職業”と、親が“わが子に就いてほしい職業”は、必ずしも一致するものではない。近年、世に出回るランキング調査では、小中学生の人気職業の常連にYouTuberやゲームクリエイターが挙がるようになった一方、長引く不況や激変する社会情勢の影響か、親目線では公務員や看護師など安定志向が目立つ。
実際に就業するのはまだ先とはいえ、親的には“望ましくない将来”を子供が夢見ている場合、どうすべきなのだろう。「否定も肯定もする必要はない」と話すのは、東洋大学理工学部生体医工学科准教授およびキャリアカウンセラーの小島貴子先生。
「小学生の場合、やや専門性がある身近な職業を答える場合が多く、基本的な傾向はこの10年でもそんなに変わってはいません。『なりたい職業』と聞かれても、子供が触れる、見られる社会でしか選択ができない。親の世界観がどれだけ柔軟で広いかによって、子供に与える影響は変わります」。
子供と社会との接点機会を増やしたり、子供の世界の領域を拡大するなど、親が幅広い選択肢を示すのも一案。だがその一方で、現代社会では職業の陳腐化が非常に早いという側面もある。
「今ある職業が、10年、20年後も職業として存在しているのかはわかりません。選択肢を示すのも悪くないですが、決めつけや偏見、思い込みにとらわれず、社会と未来に対していかに柔軟性を持てるかの方が重要。
また、職業の選択理論とは、価値観、興味、能力によって成立します。価値観が合い、興味が継続すると能力になる。子供の興味関心を育むことが職業選択の入口になります」。
AI化が進み、労働の代替がますます加速する未来。激動の時代を生きるために子供のうちから育むべき能力とはなんだろう。
「機械では測れない、エモーションや情緒こそ重要。0歳から小学生までの間は、親の教育が子供の人格形成のベースになるので、家庭での情操教育が大切です。あとは、言語の語彙力。人類は、言葉の力によって文化発展してきました。今はネットやSNSで大量の情報が飛び交っていますが、発信力やキャッチアップ能力のある人は有利。これからの時代も語彙力や言葉の力は欠かせないでしょう」。
小島先生いわく、「学校教育はあくまで家庭教育のアウトプット」。絵本の読み聞かせなど、家庭教育の中でできることを実践し、子供の将来に役立つ力を備えたい。
2020年版 新小学1年生の
将来就きたい職業ランキング
「男の子編」
「YouTuber」がなりたい職業に定着
22年連続で「スポーツ選手」が1位に。内訳では「ラグビー」が急浮上し、「サッカー」「野球」に続いた。「警察官」は2012年から9年連続の2位。2016年に54位で初登場して以来、年々と順位を上げていたYouTuberが今年は初めて「芸能人・歌手・モデル」も追い抜き、トップ10に。
1 スポーツ選手
2 警察官
3 運転士・運転手
4 消防・レスキュー隊
5 TV・アニメキャラクター
6 研究者
7 ケーキ屋・パン屋
8 医師
9 大工・職人
10 YouTuber
11 宇宙関係
12 パイロット
13 料理人
14 自営業
15 車整備・販売
16 芸能人・歌手・モデル
17 鉄道・運輸関係
18 自衛官
19 教員
20 エンジニア
一方、親の「就かせたい職業」では、安定感のある職業がトップ3を占め、「医療関係」も初めてトップ10入り。
1 公務員
2 医師
3 会社員
4 スポーツ選手
5 警察官
6 消防・レスキュー隊
7 研究者
8 エンジニア
9 運転士・運転手
10 医療関係
2020年版 新小学1年生の
将来就きたい職業ランキング
「女の子編」
4人に1人が
「ケーキ屋・パン屋」になりたい
1位は、調査開始以来22年連続で「ケーキ屋・パン屋」。全体の26.0%と絶大な人気で、2位以下を大きく引き離した。内訳では、「ケーキ屋」「パティシエ」が約8割。トップ10の顔ぶれに大きな変化はなく、「看護師」をはじめ、「保育士」「医師」「教員」「警察官」といった子供に身近な職業が多い。
1 ケーキ屋・パン屋
2 芸能人・歌手・モデル
3 看護師
4 花屋
5 保育士
6 アイスクリーム屋
7 医師
8 教員
9 警察官
10 美容師
11 TV・アニメキャラクター
12 スポーツ選手
13 デザイナー
14 ペットショップ・トリマー
15 自営業
16 キャビンアテンダント
17 動物園・遊園地
18 主婦・主夫
19 販売・接客業
20 バレリーナ・ダンサー
親の「就かせたい職業」では、1位「看護師」、3位「薬剤師」、4位「医師」、5位「医療関係」と医療系の職業が人気。
1 看護師
2 公務員
3 薬剤師
4 医師
5 医療関係
6 会社員
7 ケーキ屋・パン屋
8 教員
9 保育士
10 芸能人・歌手・モデル
※株式会社クラレ調べ
調査対象:2020年4月に小学校に入学する子供とその親
調査方法:〈クラリーノ〉製ランドセルを購入した方にアンケートを実施
2019年7月~2019年12月のインターネット回答分から有効回答を抽出
有効回答:子供4,000名(男女各2,000名)、その親4,000名
小島貴子さん
東洋大学理工学部生体医工学科准教授/キャリアカウンセラー。出産退職後、7年間の専業主婦を経て1991年に埼玉県庁に職業訓練指導員として入庁。キャリアカウンセリングを学び、職業訓練生の就職支援では7年連続で就職率100%を達成。多数の企業で採用・人材育成コンサルタント、講師なども務める。『就職迷子の若者たち』(集英社)など著書多数。
文:曽田夕紀子
FQ Kids VOL.05(2021年冬号)より転載
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