2024.06.19
2024.06.03
2021.01.02
近藤さんがディレクターを務める「DO-IT Japan」プログラムは、障害がある子本人にフォーカスして、「自分自身が本当はどうしたいと思っているか」をたずねることを大切にしているそうだ。
「障害がある子は自分の意思をたずねられる機会が多くありません。学校の先生も街の人も、本人でなく保護者に『どうサポートしたらいい?』と聞いてきます。そんな経験からか、保護者は子供の思いとは別の社会的なメッセージを受け取ることがあります。
子供が学校や出先でパニックになったり、加配の先生がついたり、文字が読めないからと特別な教材を用意してもらったりするたびに、迷惑をかけて申し訳ないと恥じ入ることがあります」と近藤さん。
今年6月にオンライン配信されたP&GとAMP共催の「【ダイバーシティ3.0】個性を活かし合う世界へ~コロナによって多様性の未来はどうなる?~」にも登壇。見逃し配信もある。
子供の様子を聞いた保護者は、育て方が悪いと指摘されたように感じて傷つくことがある。障害のある人も社会に参加するのが当たり前という「ダイバーシティ&インクルージョン」の世の中であれば、そんな風に親が申し訳ない気持ちにならなくてすむはずだ。
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「申し訳ない、周りに合わせなければと思うと、子供の苦手や弱い部分をなんとか矯正しようとして、強みや良さが見えなくなりがちです。子供の方もつい窮屈な考え方になり、本当は夢があるのに遠慮したり、やりたいことがあるのに我慢したりしてしまう。だから、僕らのプログラムでは、子供本人の思いをまず尊重するようにしているのです」という。
DO-IT Japanが夏休み時期に開催している夏季プログラムで、多様な価値観について学ぶ大学のゼミのようなセッションで議論する参加者たち。 写真提供/DO-IT Japan
プログラムでは周囲との対話の仕方や自分のニーズの説明の仕方を学ぶ機会も用意されている。そして、テクノロジーを学び「困っています」だけでなく「こんな方法を使わせてくれたら一歩前に進めます」と話せるようになるという。
「それは、“お願い”ではなく“権利”なんだよと伝えます。プログラムに参加し仲間を得て、先輩というロールモデルや多様な価値観に触れて自信をつけた彼らは、地元に戻って保護者や先生などに『自分はこうしたい』と、対話するようになります。すると対話を経験した大人たちも変わる。障害のある子たちのチャレンジを支えていくことで、世の中がダイバーシティ&インクルージョンに近づくと思っています」と近藤さん。
プログラムを共催する日本マイクロソフト株式会社のオフィスツアーに参加。最新のテクノロジーを体験し意見交換する。そのほか、海外研修やオンラインミーティングなど、年間を通じたプログラムを提供。 写真提供/DO-IT Japan
子供の自立を願う親は、「周囲に迷惑をかけない子」に育てなければと躍起になりがちだ。しかし、子供のやりたいこと、チャレンジを応援する。子供のありようをそのまま応援することが、本当の自立につながるのだろう。
DO-IT Japanは東大先端研と共同主催で行っている、障害のある若者の大学進学やキャリアへの移行支援を通じたリーダー育成プログラム。共催・協力企業との産学連携により、2007年から活動を継続している。障害のある子供たちや若者に、先端テクノロジーを活用するなどして自分らしい学び方を知ること、高校や大学へ進学すること、卒業後に自らが希望するキャリアにつながる力を育てるなど、様々なプログラムを提供している。そして、障害のある若者たちの中から未来社会のリーダーを育てる活動を続けている。
近藤武夫さん
東京大学先端科学技術研究センター人間支援工学分野准教授。DO-IT Japanディレクター。専門は特別支援教育(支援技術)。広島大学教育学研究科助教、米国ワシントン大学計算機科学・工学部などを経て現職。
文/江頭恵子
FQ Kids VOL.04(2020年秋号)より転載
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