英語教育に「異文化理解」が必要な3つの理由とは? “VUCA時代”の親と子供たち

英語教育に「異文化理解」が必要な3つの理由とは? “VUCA時代”の親と子供たち
小学校での英語学習がスタートし、中学校では今後オールイングリッシュの授業を目指すなど、英語教育に変化が訪れている。社会がどう変わっても、将来の子供の力になる能力とは何なのか? 東京外国語大学の岡田教授が語る。

社会がどう変わっても子供の力となる能力とは?

少し前までの親は、「子供には将来良い大学を出て、良い就職先を見つけて、安心安泰で暮らしてほしい」と願うのがスタンダードだっただろう。

しかし今は、この先の安定も正解もないVUCA(ブーカ)の時代と言われる。大企業ではリストラが当たり前になり、コロナウイルスの影響で新卒採用ができない企業も出てきた。子供が社会に出る10年後先に必要な力を予測するのはますます難しくなっている。

ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所の取材によると、東京外国語大学の岡田昭人教授は「これまでの学校教育では身に付けられない能力が必要になることは明らか」と指摘し、その能力の一つとして、国を超えて誰とでも対話できるコミュニケーション能力をつけさせることが重要と話している。

※ VUCA(ブーカ)の時代(下記、4つの概念の頭文字)
•Volatility 変動性:変化のスピードが速い
•Uncertainty 不確実性:予測できない
•Complexity 複雑性:多くの要因が絡み合っている
•Ambiguity 曖昧性:因果関係が不明瞭

まずは親から異文化に関心を寄せる

英語学習というとどうしても、試験の点数や資格で測る語学力に目がいってしまう。しかし実際、グローバル人材には語学力だけではなく、「異文化理解」とコミュニケーション能力が必要不可欠だ。

たとえば、「A型なのに大雑把だね」や「男なのにスイーツ好きなの?」という風に決めつけられて、嫌な思いをした経験はないだろうか。

これと同様に「アメリカだから〜」「海外の人たちは~」と、国籍や地域、属性をもとに相手を捉えてしまうと、知らず知らずのうちに偏見や摩擦を生んでしまう。

岡田教授は、VUCAの時代の円滑なコミュニケーションを邪魔する要素として、3つを挙げている。


①相手の思考を無視してしまう「ステレオタイプ」
 →「イギリス人は~」「英語圏の人たちは~」のような思い込み

②相手を見誤ってしまう「スキーマ」
 →過去の反応や経験から、相手の反応を予想したり期待したりすること

③誤解が生じやすい「非言語的要素」
 →表情、ジェスチャー、アイコンタクト、対人距離のとり方、時間の概念


岡田教授:「特にジェスチャーは、誤解を生じさせやすいコミュニケーション方法だといいます。例えば、一見、世界共通のように思える「OK」サインが国によっては相手を傷つけてしまい、“Yes”という意味で首を縦に振る国もあれば、インドのように首を横に振る国もある、ということです」

家庭や学校、地域で海外から来た人たちや留学生とふれあうだけでも英語教育にとってプラスとなる

こうしたすれ違いを引き起こさないためにも、グローバル化の中で豊かなコミュニケーション力を育てるために特に重要なポイントを、岡田教授はこう指摘する。

岡田教授:「子供の異文化理解教育においては、親や教師が異文化に興味をもち、さまざまな文化の違いを理解しているかどうか、理解しようとしているかどうかが大事です」

まずは、親である私たちが色んな国の人たちの生活や習慣に目を向けること。それがVUCAの時代で、子供がグローバルな文化や言語に関心を持つきっかけとなるはずだ。

DATA

ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所

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