【世界の最新教育事情】欧米の家庭での食事や給食・おやつなど、食育ニュース7選

【世界の最新教育事情】欧米の家庭での食事や給食・おやつなど、食育ニュース7選
各国の現地ライターが、世界の最新教育事情をお届けする「WORLD LEARNING NEWS」! 今回の共通テーマは「食育」です。さまざまな給食やおやつなど、海外の食生活に合わせた実情とは?

地理、歴史、算数などあらゆる教科を
体験しながら食育学校庭園で学ぶ
From USA

食育学校庭園プロジェクトの目的は、農作物を栽培したり収穫することで、自分たちが食べる農作物がどこから来ているかに慣れ親しむこと。 ©Tending Our Common Ground

アメリカの小中学校で行われる「食育学校庭園プロジェクト」。有名シェフで食育活動家のアリス・ウォータースさんによって1995年から開始。生徒たちが作物の種を植えて育てて収穫し調理する。

コーンの収穫時期には、コーンの産地であるメキシコの場所を地図で調べて地理につなげるなど、学校庭園はあらゆる教科の体験型学習になっている。「農作物がどこから来ているのか全然知らなかったから、目からうろこ」と、生徒たちも学びが大きい様子。

文:大山真理

食生活は楽しく、
健康的に、シンプルに
From NETHERLANDS

学校でお弁当を食べる子どもたち。 ©Pavel Danilyuk

オランダの学校は給食がなく、お弁当を持ち寄る。その中身は例えばチーズ1枚を挟んだパン、ハム1枚を挟んだパン、そしてピーナツバターとジャムを塗ったパン。後はりんご丸ごと1個というシンプルさ。

シンプルかつ栄養バランスを考えたワンプレート。スパイスや薬味もたっぷり。 ©Alesia Kozik

夜ご飯は家族そろって食べるのが習慣で、大概ワンプレートだ。シンプルな食生活だが、食材は有機食材やスーパーフードなどが簡単にスーパーで買え、家族や友達とだんらんしながらの食事は心も満たす。肩肘はらずに生きることを楽しむ姿勢は食生活にも表れる。

文:米屋香林

パリの公立校の給食は
100%サステナブルに
From FRANCE

パリ市がメディア向け施設公開日に提供した、通常食とベジタリアンミールの両方が乗る給食。

オリンピックでも注目されたパリ市は、2027年までに公立学校などの公立施設で提供する食事の100%を持続可能な食品に切り替える。100%を旬の食材、75%をオーガニック認証つき、50%を地産地消(パリから250キロ圏内)の生産品に。

2008年時点での持続可能な食品割合は8%だったが、2019年には53%まで引き上げた。ベジタリアンメニューを毎日選べることや、週2回をベジタリアンミールにすることも目指しており、日々の食事からも環境負荷の軽減を狙う。

文:守隨亨延

過去の反省を活かし
「お皿のお手本」でゆるく食育
From FINLAND

「お皿のお手本」には野菜が1/2、炭水化物が1/4、タンパク質が1/4と書かれている。

フィンランドの保育園や小学校の食育はゆるい。保育園では園児が「ゾウの量」「ウサギの量」「ネズミの量」などと希望の量を伝え、大人が盛りつけて食べ切りを目指す。学校給食はセルフサービスで、食堂には良いバランスを示す「お皿のお手本」が掲示されており、低学年の生徒が盛り付けた皿は先生が確認する。

食わず嫌いには一口だけでも味見することが奨励され、無駄に多く取ったり、お代わりしたのに残すのはマナー違反と注意される。フィンランドでも、中高年の世代は残すことが許されなかったので、当時の反省が生かされている。

文:靴家さちこ

ニンジン生かじりが
子どもたちのおやつの定番
From DENMARK

誕生日の子がレーズンをプレゼントしている。(デンマークでは誕生日の子が何か用意してクラスに配るのが主流) Ayumi Umino(個人所有)

デンマークでは、乳幼児期の子どもたちの軽食や補食(おやつ)は、保育園・幼稚園でも家庭でも、野菜や果物、ライ麦パンをカットしたものが与えられることがほとんど。スナック菓子や甘い加工品は、金曜日や特別な行事に、という認識が広くある。

公園や街中、公共交通機関や自転車の荷台などどこでも子どもがニンジンを生のままかじっている光景をよく見るし、子どもの友だちの家に遊びに行く時なども、オーガニックの果物を持っていくことが多い。家族や保育者が簡単に用意でき、シンプルで、かつ子どもたちにとっても安全で健康的なものが主流だ。

文/Ayumi Umino, Educational Visits Denmark

お弁当はシンプルでも
その食材にはこだわりが
From ITALY

昼食のパニーノを食べる子どもたち。

美食の国・イタリアでは良質な食材を手作りで調理しておいしく食べるということを大事にしており、その姿勢は家庭内で子どもの頃から培われる。故に給食は、味には賛否両論あるものの、献立にはアレルギーや宗教上の決まりに配慮したバリエーション豊かなメニューをそろえ、子どもたちに食べたくないものを無理強いすることもない。

中学校以上は昼過ぎに学校が終わり、基本的には家で昼食をとるが、弁当を持っていく場合は基本的にはハムやチーズを挟んだだけの簡単なパニーノ(サンドイッチ)だ。一見質素な感じもするが、食材の良さを生かしたシンプルな料理を重んじるイタリア人には良しとされているのかもしれない。

文:田中美貴

頑張りすぎない、簡単夕食
From GERMANY

「アーベントブロート」は決して質素な食事ではない。さまざまなチーズやパテ、ピクルスなども登場する。 ©Flickr, Nicola Holtkamp

日本人と違い、ドイツ人は夕方にパンを食べることが多い。その習慣を代弁するように夕食のことを「アーベントブロート」とも言う(Abendbrot.直訳は「夕方のパン」)。

準備は非常に簡単で、パン、ハム・ソーセージ類、チーズ、生野菜を食卓に並べるのみ。主な野菜はトマト、きゅうり、パプリカ、ニンジン。ラディッシュやコールラビの味に慣れている子どももいる。子育て世帯にとっては献立計画、買い物、調理を時短できることが大きなメリットだ。

文:町田文

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FQ Kids VOL.20(2024年秋号)より転載

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