子供の非認知能力が“結果的に”伸びる! フィンランドの幼児教育がスゴい

子供の非認知能力が“結果的に”伸びる! フィンランドの幼児教育がスゴい
IQや学力テストなど数値では測れない「非認知能力」が、未来を生きる子供たちに必要である、といわれて久しい。その力はどうすれば身につくのか? その答えの鍵は、フィンランドの幼児教育が握っているのかもしれない。

数字では測れない力を伸ばす
フィンランドの教育

2020年度から始まった小学校の新学習指導要領では「資質・能力の育成」が注目されています。幼児教育のガイドラインは2018年度から既にスタートしており、その中で強調されている「非認知能力」が今話題になっています。

非認知能力とは、例えば、目標に向かって頑張る力、他の人とうまく関わる力、感情をコントロールする力などのことです。実はフィンランドの教育は、この非認知能力を身につけさせるのに最適な教育だとして、参考にされることが多いのです。

フィンランドの「幼児教育の国家カリキュラム」では、幼児教育の役割を「子供の包括的な成長、発達、学習を保護者と協力して促すこと」とし、幼児教育で学ぶ知識とスキルは「子供たちの積極的な社会参加を促すもの」と定義しています。

カリキュラムは、子供たちの①思考と学習、②文化的知識、コミュニケーション力、表現力、③自立と生活力、④マルチリテラシー、ICTスキル、⑤参加と影響力の5つの領域で構成されており、実に多角的な学習ガイドラインが打ち立てられています。

周囲の人と円滑につながり、
主体的に社会と関わるのが目標

カリキュラムには明確に、「非認知能力を育てること」が目標に掲げられているわけではありませんが、フィンランドの幼児教育を受けていると、“結果的に”非認知能力が備わるといわれています。

その理由は、①子供たちが主体となって夢中で遊べるように、安心できる環境を整える、②子供自身の興味・やる気を尊重し、伸ばしてあげる、③学ばせるのではなく、子供自身が主体的に身につけていく、④子供の成功体験を積み重ねる、といった、「子供の主体性を育てる」取り組みが実践されているからです。

実際にフィンランドの子供たちは、シャイな国民性から、一見活発でにぎやかには見えないのですが、おっとりしていながらも、自分の意見はしっかり相手に伝えられるのが特徴です。

今年で3年連続「世界幸福度ランキング」1位の国らしく、幼児教育が個人のスキルの向上ではなく、周りの人と良好な関係を築き、主体的に社会へ関わる「豊かで幸福な人生」を目標としていることが、成功の鍵なのではないでしょうか。

非認知能力を育てるために大事なこと

子供たちが主体となって夢中で遊べるように、安心できる環境を整える

フィンランドでは、子供は遊びを通して最もよく学ぶと考えられています。例えば「レイッキカルッタ」というボードで、どの遊びをしたいか自分で選び、主体的に取り組みます。子供たちは自分で決めた遊びには長く集中できます。子供3~4人に1人の保育者がつき、ルールや相手を尊重する社交スキルも身につけさせます。

子供自身の興味・やる気を尊重し、伸ばしてあげる


フィンランドの教育現場では、よく子供一人ひとりを観察して、モチベーションの源、つまり「興味のあること」を探ります。興味があることが分かると、例えば恐竜が好きな子には恐竜、パズルが得意な子にはパズルなどを入り口にして、そこから一人ひとりのやる気を引き出し、それぞれの学習の世界を広げる指導をします。

学ばせるのではなく、子供自身が主体的に身につけていく


フィンランドの幼児教育は、フレーベルやモンテッソーリの影響を強く受けており、子供たちの知的興味が敏感になる年齢やタイミングを重視しています。例えばアルファベットや数字などを練習したり覚えさせるのは、就学前教育が始まる6歳まで待ち、それ以下の年齢のクラスでは壁に飾るのみにし、興味を示す子がいたら個別に教えます。

子供の成功体験を積み重ねる


フィンランドの幼児教育の現場では、子供たちに多くの成功体験をさせてあげることを心がけています。褒めるときにはポイントがズレないように、保育者は完成した工作や絵について「この作品のできばえはどう?」と、まず本人に自己評価を聞いてから、喜びをわかちあいます。子供の現実的な自己肯定感を育む指導法です。

TOPICS1
フィンランドの生活と
教育を体験できるツアー


「Finland Trip for 親子」は、ヘルシンキ郊外の自然豊かなトゥースラで、住んでいるように暮らし、地元の保育園や小学校に訪問し、非認知能力を伸ばす教育を体験するショートステイプログラム。森や手工芸、お料理やデザインのエキスパートたちとの交流やスモークサウナなど、様々なプログラムが用意されている。

フィンランドの保育士資格を持つ日本人通訳が同行。フィンランドの保育・幼児教育に詳しい、九州ルーテル学院大学の三井真紀准教授からの監修も得ている。

TOPICS2
世界との交流が盛んな
トゥースラの取り組み

ヘルシンキから北へ約30kmに位置するトゥースラは、自治体の目標に「国際化」を掲げ、国際化教育の一環として、海外からの訪問者を積極的に受け入れている。どのような取り組みを行っているのか、トゥースラ教育委員長のヴィルピ・レヘモスヴァーラ氏に聞いた。

「私たちは、子供たちが海外の子供と交流することを貴重な機会と考えています。昨年秋に訪れた日本からのゲストファミリーは、トゥースラの保育園への訪問と教育委員会との交流を満喫し、豊かな実りある滞在だったようです。

子供たちには『異文化への探求心は日々の生活を豊かにし、さまざまな違いを乗り越え、驚くべき速さで人々をつなげる力がある』ことを、ぜひ知ってほしいです」。

PROFILE

靴家さちこさん

フィンランド在住ライター&通訳コーディネーター、ラヒホイタヤ(保育士/総合福祉資格)。育児、教育、社会福祉を中心に、フィンランドのライフスタイル全般を取材、執筆。「ニューズウィーク日本版」など雑誌のほかWEBサイトにも多数寄稿。


FQ Kids VOL.02(2020年春号)より転載

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