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2019年、日本との外交関係樹立100周年を迎えたフィンランド。人口約550万人ほどの小国だが、OECDが行うPISA※と呼ばれる国際的な学習到達度調査で、毎回トップクラスの結果を出している。
世界が注目するフィンランドの教育事情について、フィンランド大使館のマルクス・コッコ参事官に話を聞いた。
「基礎教育(義務教育)は、日本の小学1年生から中学3年生に当たる9年間を一貫して行われます。その後、普通高校か職業高校へ進学し、さらに大学に進む人も。フィンランドの学校制度は『人材こそ資産』という考えをベースにしており、すべての人が平等に教育の機会を得られるよう、大学まで教育費は無料です」。
基礎教育開始は7歳と、国際的に見てもそれほど早くない。フィンランドでは、子供が成長して発育するためには、ゆとりを持った時間と空間が必要だと考えられているからだ。
「子供は遊びや運動を通して体を動かすことで集中力が増し、いろんなことに取り組むのに高いモチベーションを保つことができます。アカデミックなことは6歳まではあまり教えず、ゆったりとした環境で、人格・個性・コミュニケーション能力・自尊心を伸ばせるように働きかけます」。
基礎教育の前には、0歳から入園可能な保育園がある。保育園は日本の保育園・幼稚園両方に相当し、利用料は日本の保育園と同じく世帯所得によって変動する。
その後、6歳になると保育園や学校内に併設されたプレスクールに入る。ここで子供1人1人の就学準備の度合いを見極め、必要であれば入学時期を早めたり、遅らせたりすることもできる。
フィンランドの学校では、テストが少ないのも特徴だ。
「学習到達度を測る簡易的なテストはありますが、全国的に実施するテストは、高校卒業時以外行いません。順位をつけて競うテストがなくても高い学力を維持できているのは、生徒の主体的な学びを促す教育システムが功を奏しているのでしょう。屋外活動や制作などの『遊び』を通した教育を行うことで、学びの楽しみを見つけてもらい、自発的な学習意欲を持ってもらうことが最善と考えています。日本も学力の高い国ですが、どちらかというと、競争や詰め込み式の教育システムが目につきます。フィンランドでは競争ではなく協力を重視し、子供たちが仲間とともに、生涯に渡って学べる環境づくりを目指しています」。
※Programme for International Student Assessmentの略。
多くのフィンランドの子供たちは、総合学校での9年間の基礎教育を終え、普通高校か職業高校を選択する。
現地在住ライター靴家氏の話では、最近の傾向として普通高校よりも職業高校の方に人気が集まり、入学も難しくなるような現象が起きているという。将来目指す職業が決まっている場合は、より実践的なことが学べるという点で、職業高校を希望する子供が多いのだろう。
フィンランド教育のもう一つの特徴は、生涯教育の考え方が広く普及している点。ほぼすべての自治体に成人教育のための教育機関があり、社会的にサポートされている。
科目は多岐に渡り、居住している町の成人教育センターで、外国語、写真撮影、ギター演奏など、1コースにつき数十ユーロほどの費用で受講できる。夏には夏期大学や国民成人学校で、より実務的な学問を学ぶこともできる。
自分に合った職業を模索している人や、基礎教育や普通高校を終えて、一旦学習を休止している人に向けた1年間のコースもある。その目的は、個人の多様な成長と能力をサポートし、コミュニティの中で役割を果たせるようにすること。また、フィンランド社会の民主主義、平等、多様性を推進することでもある。
フィンランド大使館
マルクス・コッコ参事官(報道・文化)
文:木村悦子
FQKids VOL.01(2019年冬号)より転載
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