2022.10.27
2021.08.06
2023.09.09
長い子どもの夏休み。わが子に何か特別な体験をさせてあげたいが、仕事とも折り合いをつけなければならない……。何かいい方法はないかといくつかのサマープログラムをリサーチしていたところ、「保育園留学®」と「森のがっこう留学」が目に留まった。
家族で自然豊かな地方に1~3週間滞在し、子どもは保育園に通って、親はリモートで仕事ができる「保育園留学®」は、以前FQ Kidsでも取り上げてきた※ 。「森のがっこう留学」は、その小学生版のようだ。
※参考:【日本の最新教育事情】非認知能力を伸ばすお出かけ新情報など、話題のニュース6選!
しかも、たまたまいつも帰省する地方にあるという。そこでお盆休みの帰省と合わせて、2週間のワーケーションをしてみよう! と思い立ち、小2の娘と一緒に「森のがっこう留学」を体験してきた。
浦河町内にはJRA日高育成牧場をはじめ、約200の牧場に3000頭以上のサラブレッドがいる。名馬シンザンの出生地としても有名だ。
今回FQ Kidsスタッフが滞在したのは、北海道浦河町。競走馬の産地としても有名な中央南西部の海と山のある町だ。夏は涼しく、冬は雪が比較的少ないという、北海道初心者にも優しい土地。そのため、町ぐるみでテレワーク・ワーケーションを薦めている。
今回の「留学先」となったのは、認定こども園「浦河フレンド 森のようちえん」が運営する「フレンド森のがっこう」だ。2023年6月にフリースクールとして開校したばかりで、夏休み期間は地元の子どもたちも通う学童保育との合同プログラムが行われていた。
プログラムの一例は以下の通り。
例からもわかる通り、自然の中での活動が多く、海・山・馬といった浦河町ならではの環境を生かした遊びができる。
特に「馬の住む森」を保有していることが、この施設の最大の特徴だ。8ha(東京ドーム1.6個分)もの森を保有しており、同施設で飼育している馬2頭が自由に森に出入りして過ごしている。
馬の名前はNIちゃんとTAYくん。アイヌ語で「木」と「森」を意味する。園児・生徒は、馬との触れ合いを通してさまざまなことを学んだり、動物と心を通わせる体験ができる。
ちなみに、わが家の他にも、この夏は2組の家族が「留学」に訪れていた。1組目は都内から「保育園留学®」にやってきたご家族。そして2組目はなんとイギリスから「がっこう留学」にやってきたそうだ。
「フレンド森のがっこう」の運営を行う、伊原理事長にお話を伺った。
「まず、『遊びは学び』ということが一番の理念です。子どもは大人の準備段階ではなく、子どもには子どもの時代があります。子ども時代に全力でたっぷり遊んで幸せに過ごすことが、一生の土台となる学びにつながると考えています」。
理事長の言葉通り、「フレンド森のがっこう」では教科書を用いた授業は行わず、生徒がやりたいことをコーディネーター※ と一緒に計画して、子どもが主体となって1日を過ごしている。
今回娘が参加した学童保育でも、メインとなるプログラムを1つは設定はしているものの、1人ひとりがやりたいことを見つけ、自主的に行動することが奨励されていた。
※「フレンド森のがっこう」では、大人を「先生」ではなく、子どものやりたいことをサポートする「コーディネーター」と呼んでいる。
写真は浦河フレンド森のようちえん公式HPより。(撮影:古瀬 桂)
母体となる「浦河フレンド森のようちえん」は、約100名の園児が通う認定こども園だ。初めて見たときには、芸術的なフォルムの外観に感動した。建築全体が三角形を用いた「木造立体トラス」で組まれており、室内も床から斜めに柱が生えている。
「四角い家具が置けないから大人には不便に見えますが、子どもには自由な発想で遊べるスペースです。壁がないことで異年齢保育の交流がしやすいメリットもあります」と伊原理事長。
「これから50年100年と、保育機能だけではなく、町の交流などいろいろな用途で使える施設になると思います」と、未来まで見据えた構想だ。
吹き抜けの遊技ホールを取り囲むように保育室などが配置されたシンプルな設計。(撮影:古瀬 桂)
実際に、子どもはどう感じていたのだろうか。小2の娘に今回のがっこう留学について感想を聞いたところ……
「見たことない生き物や虫がいて、ワクワクする。怖いときもあるけど、友だちと協力したり、園舎までの行き方を工夫したり、いい方法を考えている」。
「海や山の景色も見たことがなくて面白いし、室内も外も広いから、1日中走り回っていられる」。
目を輝かせてこう教えてくれた。
親目線で、この留学をきっかけに娘に訪れた変化といえば、まずは早寝早起きだ。留学先では毎日6:30からのラジオ体操に行っていたので、早起きが定着した。学童には朝9時までに行けばいいのだが、毎日楽しすぎて「早く学童に行きたい!」とせがむので、毎朝8:30に送っていた。
学童では、外遊びを中心に17:00の終わりの時間まで目一杯走り回っていて、迎えに行っても「まだみんなと一緒にいたい」と言うことも。そして帰宅すると、お風呂と夕飯を済ませたらすぐに寝落ちをしてしまうほどで、とにかく毎日を全力で楽しんでいることがよくわかる生活だった。
さらに最も変わった点は、ポジティブな話が多くなったことだ。
これまでは、学校で友だちと仲違いしてしまったことや、先生に注意されて悲しかったことの報告を家で受けることが多かった。私も、「そっか、つらいことがあったね」と共感しながら、なんだか一緒に落ち込んだりもした。
しかし、留学先での帰宅後は、楽しかった、面白かった、知らないことがわかった、見たことないものを見た、などポジティブな報告ばかり。私もその話を聞いているだけで、山や海の情景が浮かび上がり、まるで夏休みの子ども時代にタイムスリップしたようにワクワクした。
「涼しいところで娘と過ごせたらいいな」。最初は、なんとなく毎年来ている北海道へ帰省するつもりだったが、今回の森のがっこう留学&ワーケーションでは、家族だけの帰省だけではできなかった体験をしたり、新しい友達もできたりして、娘の世界は大きく広がったことだろう。
私も、真っ黒に焼けた寝顔を見ると、ああ今日も大冒険してきたなと感じて、幸せな、そして羨ましいような気持ちでいっぱいになる毎日だった。
この「保育園留学®」「森のがっこう留学」は、夏休み限定のものではない。次の長期休みに、あるいはそれ以外の時期でも受け入れている。ぜひ親子でやってみたい活動や行ってみたい地域を探して、子ども時代にしかできない学びや育ちを体験してほしい。
▶「フレンド森のがっこう」への「がっこう留学」についてはこちら
▶「浦河フレンド森のようちえん」への「保育園留学®」についてはこちら
文:FQ Kids編集部
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