【世界の教育事情】身体を動かす国語授業やアプリでの生物探索など、話題の学び6選!

【世界の教育事情】身体を動かす国語授業やアプリでの生物探索など、話題の学び6選!
海外に目を向けると、それぞれの国特有の文化や歴史に合った教育がなされている。難民や移民が多いベルギーやオランダでの遊び感覚での学校の授業や、オモチャを借りられるプログラムなど。最新の教育事情を見ていこう。

USA
好きなオモチャを借りられる
「トイローン・プログラム」

オモチャは企業、団体や個人などの寄付や献金で購入。毎年約3万人の子供たちが借りている。 ©Toy Loan

図書館で本を借りるように、子供たちがぬいぐるみやゲームなどのオモチャを借りられるシステムを提供するアメリカの非営利団体「トイローン」。ロサンゼルス郡内50ヶ所に設けた「トイローン・センター」で活動している。この活動は、世界恐慌中の1935年に、自宅にオモチャがない子供たちに向けた事業としてスタート。

「遊びは認知機能や感情、身体の発達にとても重要です」と話すのは、ロサンゼルス郡社会福祉事業部の広報責任者ジェームス・ボールデンさん。オモチャをきれいな状態で期限までに返すことを通じて、子供たちは責任を持つことの大切さも学べる。

トイローンプログラムの様々な遊びを通して、子供たちは探求心や想像力を養う。 ©Toy Loan

DATA

Toy Loan
HP:dpss.lacounty.gov/en/community/toy-loan.html
文:大山真理


BELGIUM & NETHERLANDS
体育館で国語の授業
身体を動かしながら言葉を覚えよう

言葉が書かれた紙を丸め、投げたり受け取ったりして遊びながら、言葉を覚える。

身体を動かしながら言葉を学ぶと、楽しみながら学習でき、習得も早いといわれる。難民や移民が多いベルギーやオランダでは、子供たちが早く言葉を覚えられるように、遊び感覚で言葉を学ばせる学校が多い。

まず教師は小さく切った紙に単語を書き、教室の床にばらまく。そして、子供たちにジャンプさせたり、ダンスをさせてから紙を拾わせる。そこに書かれた単語の正確な意味を、定冠詞と一緒に発音させ、上手くできたら可愛いシールがもらえる仕組みだ。この方法は、オランダの小学校の教師たちが中心となり、全国教育機関主催のミーティングで発表されたのちに、ヨーロッパ諸国で奨励されている。

DATA

Bewegend leren in de gymzaal ・ Juf Maike
HP:jufmaike.nl/bewegend-leren-in-de-gymzaal
文:稲葉かおる


ITALY
イタリアンデザインの名作から
想像性を培うワークショップ

ラボのスペースもイタリアらしいカラフルなデザインが。 ©Martina Bonetti

2021年5月にミラノにオープンした「ADIデザインミュージアム」は、伊デザイン界で最も権威のあるコンパッソ・ドーロ賞受賞作の展示や、デザインをテーマにした特別展が開催される話題の新スポット。

館内には「ジュニアデザインラボ」があり、5~13歳の子供たちを対象に、デザインの役割を理解したり、モノの機能と形、素材と色の使い方の重要性を楽しく学んだりできる各種ワークショップが行われている。2021年9月現在は、歴史的受賞作を例にアイデアを考え、みんなでそれを形にするワークショップを開催中。小さい頃から名作に触れ、想像力を伸ばす教育はイタリアならでは。

DATA

ADI Design Museum
HP:www.adidesignmuseum.org
文:田中美貴


FRANCE
食事の環境負荷をより低く
給食で取り組むサステナブル

パリ近郊の卸売市場「ランジス市場」に集まる食品。 ©Paris Tourist Office – Photographe : Amélie Dupont

パリ市がサステナブルな学校給食の取り組みを加速している。同市の保育所のミルクと哺乳瓶はすでに100%オーガニックになっているが、学校給食ではオーガニックおよび持続可能なセクター由来の食品割合はまだ53%にとどまっている。それを2026年までに100%にし、地産地消の割合も50%にしていく予定だ。

超加工食品や食品廃棄の削減、さらに、すでに多くの学校食堂で達成されているベジタリアンメニューの拡充も行われる。使い捨てプラスチックを2024年までに無くす計画も進んでおり、保育所では2020年9月以降、プラスチック製食器を発注できなくなった。

DATA

Ville de Paris
HP:www.paris.fr
文:守随亨延


USA
近所の生物を写真に撮って
科学者たちを手助け

自分が撮影してアップロードした写真をアプリで見られるのも、子供たちにとって楽しみのひとつ。 ©Natural History Museum of Los Angeles County (NHM)

ロサンゼルス自然史博物館の「コミュニティ・サイエンス」は、近所で見かけた野生動物、昆虫などを撮影することで科学者を手助けするユニークなプログラム。

大都会のロサンゼルスは、実は野生動物の宝庫で、コヨーテ、リス、アライグマなど、多くの生物が生息している。子供たちは近所で見かけた生物の写真を撮影して、専用のアプリで送信。その写真をもとに、科学者たちが地域にいる生物を把握したり、さらに知識を深めて地域に貢献したりすることを目指す。「近所の生物を知ることは、子供たちの環境リテラシーを養うことにもつながります」(サリー・マーケス同館広報部長)。

DATA

Community Science|Natural History Museum
HP:nhm.org/community-science-nhm
文:大山真理


NETHERLANDS
身近な植物について学ぼう!
アプリを駆使する「自然教室」が話題

校庭で雑草を探す小学生たち。

身近な植物について、スマホのアプリを使って学ぶ課外授業がオランダで話題だ。道ばたや野原に茂る「雑草」について、詳しいことを知っている子供は多くないだろう。しかし雑草は、最も身近に存在するたくましい「生き物」だ。

こうした事実に子供たちに興味を持ってもらうため、有志の教師陣が生物探知アプリ「ObsIdentify」を開発した。身近にいる生物を携帯電話のカメラで撮影すると、北西ヨーロッパにいる約2万種の野生動植物を識別したり、観察結果を他の人と共有したりできる。教室の中だけでは体験できない自然に触れられるとあり、オランダの保護者たちからも大人気だ。

普段から見慣れた雑草の写真を撮影し、アプリでどんな植物なのかを学ぶ。

DATA

Botanisch stoepkrijten? Gebruik een app! (met filmpje) – Meer dan 100 uitgewerkte buitenlessen
HP:buitenlesdag.nl/buitenlessen/buitenles/stoepkrijten-app
文:稲葉かおる


FQ Kids VOL.08(2021年秋号)より転載

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