小児専門医が教える「正しいケガの応急処置」って? お出かけ前に覚えたい熱中症対策も

小児専門医が教える「正しいケガの応急処置」って? お出かけ前に覚えたい熱中症対策も
この夏は家族でアクティブに遊びたいと考えているパパ・ママは多いだろう。そこで注意したいのが、子どものケガや熱中症だ。対策についての調査結果と、いざという時のために覚えておきたい処置方法を紹介しよう。

楽しみな夏のお出かけ
いざという時の準備はできてる?

いよいよ夏本番。今年はたくさんの思い出を残したいと、いろいろな計画を練っているパパ・ママも多いはず。効率の良いルートや見どころといった下調べも大切だけれど、子どもとのお出かけにはいざという時の準備も重要だ。

子どもの外遊びにケガはつきもの。熱中症の対策にも心がけたい。病院に行く前や救急車が着くまでの間に、応急処置をする自信はあるだろうか? 知識、技術、持ち物それぞれに万全を期すために、対策についてのパパ・ママへの調査結果と、医師による処置のアドバイスを参考にしてほしい。

勘違いをしている親が多い!?
正しいケガ&熱中症の応急処置とは

ニチバン株式会社は5月に、3歳から小学校6年生までの子どものいる400名を対象に、夏の外遊びとケガに関する調査を行った。

今年子どもにチャレンジさせたいアウトドアのジャンルを質問すると、1位が「バーベキュー(BBQ)(59.5%)」、2位は「キャンプ(53.8%)」、3位が「海水浴(39.8%)」という結果となった。

そこで、子どもの外遊びで不安に思うことを質問すると、「熱中症・脱水症状(74.0%)」「ケガ(70.5%)」の回答が7割を超え、2大不安要因であることがわかった。

子どもがケガをした際に正しい処置ができそうかを尋ねると、「まったく思わない(4.3%)」「どちらかというとそう思わない(20.8%)」と、4人に1人は処置に自信がないことが明らかに。「どちらともいえない(37.8%)」を含むとなんとも心許ない回答結果で、「とてもそう思う」(処置に自信がある)と答えたのはわずか8.5%だった。

応急処置に必要なのは救急セットや応急処置アイテム。アウトドアやレジャーに出かける時にこれらを「常に持ち歩く」のは36.3%、「たまに持ち歩く」は38.3%と、備えをしているパパ・ママは少なくないようだ。

具体的には、「常に持ち歩く」「たまに持ち歩く」と回答した人の95.3%が救急絆創膏を携行しているという回答も得られた。次に多かったのが消毒液で、35.6%の人が持ち歩いているという。ケガをしたら消毒液で消毒して絆創膏を貼る、という処置が通例だが、実は現在では違う考え方がされている。

ニチバン株式会社では調査結果を受けて、6月に「専門医が教える“令和”の正しいケガの応急処置セミナー」を開催した。講師を務めたのは日本小児科学会小児科専門医の塙佳生医師だ。

ケガをした時に消毒液を使うと、傷口の細胞を破壊してしまう恐れがあり、皮膚再生の働きを阻害してしまうため、ケガの際の消毒液の使用は避けるべきだという。ではどうするのが正しいのか。

推奨された処置方法は、患部を湿ったまま密封し、キズぐちから出てくる体液でキズを治す方法「モイストヒーリング」だ。

「モイストヒーリング」のメリット

①治癒が早いこと。自然治癒力を高める体液がキズぐちに保たれるため、乾燥させるよりも早く皮膚を再生させる。
②傷跡が残りにくいこと。体液の分泌により、皮膚組織の形成がスムーズに行われる。
③感染しにくいこと。絆創膏などの交換回数が少ないので、傷口の閉鎖環境を確保。細菌の侵入を抑えることができる。
④痛みが少ないこと。患部の露出が少なくなり、乾燥による皮膚細胞の死滅を最小限にするため、痛みが少なくなる。

まずは、水道水で傷口をきれいに洗う→傷口をおさえて止血する→救急絆創膏で傷口を保護する、の手順を覚えておこう。

また、アウトドア活動では「やけど」も起こりがちだ。水ぶくれができている時はどうしたらいいだろうか。

水ぶくれは体液で膨れていて、絆創膏を使わないモイストヒーリング状態ともいえるそう。そのため、水を抜くことはせず、もし破れてしまった場合はモイストヒーリングができる絆創膏を貼るのが適切だという。ただしやけどの深さは判断が難しく、処置に迷う場合は躊躇せずに病院を受診してほしいとのことだ。

塙医師はこの夏の外遊びに持ち歩くと良い応急処置のためのアイテムとして、ケガをしたときには傷口を保護し、早くきれいに治す「モイストヒーリングができる絆創膏」に加え、傷口を洗い流して清潔にでき、暑さによる熱中症・脱水対策にもなる「水」を推奨していた。

熱中症については、厚生労働省ホームページに処置が掲載されている。まずエアコンが効いている室内や風通しの良い日陰など、涼しい場所へ避難させる。そして衣服をゆるめ、身体を冷やす(特に、首の周り、脇の下、足の付け根など)。さらに水分・塩分、スポーツドリンクなどを補給する。

自力で水が飲めない、意識がない場合は、ためらわず救急車を呼んでほしい。めまい、失神、筋肉痛、筋肉の硬直、多量の発汗、頭痛、吐き気、倦怠感、意識障害、けいれん、手足の運動障害、高体温、といった症状があったら熱中症を疑うべきだ。

※参考:厚生労働省ホームページ「熱中症予防のための情報・資料サイト」

夏を楽しめるのは
リスク管理あってこそ

ケガや熱中症は、起こってから慌てるのでは遅い。いざという時にどうしたら良いのか事前に備えをし、対応できるという自信を持って出かけたい。家族にはともにリスク管理をするという機能もあるのだ。そこがしっかりしていてこそ、この夏を思い切り楽しむことができるだろう。

〈調査概要〉
「夏の外遊びとケガに関する調査」
・調査期間:2023年5月9日~11日
・調査方法:インターネット
・調査会社:アスマーク
・調査対象者:3~12歳の子どもを持つ全国の20~60代男女(400名)

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文:平井達也

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