「子供が言うことを聞かない」時は職場をイメージ!? 面倒そうで最も効率的な伝え方

「子供が言うことを聞かない」時は職場をイメージ!? 面倒そうで最も効率的な伝え方
子供との会話やしつけは時に説明が難しく、一方的に押しつけてしまうことも。エッセイスト・タレントの小島慶子さんが、息子さんたちとのやり取りで心がけていたこと、さらに今後重要と考えるコミュニケーションとは?

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わが子への接し方、
“苦手な上司”と同じかも?

子供が納得していなくても「とにかく言う通りにして」、なぜと聞かれても「そう決まってるんだよ」……無意識のうちにやっていませんか。話してもわからないだろうし、わかるように説明するのはめんどくさい。時間に追われて時に戦場のような有様になる育児の現場で、すべてにゆっくり丁寧に対応することなんて無理! というのはもっともです。

でもこれ、もし自分の職場の上司や先輩に言われたらどうでしょう。一方的で、押しつけがましい人だなぁとやりづらいんじゃないでしょうか。後輩や部下にやったらどうでしょうか。人はついて来ないですよね。ことによってはハラスメントにもなりかねません。

なのになぜか、自分の子供にはやってしまう。まだ理解力がないから、理屈が通じないからと、大人の都合を押しつけているかもしれません。もちろん、あぁーーーもおぉーーーこれまでに仕事したどんな話のわからない人よりもめんどくさいよ! 勘弁してくれえぇぇと叫びたくなることもあるでしょう(私も何度も心で叫びました)。しんどいですよね。

でも希望はあります。車や恐竜やアニメのキャラクターならどんどん覚えられる子供たちの脳みそは、決して大人が思うほど未熟ではないのです。私はいつもそう思って話しかけていました。幼い子供の知性を信頼するって、大事なことだと思います。

面倒に思えるやり取りが
実はお互いにとって最も効率的

大人で話が通じない人というのは、大抵の場合は知性の問題ではありません。常に不安を抱えているとか、劣等感が強いとか、思い込みが激しいとか、その人の心の状態に深く関わる問題です。

ですから、相手にいかにして話を聞く余裕を持ってもらうかを意識してアプローチすることが早道です。つまり、相手の不安のありかを探ることですね。

子供の場合は、語彙が足りない、表現力が足りない、複雑な物事を理解するのに慣れていないなど、まだ充分に成長していないことに加えて、経験や知識の不足によるところが大きいでしょう。だから私は、幼い息子たちの質問に答えて物事を説明する時は、彼らが実際にイメージしやすいようなものに例えていました。

例えば免疫細胞は「体の中の兵隊さん」、卵子や精子の中に入っている性染色体は「お手紙」、受精卵のDNAはレゴ®ブロックに入っているのと同じような赤ちゃんの「設計図」など。なんでそんな話になるかというと、息子たちは一緒にお風呂に入っている時などに、人体に関する素朴な質問をたくさんするからです。

スルーしたり適当に答えたりせず、毎度大真面目に全力で答えていました。そうすれば、後でまとめて教えなくても少しずつ人体に関する知識が身につきます。知りたいと思った時に答えを聞くのが一番吸収がいいですから、学ぶ方も教える方もその方が効率的なのです。

何かをしてはいけない理由を説明する時も、ただ「危ないから」「ケガするから」ではなく、どのように危ないのかを子供が頭の中で映像にしてイメージしやすいように話していました。

例えば、コンセントに触ってはいけないのは、なぜか。ここに掃除機を繋ぐと動くよね。ライトを繋ぐと光るよね。この穴にはね、目には見えないけど、「電気」という、物を動かしたり光らせたり熱くしたりすることができるうんと強い力が入っているんだよ。

だから、もし手でこの穴に何かを突っ込んだり、濡れた指で触ったりすると、電気が体の中にビリビリと入ってきて、体をひどく傷つけてしまうんだよ。とっても痛くて、大けがをしたり、死んでしまうこともあるんだ。電気で機械は動くけど、人間の体は壊れちゃうんだ、とか。

こういう説明の仕方をしておけば、コンセントに触ってはいけないということを学ぶついでに、電気についての極めて基礎的な理解もすることができます。

めんどくさいようですが、どういう説明の仕方なら子供に理解できるかなぁと考えると、頭の中でわかりきっていることをわざわざ平易な言葉に直す必要があるので、実はとっても良い頭の体操になります。わかっている、知っていると思っていることって、たいていは言葉になっていないんですよね。それを言語化する作業は、育児以外にも非常に役立つ訓練なのです。

親子の会話が育む、
これから本当に必要な力とは

「話が通じない人」はどこにでもいます。多様性の豊かな社会になればなるほど、話は通じにくくなります。これまではわざわざ説明しなくてもよかったことを、相手ごとに丁寧に説明する必要がある。それが当たり前の社会になるのです。

今までは「エラい人」が一方的に話すことを周囲が忖度し、説明されなくても空気を読んで行動する能力が重視される社会でした。いちいち言葉にするのはむしろ野暮なこと、要領が悪いこととされていました。自分の意思や思考を言葉にする技術を身につける機会は、多くありませんでした。

でもこれからは、何度でも言葉にして、根気強く合意形成をする力こそが必要になります。育児は、実はその最も実践的な学びの場。子供は親の最も身近な先生なのです。

プロフィール

小島慶子(こじま・けいこ)
エッセイスト、タレント。東京大学大学院情報学環客員研究員。昭和女子大学現代ビジネス研究所特別研究員、NPO法人キッズドアアドバイザー。1995年TBS入社。アナウンサーとして多くのテレビ、ラジオ番組に出演。2010年に独立。現在は、メディア出演・講演・執筆など幅広く活動。夫と息子たちが暮らすオーストラリアと日本とを行き来する生活を送る。著書『曼荼羅家族』(光文社)、他多数。
Twitter:@account_kkojima
Instagram:keiko_kojima_
公式サイト:アップルクロス

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