2020.06.25
2022.04.02
2022.05.16
>>前編はコチラ
装飾に夢中になったことで、逆にシンプルな物の美しさを知れた経験(※前編より)を通じて、何より良かったことは、「付けまくった」ということです。これ以上はもう付けられない、という極限まで突き詰めてやりまくったこと。できる限り徹底的に行き着くところまで行ったから、その先に思いがけない「あ」という結果が待っていたのです。
親もああだこうだと一切言わず、やりたいだけ、付けたいだけ付けさせてくれて、好きなようにさせてくれました。
父親はデザイナーでしたから、おそらく思うところはあったでしょう。「そんなものベタベタつけて」と。でも、何も言わずにやらせてくれたから、自分で気がつけた。もしも「そんなもの付けない方が綺麗だよ」と親に言われて外していたら、このような感動は絶対に得られなかったでしょう。好きなように、夢中にやらせてくれたことに感謝しています。
子供が何かに没頭していたり夢中になっていたりするのであれば、好きなように思い切りやらせればいいと思います。もちろん人に迷惑をかけたり危険なことなどはフォローしなければいけませんが、そうじゃなければやりたいだけやらせてあげる。すると自分でいろいろな「あ」に気がつくはずです。
私は親に創作的な遊びをしなさいなんて言われたことは一度もなく、むしろ忙しかったこともあり、ほったらかし状態でした。結果としていろんな遊びを考えることに繋がったし、身のまわりにあった仕事道具で勝手に遊んで、ホンモノを知ることもできました。それが実は何よりもの教育の場でした。
大事なものを子供にいじられるのはヒヤヒヤすると思いますが(笑)。さりげなく応援してあげるといいでしょうね。「それに興味があるなら、これ知ってるか?」といった感じで。そうすると、ホンモノがわかる。
例えば、すごくいいギター1本を「触っちゃダメ」と言うのではなく、多少傷がつこうが触らせてあげて、大きな器で見守ってあげる、など。親が没頭しながら使っているものに子供も触れられる、口出しせずに好きにやらせてあげる。そういう親子の関わり方ができたら、子供はさまざまな感動や経験を積み重ねて学んでいけるはずです。
佐藤卓(さとう・たく)
グラフィックデザイナー。1955年東京生まれ。1981年東京藝術大学大学院修了後、株式会社電通を経て、1984年佐藤卓デザイン事務所(現:株式会社TSDO)設立。東京ミッドタウン内「21_21 DESIGN SIGHT」館長兼ディレクター。NHK Eテレ「にほんごであそぼ」のアートディレクター、「デザインあ」総合指導を担当。「ロッテ キシリトールガム」「明治おいしい牛乳」のパッケージデザイン、「PLEATS PLEASE ISSEY MIYAKE」のグラフィックデザイン、「金沢21世紀美術館」「国立科学博物館」のシンボルマークを手掛けるなど幅広く活動。
文:脇谷美佳子
編集部のオススメ記事
連載記事