2021.11.27
2020.03.27
2022.04.22
うちには子供が4人います。上から順に、京都で1人暮らしをしている大学2年生の長女、九州で寮暮らしをする高校3年生の長男、中学3年生の次男、小学1年生の次女です。長女はシンガポールで高校時代を過ごしましたが、英字新聞を読んでサマリーを提出するといった宿題がよく出されていましたね。面白いもので新聞が家にあると、子供たちや妻との話題も増え、家庭内の会話がとても豊かになるように感じます。
子供たちの個性はそれぞれ全く違いますから、親としては一人一人に合わせた接し方を心がけています。例えば小学校に上がったばかりの次女には、自己肯定感が持てるように、彼女のやったことを積極的に褒めるよう心がけています。
ただ、人生は私のものではなくその子のものですから、あまり介入しすぎてはいけないと思っています。もちろん、興味のある道に進めるような手助けはしていきたいですが、イマジネーション(想像力)やクリエーティビティー(独創性・創造性)を持って、自分なりに進むべき道を見つけてチャレンジして、人生をより豊かにしていってくれればいいなと思っています。
親の最大の役割は「新しいことに積極的にチャレンジしても大丈夫だよ」「失敗してもこわくないよ」という心理的安全性を確保することだと思っています。会社でも全く同じです。失敗して怒られると思うと、人は挑戦できなくなります。だから家でも子供を尊重しながら、各々が対等に自分の要望や感情を伝え合える環境づくりを心がけています。
大学生・高校生・中学生の3人の子に関しては、いかに興味や関心を広げられるかを気にかけています。例えば長男はサッカーをやっているのですが、サッカーの動画を観ているとサッカーの関連動画が次々にオススメされてきますよね。サッカーという特定のコンテンツは深く理解できるかもしれないですが、それ以外のことへの興味は広がりにくくなる懸念があります。
私たち親も、大人になって年を重ねれば重ねるほど、自分の興味の範囲がどんどん広がりにくくなっていきます。情報を積極的に得たり、何かしらの刺激を受けたりして、世界を意識的に広げていかないと、好奇心をキープすることはなかなかできません。
人生100年時代と言われています。私たちのキャリアや引退後の人生は長くなっていく一方です。一人の大人としてどうやって好奇心を保ち続けられるか。それが人生を豊かにするカギだと感じています。
特に子供との会話の中で、将来は何になりたいのか、どんなことに興味を持っているのかなどを話す際も、親自身がある程度の知識や情報を持っていないと子供のアイデアを広げようがありません。そういう意味では、新聞は広いテーマを扱うネタの宝庫だと感じています。
新聞の情報は、すぐに活用できるだけでなく中長期的にも非常に役立つと思っています。子供が何に興味を抱くかは、新聞や雑誌、本などの活字から得た情報が大きな影響を及ぼします。わが家では、子供と一緒に2週間に1回は図書館に行って、何冊か新しい本を借りる暮らしをしています。
私自身、どのように情報を得ているかというと、テレビから新聞、ネットまで、バランスを取りながら得るようにしています。それぞれのメリットとデメリットを意識しながら情報を取り入れています。購読しているのは経済紙ですが、会社では英字紙も読みます。国際ニュースの扱われ方を日本と世界の両方のアングルから得るようにしています。
新聞を読むという行為は、時間的・精神的な余裕がないとなかなかできないものです。余裕がない状態で新聞を読んでも、情報は入ってきません。新聞を読むから余裕が持てるのか、余裕のある人が新聞を読むのか、どちらなのでしょう。興味深いですね。
コロナ禍では私自身、家にいることも多く、子供たちもどうやって過ごすか苦労していました。そんな時、新聞の読書欄で紹介されていた本について、親子で語り合いました。新聞の書評欄はいつもチェックしています。
例えば、2019年に刊行された『FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』(日経BP)は、世界で300万部のベストセラーになった本です。新聞の書評欄をきっかけに子供たちと一緒に読み、感想を話し合いました。上の子たちは、私と同じ本を読んで共に語り合える年齢になっています。
この本は、米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏が「名作中の名作。世界を正しく見るための一冊だ」と述べ、バラク・オバマ元アメリカ大統領は「思い込みではなく、事実をもとに行動すれば、人類はもっと前に進める。そんな希望を抱かせてくれる本」と帯でうたっています。子供たちが世界を正しく見るために是非とも共有したい本でした。
私自身、新聞から得た情報を子供たちにそのまま話すのではなく、そのコンテクスト(文脈、物事に関係する状況や背景)までしっかり話すようにしています。子供たちは興味があればいろいろ質問してきてくれますが、なかなか聞いてくれないこともあります(笑)。
レゴの新商品はうちの子供たちに必ず持ち帰ります。レゴの良さは、正解がないことだと思っています。
作ったものに「正しい」「間違っている」といった答えはありません。「あなたのクリエーティビティーで作ったものが素晴らしい」というのがレゴのコンセプトです。作っている時に夢中になれる楽しさはもちろん、それが完成した時の達成感や満足感は何にも代えがたいものになります。
子供たちが「こんなのができたよ!」とうれしそうに見せてくれる時の誇らしげな顔や、できあがったものを自慢げに眺めている姿を見ていると、レゴが子供たちの成長に寄与していると感じます。
レゴはせっかく作ったものをばらばらに壊して、また新しいものを作ります。「Build, Unbuild, Rebuild」(構築して壊して創り変える)の繰り返しです。だから失敗を恐れずに次々挑戦できる遊びなのです。
実際、わが家で子供たちの遊びを見ていると、レゴは多様性の宝庫だと感じます。性別関係なく楽しめるジェンダーフリーの玩具ですし、西洋風のお城に忍者が潜んでいたり、レゴシティの街には警察官のすぐ横に美しいプリンセスが立っていたりします。こんなふうにレゴのブロックを自由な発想で「Build, Unbuild, Rebuild」することは、文章を書いたり、五・七・五の川柳を作ることにも非常に共通する点があると思います。
新聞を使った「コラージュ川柳®︎」とは、5文字、7文字の言葉を新聞から切り抜き、五・七・五に組み合わせて川柳を作る遊びです。日本新聞協会は夏休みに、親子で取り組む「コラージュ川柳®︎」コンテストを開催予定です。
※「コラージュ川柳®︎」は考案者・淀川テクニックにより商標登録されています。
レゴジャパン株式会社 代表取締役
長谷川 敦(はせがわ・あつし)
1975年愛知県生まれ。1998年、一橋大学商学部卒業。大手総合商社やコンサルティング会社を経て、P&Gジャパンへ入社。本社のある神戸で6年間過ごした後、東京に戻り、Phillips等大手FMCG(Fast Moving Consumer Goods/日用消費財)にてマーケティングやビジネスマネジメントの責任者を歴任。外資系ベンチャー企業の日本カントリーマネージャーを経験後、2014年、レゴジャパンのマーケティング担当ディレクターに就任。2018年よりレゴ シンガポールに赴任し、レゴ アジアパシフィック地区ゼネラルマネージャーを務めたのち、2020年3月に帰任し、レゴジャパン株式会社代表取締役に就任。
写真:松尾夏樹 文:脇谷美佳子
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