子供の感性を育むには「いかに本物に触れられるか」日常生活でできる経験とは[後編]

子供の感性を育むには「いかに本物に触れられるか」日常生活でできる経験とは[後編]
子供には「いいもの」「ホンモノ」に触れさせてあげることが大切と語る「にほんごであそぼ」のアートディレクターを務める佐藤卓さん。お金をかけずとも普段の生活からそんな場を与えられる、親の意識の転換方法とは?[後編]

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親が夢中になっているものに
子供は興味を持つ

子供の良いものやホンモノを見る目・感性を養うには、やはり親がホンモノを知らないといけません。「でも、うちの子はゲームにばかりに夢中で」という悩みもよく聞きます。モニターに向かって、ただ手を動かして体を動かさずに長時間遊ぶのは、確かにあまり健全ではないでしょうね。

だけど、私は子供のその時間を否定しなくてもいいと思う。ゲームはゲームで面白いものがいっぱいあります。すごく質が高いゲームというのはなんだろう? というのを、どうせなら教えてあげられたらいいですよね。

一方で、やっぱり手や体を動かして遊んだり、自分で遊びを創り出したりする経験は必要です。そういう場を親はどうやってつくるか? 親がそういう何かに夢中になっていなければ子供は興味を持ちません。子供は親が没頭しているものに興味を持つからです。

ゲームや動画ばかりにかじりつくお子さんが心配であれば、親がまずアナログの面白さに夢中である必要があります。スマホばかり見ながら、「うちの子はゲームにばかり夢中で、本当は色んなもので遊ばせたい」というのは、矛盾していますよね。もしも親が釣りに夢中になっていたら、子供もきっと釣りに興味を持ち、勝手に学んでいきますから。

また、子供に興味がありそうか無さそうか・好きか嫌いかに関わらず、親が「これは面白そうだ」と思ったら、一緒に体験してみるといいですね。いかに「いいもの」「わからないもの」に触れさせてあげられるかというのも大人の責任です。子供はわかるものに興味を持つのではなく、わからなくて面白いものに興味を持つからです。

例えば、Eテレの「デザインあ」や、21_21 DESIGN SIGHTで開催した「デザインあ展」は、いわゆる子供向けには作っていません。子供から大人まで、人の営みに必ず必要なデザインに触れ、デザインマインドを育む機会として提案してきたものです。

「どうせ子供にはわからない」とか「子供にわからないものを見せても意味がない」と思う人もたくさんいますが、良し悪しはわからなくてもいい。大人だってわからないことだらけです。

見せてみたら意外と興味を持ち始めるかもしれませんし、極端に言えば、その時に興味を持たなくても全然いい。大人になって、ふと反芻することではじめて得られるものがあります。わからないからという理由で、いいもの・ホンモノを子供から引き離してはいけません。

PROFILE

佐藤卓(さとう・たく)

グラフィックデザイナー。1955年東京生まれ。1981年東京藝術大学大学院修了後、株式会社電通を経て、1984年佐藤卓デザイン事務所(現:株式会社TSDO)設立。東京ミッドタウン内「21_21 DESIGN SIGHT」館長兼ディレクター。NHK Eテレ「にほんごであそぼ」のアートディレクター、「デザインあ」総合指導を担当。「ロッテ キシリトールガム」「明治おいしい牛乳」のパッケージデザイン、「PLEATS PLEASE ISSEY MIYAKE」のグラフィックデザイン、「金沢21世紀美術館」「国立科学博物館」のシンボルマークを手掛けるなど幅広く活動。

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文:脇谷美佳子

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