感情や意志への働きかけが「非認知能力」を伸ばす!? シュタイナー教育に学ぶ実践法

感情や意志への働きかけが「非認知能力」を伸ばす!? シュタイナー教育に学ぶ実践法
日本でも注目が高まっている「非認知能力」。これからの社会を生き抜いていく力を育むために、世界2大教育法の1つとして知られる「シュタイナー教育」で実践していることとは?

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「シュタイナー教育」の特徴
思想家・哲学者であるオーストリア出身のルドルフ・シュタイナー(1861~1925年)の人間観に基づいた教育。子供は0~7歳(身体を育てる時期)、7~14歳(心を育てる時期)、14~21歳(思考を育てる時期)の7年周期で成長する。

知的な経路を通じた学習よりも
大切なもの

提唱者のルドルフ・シュタイナーは、独自の人間洞察から、知的な経路を通じた学習は教育のほんの一部に過ぎないと考え、感情や意志に働きかける総合芸術としての教育を構想した。まさに非認知能力を重視した教育そのものだ。

「思春期以前の子供の場合、物語や芸術的な活動が生み出す豊かな感情を通じた学びの経路、編み物などのように手を用いる意志的な学びの経路の方が、より重要であるとシュタイナー教育では考えます。もちろん知的な学習要素も扱いますが、それらは物語に包み込んで提供したり、描いたり、唱えたり、歌ったりすることで、主体的で血の通った体験となり、“生きた概念”になります」。

そう語るのは、日本シュタイナー学校協会の佐藤雅史さん。シュタイナー教育では、幼児期、学童期で生きる力を担うための土台を作り、思春期以降で「柔軟に思考する力」を発展させていく。

「幼児期ではこの時期特有の模倣欲求を満たせるように、生活環境を整えます。たとえば料理やお裁縫のように、行為と結果が目に見えるような活動を真似て遊ぶことが、内面と身体の間に健康な結びつきを作ります。

また、学童期は、信頼できる大人がいる環境に身を置き、たくさんの物語に耳を傾け、歌い、描き、様々な情感の営みを紡ぐことで、その後の人生の基調となる感情を身につけます」。

例えば、世界中のシュタイナー学校では男女関係なく編み物をする姿が見られる。これは実用的な技能習得以上に、リズミカルに手を動かす作業を通して意志力を強めること、数学的法則性を身体感覚で理解することの重要性が意図されているとか。総合的な「生きる力」を培う教育なのだ。

シュタイナー教育
実践例

オイリュトミー
言葉や音楽の構成要素・法則を身体で表現することで、感受性をより深い領域に降ろしていく。アンサンブルの活動ではお互いの動きを調和させることで社会感覚も育まれる。

2ヶ国の外国語
1年生から2つの外国語授業を導入。異なる言語が持つ固有の質に、異なる文化が結びついているということを、様々な体験を通して内面に根付かせていくことが意図されている。写真は中国語のノート。

手の仕事
リズミカルに手を動かす作業のなかで意志力を強めること、数学的法則性などを身体感覚で理解していくことが意図されている。男女は関係ない。

水彩画
水に浸した紙の上に赤・黄・青の三原色の透明水彩絵の具で描いていく独自の活動。純粋な色の体験とともに、色と色の出会いが新たな色を生み出していく生き生きとしたプロセスを体験。

おうちで実践Point!

リズムある生活を心がけ、子供との対話を楽しむ。新しいものに出会ったときは、大人が説明することを控え、出会いをあるがままに楽しむこと。四季折々の祭事を毎年大切に迎えることも意義深い経験に。

教えてくれた人

佐藤雅史さん
日本シュタイナー学校協会事務局、横浜シュタイナー学園事務局長。学園では、コンピュータ理解のために、電磁スイッチで計算機を組み立てる授業を9年生(中学3年生)と共に行っている。


文:曽田夕紀子

FQ Kids VOL.06(2021年春号)より転載

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