2023.05.02
2021.03.15
2022.01.27
日本の公教育における性教育は、主に小学校の高学年からスタート。本格的な内容については中学校で学ぶことになる。
それに対しヨーロッパでは、性教育は「0歳から」がスタンダードになっているというから驚きだ。例えばお風呂で体を洗ってあげたり、おむつを替えたりしながら、「体はあなたの大切な物だから、他の人は勝手に触ったらダメだし、触られるのがイヤな時は、イヤと伝えていいんだよ」と、暮らしの中で言語化して伝えることから性教育はスタートする。
さらに小学校では「包括的性教育」の考えに基づき、「対等な人間関係」や「ジェンダーの不平等」「セクシュアリティ」について学ぶ。アクシデントに遭った場合、どこに相談すればいいのか、どんな法律で守られるのか調べ学習をすることもあるのだとか。
現在、ジェンダーを考える新しいキーワードとして、「SOGIE(ソジー)」という用語がある。これは「性的指向」「性自認」「ジェンダー表現」の頭文字を組み合わせており、個人の性のあり方は、この3つの要素を組み合わせて形づくられるという考え方を示している。人は皆多様であり、互いの個性を認めつつ、傷つけられない「権利」について学ぶことが、性教育の大切な一歩だと言えるだろう。
「性的指向(Sexual Orientation)」「性自認(Gender Identity)」「ジェンダー表現(Gender Expression)」の3つのワードの頭文字をとった用語。すべての人に関わる概念であり、すべての人の性のあり方は、この3つの要素を組み合わせており、「男性」「女性」の2通りに限定されず、多様であるという考えを示す。
2006年以降、国際連合での正式文書では LGBTではなくSOGIEが用いられており、2016年には文部科学省での文書の中でもSOGIEについて記されている。ソジー、ソギー、ソジなど読み方も様々のようだ。
性的マイノリティを指す言葉として「LGBT」が知られているが、本来性のあり方は4種に分類できるほど単純ではない。
「Q(クエスチョニング・自分の性別・性的指向を決められない人)」「I(インターセックス・DSD)」「A(アセクシュアル・無性愛者)」や、「この他にも多様な人が存在する」を意味する「+(プラス)」を最後に加えて使用することもあるほど、多様である。
あくまでも自分と人が関わる時に、自分を説明するための「共通言語」のようなものであり、性的マイノリティをLGBTQで囲うこと自体が偏った見方になるという意見もあり、すべての人が当事者である「SOGIE」という考え方への転換、総称が広がってきている。
性教育において「権利」という言葉は、これまでに日本で教育を受けた人にとっては意外なキーワードかもしれない。世界の性教育のスタンダードとなっている「包括的性教育」において「性と生殖に関する健康と権利」は重要視されており、「すべての人には、性や生殖に関して尊重される権利がある」と考えられている。
幼児に性教育を行う時も、まずは「すべての子供にイヤなことをされない権利」があることを理解させることが大切。「あなたには、あなたの気持ちを尊重される権利がある」「大切なプライベートスペースを勝手に触られる(権利が侵害される)のはイヤなこと」「イヤなことをされたらイヤ! と言っていいんだよ」と教えるところから、自分を大切にする気持ちを育てよう。
スウェーデンには、子供が何らかの人権侵害に直面した場合に相談できる、公的機関「Bris(ブリス)」がある。親や信頼できる大人への相談はもちろん、「何かあったらBrisに相談して」とくり返し教えることで、プライベートゾーンを侵害された時などの声の上げ方を子供たちは学ぶことができる。
小学校で「包括的性教育」について学ぶ「スプリング フィーバーウィーク」という期間があり、4歳から11歳の子供に特別プログラムが用意される。年齢によって内容は異なるが、友達とのより良い関係の築き方や体のこと、自分の気持ちの伝え方、11歳以降はセックスについても学ぶ。幼少期からの性教育で、より安全かつ幸せと思える選択を下せるように支えている。
幼児教育に性教育を組み込み、幼少期から「心」と「体」を大切にする教育をスタート。「イヤな気持ち」「悲しい気持ち」への自覚を促しつつ、「オモチャが取られてイヤだと思った時はどうすればいい?」「急に体を触られた時は?」と日々のコミュニケーションについて学び、性的同意の重要性につなげる。
文:藤城明子
FQ Kids VOL.07(2021年夏号)より転載
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