2022.01.13
2020.03.13
2022.01.12
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日本では専門性が高く、なんとなく取っつきにくい印象が強い工学(=エンジニアリング)。機械エンジニアとして大手企業に在籍、最前線で働きながらその豊富な知見を活かし、教育活動を行っている吉原淳之介さんは、「エンジニアリングは身近にいっぱいある。そして、おもしろいんだということをメッセージとして子供たちに伝えていきたい」と話す。
「私自身、会社に入るまで工学の知識が社会にどう活かされるのかを知らなかった。でも、例えば今座っている椅子や机が壊れることなく使えるのだって、誰かが計算して設計しているからですよね。機械設計エンジニアが見ている世の中と、そういう知識がない人が見ている世の中って、実は見え方が全然違う。子供たちにそういう観点を小さい頃から植え付けたいと思っているんです」。
吉原さんが率いる教育団体「クリエイターキャラバン」のワークショップで完成した作品たち。建築・機械工学・芸術などの“たのしさ”を伝えるワークショップを行っている。
「機械工学的なセンスは、幼児や小学生からでも十分育てられる」と話す吉原さん。その際、教育現場で重視しているのは、「体験する」ということだそうだ。
例えば、小学校を対象に開催する「レゴブロックで橋を造ろう」というワークショップ。ここでは、実際に子供たちがブロックで橋を造り、橋の上に重い物を置いてみたり、ブロックを組み替えて強度を高めてみたり、という実験を通して、橋の構造について学ぶ。最後は、世の中の橋の写真を見せながら、工学が社会に結び付いているという“気づき”へと繋げていくという。
「一度体験すると子供たちが外を歩いた時に橋の見え方が変わるはずです。体験したことによって見方や感覚が変わるようなワークショップが理想だと思っています」。
レゴ®ブロックで組み立てたロボットを頭脳部品インテリジェントブロックにプログラムすることによって、自由に制御することができる「教育版レゴ®マインドストーム®EV3」を使った授業も。
知識として機械工学を教わるのは難しいが、体験を通せば、楽しく学ぶことができる。その結果、本質的なエンジニアリングのセンスを磨くことができ、子供たちの可能性が広がるというわけだ。
「STEAM教育を受けることで個人差はあるにしろ、子供たちの能力がベースアップされ、才能のある子が伸びていく、ということが重要です。もしかして普通に教育をしていたら、数学も物理も嫌いになっていたかもしれない子が、小さい頃からセンスを磨くことで才能が開花する可能性が高まる。
また、これからの時代は複数の知識を組み合わせて仕事や価値を生み出すケースも増えてくるはずです。文系の人でもエンジニアの知識を持つことが、将来的な価値を生むのではないでしょうか」。
経済産業省「未来の教室」プロジェクトでは、生徒たちにエンジニアリングの授業を行っている。
工学を学ぶ手っ取り早い体験のひとつが「物を壊すこと」。「小さい頃に物を壊すことって重要。効率的に壊すにはどうしたらいいか、どんな構造になっているのか。構造力学を考えるきっかけになります」。
なお、高校生を対象にしたSTEAM教育の現場では、製品を分解して、1個1個の部品の存在理由と、数学や物理の学問を結びつけて教えているそうだ。
吉原淳之介さん
steAm, Inc. Engineering & Robotics Architect。大学では機械工学を専攻しながら教員免許を取得。大手機械メーカーでエンジニアとして働きながら、教育団体「クリエイターキャラバン」を設立。現在はエンジニアの知識を活かした独自のワークショップや講座を行っている。steAm,Inc.にて、経済産業省「未来の教室」実証事業にも多数携わる。
研究者や芸術家、各界のスペシャリスト、教育者などが結集するSTEAM教育の専門チーム企業。1人ひとりの隠れた創造性を解き放ち、「様々な境界を超えた心躍る共創(協奏)」や「自然やAIとの豊かな共存」に満ちた、プレイフルな参加型社会を目指す。ワークショップや講演を多数開催。
HP:steam21.com
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文:曽田夕紀子
イラスト:岡本倫幸
FQ Kids VOL.07(2021年夏号)より転載
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