2023.09.12
2020.12.28
2020.04.17
はじめまして。小島慶子です。高3と中3の息子がいます。6年前に家族の拠点をオーストラリアに移しました。いわゆる教育移住です。
というと皆さん「悠々自適の海外ライフ!」と誤解するのですが、余裕とは程遠い、海を超えた出稼ぎ自転車操業。二拠点生活とは、すべてを二つ持つことではありません。限られた資源を二拠点に振り分けるということです。
今は一年の大半は東京の賃貸ワンルームで一人暮らしをして、年に何回か短期間オーストラリアに帰る生活。家族と長い時間一緒に過ごせるのは年末年始だけです。
当然交通費は自腹なので、早割でエコノミークラスのチケットを買い、貯めたマイレージでプレミアムエコノミーにアップグレードできればラッキー。
片道8000キロ、14時間かけて、西オーストラリア州・パース郊外の築40年の借家で暮らす夫と息子たちに会いに行くのです。
何かを選べば、何かを手放すことになります。私の場合は、移住と引き換えに「我が子が日本で安泰に生きていける(であろうと親が想像する)学校歴及び会社歴を手に入れる機会」を諦めました。
具体的に言えば、東京の有名私立一貫校に通わせ、名の知れた大学に入れて、一部上場企業に就職させるような選択肢を手放したということです。都市部の教育熱心な親たちが描いているようなプランと言えばいいでしょうか。
FQKids読者の中にも、そんな計画を立てている人は少なくないでしょう。私も子供を産んだ当初はそうでした。自分がそのような環境で育ったので、他に「安泰な道」が想像できなかったのです。
でも41歳の時、発想を切り替えて、教育移住を決意。きっかけは予期せぬ夫の退職ですが、震災から3年経っても変わろうとしない日本社会と、それを支えている労働文化と教育に疑問を抱いたのも一因です。
小学校5年生と2年生で日本を離れた息子たちは、日本の有名校や会社とは無縁の道を行くことになります。将来、世界のどこで暮らすのかもわかりません。“いい学校からいい会社へ”が教育の正解なら、私は親としてその正解を捨てたことになります。
当時はただでさえ夫が仕事を辞めて、世帯収入が大幅に減っていました。家計の規模を縮小しなければならないピンチです。
ただ、お金という資源は減ったけれど、夫は勤めに出なくていいので時間という資源は増えたし、移動の自由という新たな価値も手に入りました。ではそれを生かして、何か面白い……家族にとってプラスになることができないかと考えた末に行き着いたのがオーストラリア移住だったというわけです。
夫婦ともにバイリンガルではないのに移住なんて、よく思いついたものだと今は思います(夫は子育てしながら現地で英語の勉強を続けて、今ではすっかり上達しました。無謀な挑戦を讃えたいです)。
小島慶子(こじま・けいこ)
エッセイスト、タレント。東京大学大学院情報学環客員研究員。昭和女子大学現代ビジネス研究所特別研究員、NPO法人キッズドアアドバイザー。1972年オーストラリア生まれ。95年学習院大学卒業後、TBS入社。アナウンサーとしてテレビ、ラジオに出演。99年、第36回ギャラクシーDJパーソナリティ賞受賞。2010年に独立後は各メディア出演、講演、執筆など幅広く活動。14年、オーストラリア、パースに教育移住。自身は日本で働きながら、夫と息子たちが暮らすオーストラリアと往き来する生活。著書『仕事と子育てが大変すぎてリアルに泣いているママたちへ! (日経DUALの本)』、他多数。
オフィシャルサイト
Twitter:@account_kkojima
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