助け合いから育まれる「当事者意識」今こそ親子で話したいボランティア・寄付のこと

助け合いから育まれる「当事者意識」今こそ親子で話したいボランティア・寄付のこと
寄付やボランティアについて親子で話すこと・参加することで、子供は生きていく上で大切なことを学び得るという。コロナ禍や環境問題など、より身近に助け合いの必要を感じる今、小島慶子さんが語るその重要性とは?

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伝えたい“寄付の力”

お子さんと、寄付について話すことはありますか? 一緒に買い物に行って、レジの脇の募金箱に小銭を入れたことがあるかもしれませんね。コロナ禍で二極化が進み、助け合いがますます大切になっています。

電子決済やクラウドファンディングなどで、日本でも寄付は以前よりも身近になりました。気軽に「ここを支援しているよ」「こんなクラファンあるよ」と輪を広げていけるといいですね。

私が人生で最初にした寄付は、小学校の赤い羽根共同募金。先生に渡された茶封筒をみんなで順番に回して、親から預かってきた小銭を入れ、赤い羽根をもらうのが楽しみでした。毎年恒例でしたが、どこか他人事というか、寄付は大人に言われたらするものという感覚でした。

大人になってから、世の中には様々な社会課題があり、その解決のためにNPOなどで汗を流して取り組む人たちがたくさんいるのを知りました。NPOは今や、支援を必要としている人々と行政や企業とをつなぐコーディネーターのような、重要な役割を果たしています。

活動を寄付で支えれば、自分の力ではできないような支援の後押しをすることができるのです。10円でも、100万円でも、寄付は確実に積み上がって、必要な援助のために使われます。

かつては茶封筒に小銭を入れながら「こんな少しずつで役に立つのかな」と子供心に疑問に思っていましたが、実際にNPOで活動している知人たちの話を聞き、活動報告を見ると、その小さな積み上げがどれほど大きな力になっているかを実感することができました。

それからは、息子たちにも「今日はこんな寄付をしたよ」「こういう取り組みがあるんだよ」という話を積極的にするようにしています。

寄付やボランティアから
子供が学び、得られること

親と寄付について話すと、子供はいろいろなことを学べます。世の中には様々な課題があるということ。そして、その解決のために市民にもできることがあるということ。その小さなアクションは必ず誰かの役に立つということ。

寄付は、可哀想な人に恵んであげる「施し」ではなく、困っている人を助け、自分がこうであってほしいと望む社会を実現するための「支援」です。人は誰かを支えることによって、自分の人生に意味があると感じることができます。

お金を寄付したりボランティアで働いたりするのは自己犠牲ではなく、お金ではない価値を受け取っているのですね。一方的な施しではなく、助け合いなのです。

寄付やボランティア活動を通じて、人はコミュニティに対する信頼や愛着を育てることができます。近所のゴミ拾いをするだけでも、地元の街に関心を持つようになりますよね。そうした体験は、ここが自分の居場所なんだという意識、当事者意識を育みます

社会に主体的に関わり、行動することは誰かの役に立つだけでなく、自分の人生を人任せにしないためにも大事なことです。与えられた環境を受け身で生きていくと、どうしても嫉妬や不平不満が多くなり、他人の足を引っ張ることに関心が向きがちです。自分の人生は力のある人たちにコントロールされていて、自力では状況を変えられないと思ってしまうのです。

でも、できる範囲で環境に働きかけ、小さなことでも社会と関わりを持つと、自分の人生をカスタマイズする喜びを知ることができます。こうだったらいいなと思う世の中作りに参画する喜びを知り、自らが人生の主人であるという感覚が持てます。

親や学校や会社を通じて社会とつながるのではなく、個人として社会と繋がる。幼い頃から、それこそお小遣いの中から10円でもいいので、自分が支援したいと思う取り組みに寄付をするのは、そういう貴重な経験でもあるのです。

子供に意思表示の機会を

どこに寄付をするか、親子で話し合うのも楽しいでしょう。NPOについて調べるうちに、それまで知らなかった社会課題に気づくこともあります。課題を項目分けして、ポートフォリオを作るのもいいですね。

「いま困っている人を助ける」なら、コロナ禍で困窮する家庭の子供たちの学習支援や、失業して行き場をなくした人の支援、「世界を変える取り組みを応援する」なら、気候危機に関する取り組みや国際的な人道支援、「声をあげている人を支援する」なら同性婚を実現するための活動や、法案反対などの署名活動などなど。

親子で違うNPOに寄付してもいいし、まだ子供がお小遣いをもらっていないなら、親が寄付する先を一緒に考えてもいいかもしれません。寄付は、意思表示です。選挙権のない子供でも、「自分はこれが大事だと思う」と行動で示すことができるのです。寄付をしたNPOの活動報告を一緒に見て「こういうことに使われたんだね」「喜んでいる人がいるね」と確認すると、実感が持てるでしょう。

私も昨年仲間達と、コロナ禍で困っている親子の支援をしている21団体を集めた寄付サイトを作りました。「ひとりじゃないよプロジェクト(hitorijanai.org)」です。サイトからNPOを選んで直接寄付できるので、ぜひお子さんと見てみてください。

プロフィール

小島慶子(こじま・けいこ)
エッセイスト、タレント。東京大学大学院情報学環客員研究員。昭和女子大学現代ビジネス研究所特別研究員、NPO法人キッズドアアドバイザー。1995年TBS入社。アナウンサーとして多くのテレビ、ラジオ番組に出演。2010年に独立。現在は、メディア出演・講演・執筆など幅広く活動。夫と息子たちが暮らすオーストラリアと日本とを行き来する生活を送る。著書『曼荼羅家族』(光文社)、他多数。

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