2022.09.16
2022.08.10
2020.10.23
私たち大人は、子供はみんなおもちゃが大好き、と考えがちだ。実際、多くの子供はおもちゃで夢中になって遊ぶ。
「でも、乳幼児にはおもちゃがなきゃダメ、というわけではないんです。子供にとっては“生きる=遊び”ですから。食事やお風呂など、生活のすべてに遊びが紐づいています。つまりおもちゃが無くても遊べるんですよね。興味を持てば、石ころや布切れでも、おもちゃのようにして遊んでしまいますから」。
“赤ちゃんは正義の味方をどのようにとらえているか”や、“T∨ゲームと脳活動”など、ユニークな視点から、乳幼児と子供の認知機能の発達を研究している開先生の言葉だ。
「逆にいうと、子供が関心を持ったおもちゃなら、時間を忘れて遊びに没入できるということです」。
では、先生がお薦めするおもちゃとは、どんなものなのか?
「一様に定義するのは難しいですね。子供の個性によって、気に入るおもちゃも十人十色です。ですから、おもちゃ屋さんやお友達の家、地域の遊び場などで、どんなおもちゃで遊んでいるのかを観察して、子供の好む傾向を知るのは効果的かもしれません」。
もちろん、買ってみたはいいが、思ったように遊んでくれない場合もある。
「子供は親の思い通りにはならないものです。例えば、文字を覚えてほしくて購入したおもちゃでも、子供の方は、そのおもちゃの、文字以外の部分に関心を持って遊んでいたりします。でもその遊んだ経験自体が、子供の新たな興味を育てるのかもしれませんね」。
それよりも、せっかく楽しそうなおもちゃを買うのなら、親子で遊んでほしいと開先生は話す。
「おもちゃで何か特別な力を伸ばすことを求め過ぎると、成果が出なかった時に、おもちゃにも子供にも失望してしまうかもしれない。おもちゃって楽しむためのものなんですから、まずは一緒に遊んでもらいたいですね。お父さんやお母さんとのアイコンタクトは、子供の模倣学習を促進するということが分かっています。おもちゃを通してのコミュニケーションで、子供の新たな才能や興味を発見でき、おうち時間を有意義なものにしてくれるのではないでしょうか?」
Q. どのような素材でできたものがいいでしょうか?
A. 特定の素材でなければだめ、というものはありません。
木・布・いろんな素材でできたおもちゃがありますが、実は、「この素材のおもちゃが一番優れている」という科学的なデータは、今のところないんです。いつか調査してみたいとは思っていますが(笑)。
木のおもちゃにもプラスチックのおもちゃにも、それぞれの良さがあります。子供も、木のおもちゃの重さや手触りを好む子もいれば、プラスチックおもちゃの軽さやカラフルさを気に入る子もいるでしょう。安全性が確保されてさえいれば、素材にこだわりすぎる必要はないと思います。
Q. 子供の年齢よりも、対象が少し上のおもちゃを与えた方が、子供の能力は伸ばせるのでしょうか?
A. 対象年齢はあくまで目安です。
おもちゃの対象年齢は、各メーカーさんごとに決めているもので、あくまでも目安です。設定されたおもちゃの対象年齢より年上でも年下でも、子供がその時に喜んで遊んでいれば、その子にとってはよいおもちゃということです。
もちろんこちらも、安全に遊べているかが一番大事なポイントです。特に乳幼児の場合は、口に入れたり投げたりと、予測のつかない行動をとるので、安全性だけはしっかりとクリアできているか気をつけましょう。
Q. せっかく買ったおもちゃなのに、まったく遊んでくれません。
A. 子供の成長・変化は予測不能。明日になれば遊ぶかもしれません。
子供の成長や変化は目まぐるしく、小さい時は目もくれなかったおもちゃなのに、大きくなったら毎日それで遊ぶようになった、また、その逆もよくあるケースです。
ですから「せっかくの高いおもちゃがムダになった」とガッカリせず(笑)、様子を見ましょう。もしかすると、お父さんとお母さんが一緒に遊ぶことで、使うようになるかもしれません。
開 一夫先生
東京大学大学院総合文化研究科広域システム科学系教授。日本赤ちゃん学会常任理事。日本こども学会常任理事。赤ちゃん学、発達認知神経科学などを研究。著書に『赤ちゃんの不思議』(岩波書店)など。また、大人気赤ちゃん絵本『もいもい』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)やテレビ東京の乳幼児向け番組「シナぷしゅ」を監修。
FQ Kids VOL.03(2020年夏号)より転載
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