フェンシングメダリスト太田雄貴さん「子どもを成長させるのは“好き”の力と自分軸」

フェンシングメダリスト太田雄貴さん「子どもを成長させるのは“好き”の力と自分軸」
フェンシング日本代表として、北京・ロンドン五輪で2大会連続の銀メダル(個人と団体)に輝いた太田雄貴さん。2児の父となったオリンピアンが思う、教育で大切なこと、親に必要な心構え、夫婦間のルールとは?

<目次>
1.子育ての新拠点『こどもでぱーと中野』に「ワクワクしかない!」
2.家事も育児も夫婦2人でそれぞれが得意なことを分担
3.大切なのは“好き”との出会いと自分軸の成功体験
4.うまくできなかったことも認めてあげられる親でありたい

 

子育ての新拠点誕生に
「ワクワクしかない!」

「こどもの教育」と「親の負担軽減」を支援する新しい子育ての拠点「こどもでぱーと中野」の開業セレモニーに、スペシャルゲストとして太田雄貴さんが登壇した。オリンピアンとして、そして子育て真っ最中の立場から、この施設が親と子どもに与える作用などについて聞いてみた。

「1棟のビルにスポーツスクールや学習塾、英会話教室、スタジオなどが入っているから、子どもはいろいろな習い事を掛け持ちでできるし、親の送迎の負担が1回で済むのは魅力的です。

それに、クリニックもあるのはありがたい。習い事にフォーカスしがちですが、何かあった時にも対応できるのは重要なポイントです。

僕もこの施設で、不定期ですが体験プログラム特別講師として子どもたちにフェンシングを教えるので、未来のオリンピアンが誕生するかもしれない。もうワクワクしかないですよ!」

家事も育児も夫婦2人で
それぞれが得意なことを分担

トークセッションする太田雄貴さん(左)と笹川友里さん(右)

現在、国際オリンピック委員会(IOC)委員や国際フェンシング連盟理事などの要職を務め、日々、国内外を忙しく飛び回っている太田さんだが、妻の笹川友里さんもフリーアナウンサー、ファッションモデルとして多忙だ。子育てのオペレーションは、2人でどのように分担しているのだろう。

「世の中の多くのパパ・ママとまったく一緒です。“今日、送迎行ける?”“無理……。”“さて、どうする?”って。周囲からのサポートもいただきつつ、夫婦で相談しながらなんとかやっている感じです。スケジュールのやりくりはパズルみたいですね」。

夫婦の間で大切にしていることを聞いてみると、「結婚する際、どちらかが犠牲になるようなことはやめようと2人で決めました。妻にも自分の人生を歩んでほしいと思っているから。

僕の両親は共働きだったので、結婚したら男性は外で稼いで、女性は家庭に入るという概念はまったくなかった。父も母も、お互いがそれぞれ得意なこと・できることをやるというスタンスだったので、そうした両親の影響は大きいと思います」。

大切なのは“好き”との出会いと
自分軸の成功体験

子どもたちにフェンシング体験プログラムを行う太田さん

子どもに何を習わせたらいいのか迷うパパ・ママは多いが、太田さんの判断基準は明確だ。

「子どもの習い事選びって、親のコンプレックスを押し付けてしまいがちですよね。大切なのは、子どもが“好き”を見つけられるように早い時期からいろいろな機会を提供すること。自分から“やりたい”と言ったことはタイミングを逃さずやらせてあげることだと思います。

最初は“いいね!”“上手いね!”と親に褒められることがモチベーションにつながります。それを続けていくうち、自分の中で“昨日できなかったことが今日できるようになった!”“こんなことが続けられた!”というように、他人の評価からではなく、自分軸で成功体験を得られるようになります。これが重要です」。

では、自分軸を育てていくには、どうすればいいのだろう。

「現役時代、国際大会に130回ほど出場しましたが、優勝できたのは3回だけ。単純に大会の数だけでいえば127回負けています。勝ち負けや他人からの評価を軸にしていたら、僕は負けた数だけ自己否定しなければいけなかった。

でも、“こんな技ができるようになった”といった自分軸にフォーカスしていくことで、それがモチベーションになって“もっと強くなりたい!”と貪欲に成長していくことができました。

子どもの成長にとっても、自分が“頑張りたい”“達成したい”と思って努力できるものに出会えるかどうかはとても大切なことで、そのためには親が出会わせてあげることが必要です。

習い事やスポーツがなかなか続かない……という子には、勝ち負け以外の、頑張った分の結果が目に見えやすいもの・自分の成長を実感しやすいものがおすすめですよ」。

うまくできなかったことも
認めてあげられる親でありたい

太田さんご自身も、子どもの頃はさまざまなスポーツをやったという。

「フェンシングを始めたのは小学3年生の時。父は、フェンシング選手になりたかった自分の夢を僕に託したんです。すぐにやめるつもりだったけれど、父のアメとムチの指導に乗せられてフェンシングにのめり込んでいきました。

その前は、スキーやスイミング、陸上などいろいろなスポーツをしましたが、すべてはフェンシングに活かされていて、ムダなことは1つもなかった。そういった意味でも、子どもの頃は何でもやらせてあげることが大切です。やってみて、やっぱり違うなと思えばやめてもいいんです。たとえ数ヶ月でも、やったことはその後の人生に必ず活きてくるので」。

やはり、子どもにとって親の影響は大きいという太田さん。目指す父親像について聞いてみた。

「親が“人生のよい師匠”にならなくてもいいと思っているんです。子どもがうまくできなかったこともちゃんと認めてあげられる親でありたい。親子関係は友だち関係のような感覚でいいんじゃないかと思います。だから僕は5歳の娘を子ども扱いしないし、本気でケンカし、本気で遊んじゃいます」。

PROFILE

太田雄貴(おおた ゆうき)
1985年11月26日、滋賀県大津市出身。2004年アテネオリンピック、2008年北京オリンピック、2012年ロンドンオリンピックに出場し、北京ではフルーレ個人で日本人選手として初の銀メダル、ロンドンではフルーレ団体で銀メダルを獲得した。現在、国際オリンピック委員会(IOC)委員や国際フェンシング連盟理事。代表を務めるWIN3社で、子どもの「好き」が見つかる体験プログラム「TRIDA(トライダ)」などを展開。「こどもでぱーと」でも不定期開催していく。2児の父。

CHECK!

こどもでぱーと中野

ヒューリック株式会社が子ども教育事業の一環として、株式会社リソー教育とコナミスポーツ株式会社が連携して展開する、新たな子育て・教育施設「こどもでぱーと」ブランドの第1号施設として、2025年4月1日、中野(東京都中野区、JR中野駅徒歩2分)にオープン。託児所、習い事教室(学習塾・英会話・スポーツスクールなど)、体験イベントスタジオ、親子カフェ、ピラティススタジオ、こどもクリニックなど約30のコンテンツを1棟のビルに集約。教育サービスだけでなく、コンシェルジュや送迎サービスなどをワンストップで提供する。なお、こどもでぱーとたまプラーザ(横浜市青葉区)も同時オープン。今後は首都圏に20施設を展開していく予定。
>>公式サイト:kodomo-depart.jp


文:廣瀬智一

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