娘を国連インターナショナルスクールに通わせて気づいた「学びの本質」とは?

娘を国連インターナショナルスクールに通わせて気づいた「学びの本質」とは?
国連議員でもない日本人夫婦の娘が、なぜ「ユニス」に通うことに……? 幼児期だからこそ大切にしたこととは。

子供に合う学校を見つけるには、
どうしたらいいのか

これは、娘のキンダーガーデン(幼稚園年長に相当)選びで悩んだときの話です。ニューヨーク市には多種多様な学校・方針があり、公立ではキンダーガーデン進学の前年に、Gifted and Talented Testと呼ばれる知能テストのようなものを受け、高得点の子供だけが入れる学校やクラスも。そのための対策塾があるほど、競争世界の一面もあります。

小さいうちは少人数で伸び伸び過ごせる環境におきたい。そんな願いから出会ったのが、国連が運営するインターナショナルスクール、「ユニス」(UNIS=United Nations International School)でした。元々は国連職員が自分の子供たちに「国際的な教育」を行うためにつくった学校ですが、幅広く門戸を開いており誰でも受験可能。マンハッタン校のほか、私が住むクイーンズ区にもキンダーから8年生までが学ぶ2つの校舎があり、2つのキャンパスあわせて109に及ぶ国と地域をルーツに持つ約1600人が学ぶ国際色豊かな学校です。

「ユニス」クイーンズ校の校長先生(当時)が語った理念は、「私たちは肌の色や出身、性別に関係なく、その子がその子として自信を持てるようにサポートします」ということ。今まで漠然としていた子育ての指針のようなものを言語化され、運命を感じた私はダメもとで受験し、ご縁を頂くことに。国連職員でもない私たちの「ユニスライフ」が始まったのです。

すぐに答えを教えず、子供の想像力を鍛える

クイーンズ校は緑に囲まれた閑静な住宅街にあります。娘のクラスは生徒9人に対し、先生が2人。学ぶ楽しさを見つけるため、どんなテーマでも結果を「予想」し「実際の体験・数字」に重きをおいていました。例えばハロウィンの時期には、大きなかぼちゃの種が何個あるか「予想」。みんなで数えると、なんと619個も! 楽しみながら3桁の大きな数を学び、実体験していきます。

先生たちは「答え」をすぐに教えてくれません。当時、地球儀を見るのが好きだった娘が先生に「どうして地球は丸いのに、海の水は落ちてこないの?」と聞いたところ「本当だね。どうしてだと思う?」と、自ら学べるよう聞き返したそうです。そこから、図書館で本を借りたり、海水浴に出かけた時に、まっすぐ地平線まで続く海を不思議そうに見ていたことがありました。

授業は英語ですが、キンダーガーデンはフランス語かスペイン語を選択し、週に3回〜4回の授業を受けます。娘はフランス語を選択したのですが、驚いたのは教科書が先生の手作りだったこと。フランス語の絵本を読んだり、シェフハットをつけて学校のキッチンでチョコレートクロワッサンを焼いたりと本当に毎回楽しそう。フランス語の先生曰く「文化を知って、面白い、楽しいと思わないと言葉の習得には繋がらない」と。

アートの授業もユニークで、「大昔の人は何で絵を描いていたの?」をテーマに、コーヒー粉と茶葉、潰したベリー類で色を出して実験したり、アンリ・マティスの作品から形を学び、アンディー・ウォーホールの代表作「フラワー」を真似て作品作り。これらはオンライン上で共有され、保護者も見ることができます。

TOPICS1
自然×最新IT「レッジョ・エミリア」


イタリアのレッジョ・エミリア市発祥の幼児教育。子供の興味を大切にし、表現力や探究心、考える力を養う。本場で研修を積んだアート専門講師の矢部・バリー真由さん(NY在住)は、どんぐりなどの自然素材のほか、プログラミング可能なミニロボットを使ったり、ビデオのギターコントローラーを分解したりと、最新ITも融合したクラスを行っている。

特徴は先生が生徒の声を録音すること。子供の言葉を書き起こすことで思考を「見える化」する(グーグル本社が社員の子供のための預かり施設でも取り入れている)。

TOPICS2
本物で感性を磨く


NYで子供を育てる醍醐味の1つは、本物の「アート」に気軽に触れられること。メトロポリタン美術館やMoMAなどは子供向けアートクラスがあり無料で参加でき、ショップも充実。昨年改装したMoMAには、ジャクソン・ポロックのアクションペインティングを体験できるキット(20ドル)も。

メトロポリタン美術館は絵本が豊富で、我が家でヒットだったのは、子供が考えそうな疑問に答える「WHY is ART full of NAKED PEOPLE?」(19.95ドル)とポップアップ絵本「Meet the Artist Vincent van Gogh」(24.95ドル)。

PROFILE

田辺さちえさん
サンケイスポーツ記者を経て、2006年に渡米しフリーに。新聞や雑誌など幅広く執筆。2011年にNYで長女を出産後、娘のイヤイヤ期をきっかけにコーチングを学ぶ。NPO法人マザーズコーチジャパン認定コーチとしても活動。


FQ Kids VOL.02(2020年春号)より転載

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