「歌」で英語は上達する? 東大名誉教授が語る「音楽と英語」の本当の関係

「歌」で英語は上達する? 東大名誉教授が語る「音楽と英語」の本当の関係
子どもの英会話教室では、よく英語で歌を歌う。楽しそうだが、英語を学ぶ上で効果はあるのだろうか? アメリカ文学・ポピュラー音楽を専門とし、「音楽と英語」を研究する東大名誉教授の佐藤良明先生に聞いた。

この人に聞きました!

東大名誉教授
アメリカ文学・ポピュラー音楽研究者
佐藤良明さん

1950年生まれ。アメリカ文学・ポピュラー音楽研究者、翻訳家。東京大学名誉教授。現代アメリカの文学・文化・音楽を起点にした研究・評論を行う一方、大学の英語の授業改革に取り組んできた。現在、放送大学客員教授として、ラジオ授業科目「ビートルズ de 英文法」を担当。著書・翻訳書多数。最新著書は「英文法を哲学する」(株式会社アルク)

<目次>
1.英語の歌で、英語の「リズム」と「抑揚」が身につく!
2.歌で英語の「発音」を学ぶには? 「文法」は学べる?
3.英語を歌で学ぶときはここに注意!
4.上手くなるには「カラオケ」が一番!? 歌で英語を上達させるコツ
5.歌で英語を学ぼう! 「カラオケde英会話」とは?
6.気になったら気軽にトライ! Eigopopの教材・レッスンを無料で体験

 

英語の歌で、英語の「リズム」と「抑揚」が身につく!

――佐藤先生は、「音楽と英語」の研究をされていますが、子どもたちが歌や音楽を通して英語を学ぶことは本当に可能なのでしょうか?

「まず、英語に限らずですが、子どもに何か本当に教えるってとっても大変ですよね。少なくとも、文字を見ていても勉強にはならない。実際に言ってみないといけない。

でも、ただ言うだけではだめで、英語には正しいリズムと抑揚がある。抑揚とはメロディのようなものなので、私たちは話しながら、すでに半分歌っているんです。

言葉のリズムと抑揚を、音楽の形式にのせて表現したものが『うた』。だから、楽しく歌いながら英語を学ぼうとすることは、ものすごく合理的だと僕は思っています」。

――なるほど。英語の歌を歌うことで、英語の「リズム」と「抑揚」を楽しく体験することができるんですね。

「例えば『You did it.』という歌詞を歌うなら、『You・DID-it(ユー・ディディッ)』 みたいな感じで2拍なんです。ふつうはYouが弱く、DID it のDIDが強くなって、〈弱・強〉のリズムになる。

日本人が文字だけ読んで発音すると『You・did・it(ユー・ディッド・イット)』で3拍のリズム取りになってしまいがちですが、それは違う。it をハッキリ言ってはいけないんですね。

喋りは散文ですが、うたはリズムの強弱を整えた韻文で、身体に馴染みやすく、記憶もしやすい。かけ算九九とか歴史の年号を暗記するときもそうですよね。僕は国語の時間でも歌を使って拍取りのしくみを教えた方がいいのでは、と思っています」。

――英語の歌にもいろいろあると思いますが、学びのためにはどんなジャンルが向いているのでしょうか?

「童謡、ポップ、ロック、カントリーのジャンルでは、原則として話し言葉の抑揚がメロディに反映されるので、英語を身につけるには最適です。

基本的に、その国発祥の音楽に、その国の母語が乗ったものは、その言語のリズムと抑揚が正しく反映されるものです。日本の場合は、西洋風の唱歌が入ってきて、日本語をねじ曲げてしまいました。それをまたロックやソウル風のポップがねじ曲げてしまったので、日本人には歌と発話の本来の関係が見えにくくなっています。

英語の歌でも、ラップやサルサなどでリズムの癖が強すぎるものは、自然な音節の強弱がねじ曲がっている場合があるかもしれません。

また、オペラなど“芸術的”な歌唱ではメロディが自然な発話とは別の方向に舞い上がってしまいがちですから、英語学習という観点からは、なるべく話し言葉に近い、シンプルな歌を選ぶと良いですね」。

歌で英語の「発音」を学ぶには?
「文法」は学べる?

――英語の「発音」についても、歌で学ぶことができるのでしょうか?

「もちろんです。発音を学ぶには、お手本の歌を何度も再生して、一音一音そっくりに歌うことがおすすめです。それには歌を覚えて、人前で歌う経験を積むのが一番ですね。

また、英語の母音は日本語と比べてかなり種類が多いので、発音記号も見ながら違いを意識して覚えると、より効果的だと思います」。

――「文法」についてはいかがですか?

「『文法』は文法用語を使って教えても、なかなか身につきません。文法を体感するのも歌なんです。

例えば、ミック・ジャガーは「テル・ミー」の曲で“I want you back again.(君に戻ってきてほしい)”という歌詞をどう歌っているか。I で切って、want you back でまた切って、again というふうに歌っています。

スローに歌うと、主語・動詞句・副詞の部分が自然に分離する。この自然さを習得することが、文法の基礎力になります。

文法には、そのように体感的に身につけるものもあれば、細かく覚えないといけないものがあります。細かく覚える場合も、やはり多くのシンプルな文を歌ってしまうのが楽です。

I’ve been singing は正しくて、I’ve singing はおかしい、シンプルな英語を繰り返し口にしていれば、そういう点を間違えなくなります」。

英語を歌で学ぶときはここに注意!

――歌や音楽を通して英語を学ぼうとしたときの注意点はありますか?

「歌うと、旋律に縛られちゃうということはありますね。英語の抑揚は、基本的なものはありますが、強調する部分を変えることで意味が変わってきます。

先ほどの『You did it.』でも、『あなた、とうとうやったのね!』というニュアンスなら『you DID it.』。『あんたがやったんだろう!』と、それをした人間をはっきりさせる言い方であれば、『YOU did it.』と変わるわけです 。

1つの歌を繰り返し歌うことも大切ですが、同じフレーズでもいろいろなメロディ、いろいろな抑揚の付け方があると知ることも必要ですね。

また、先程もお伝えした通り、リズムと抑揚が話し言葉に近い歌を選ぶことも大切です。

例えば、初期のビートルズの歌は、そもそも小中学生に話しかけるように、強い抑揚で歌われているので、教材として最高です。そこで私は放送大学で『ビートルズ de 英文法』という授業を作ってみました。リズム譜や、メトロノームを使っての発声発話の練習をエクササイズに取り入れて、今では人気授業になっています」。

上手くなるには「カラオケ」が一番!?
歌で英語を上達させるコツ

――最後に、歌や音楽を通して英語を上達させるには、どんなことがポイントですか?

「完全コピーを試みること。その歌をカラオケで歌って人を感動させることを目指して、徹底的になぞることです。

それには、その歌に出てくるフレーズの意味だけでなく、全体を1つの作品として感動できるまで理解することが大切です。好きな歌やアーティストを見つけて、楽しみながら歌い込めたらベストですね」。

歌で英語を学ぼう!
「カラオケde英会話」とは?

子ども向け次世代型英語学習『Eigopop(エイゴポップ)』では、佐藤先生のお話のように、音楽は言語の基盤としても重要であると考え、「カラオケde英会話」というオリジナル教材を開発している。

子どもが歌を通して、英語の音楽的なリズムやピッチ(音の高低)を体験しながら、意味や文法の理解へとつなげることが狙いだ。

いろいろな英語のフレーズを、リズムや抑揚はもちろん、話すときと同じイントネーションになるように、オリジナルの歌にアレンジ。歌の通り話すとナチュラルな発音になる。

曲調もさまざまなので、飽きずに楽しめるのもポイント。「歌で英語を学ぶ」ことに興味のある方には、ぜひ試してもらいたい教材だ。レッスン中の歌声を録音してアプリに保存し、家族やSNSなどでシェアすることもできる。

佐藤良明先生にも、この「カラオケde英会話」を視聴してもらい、感想を聞いてみた。

――「カラオケde英会話」の率直なご感想を教えてください。

「とてもライブ感のある教材だし、僕から見ると現代的な音楽を使っていて斬新だなと感じました。

ネイティブのミュージシャンが教材を作っているということなので、音楽的な挑戦もいろいろできそうです。同じ英語の歌詞をいろんなジャンルの曲でアレンジしてみても面白いかも。

それって英語の勉強になるの? って思うかもしれませんが、英語の勉強は抽象的な知識を増やすことではありません、細かな感覚を身につけるのが先決です。

一方で、英語は「音節」(一個の音符に対応する部分)からできていること、その音節は強弱の別がはっきりしていることを、もっと大胆に図示してもいいのではないでしょうか。

耳で聞くだけでなく、アプリの画面を見せられるのは利点なので、いま歌っているのはどの音節か指し示すタイミングが重要になります。

僕が昔から夢見てきた英語の学び方が、今いろいろな技術によって実現しつつあると感じます。さらに進化して、音楽的にも英語的にも面白いアプリになっていくことを期待しています」。

――佐藤良明先生、どうもありがとうございました!

 

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『Eigopop』は、アプリを活用した楽しくわかりやすい教材と、人間がリアルタイムで行う丁寧な個人レッスンが特徴のオンライン習い事。

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ネイティブの話し言葉の抑揚をメロディーに落とし込んだ「カラオケde英会話」をはじめ、英単語のイントネーションが視覚的にわかる「ジェスチャーde発音」、アプリ上で単語や絵を動かしてお話を作る「ロールプレイ」など、独自のさまざまなプログラムで、コミュニケーションに使える実践的な英語力を楽しく身につけられる。

また小学生以上には、耳で聞いたストーリーを文章で説明する「メモリーカード」や、文法を視覚的に理解する「文章読解」など、会話だけでなく文章をしっかり読み書きできるようになるためのレッスンも。

 
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文:FQ Kids編集部

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