災害が来る前に知っておきたい! パパ・ママにもできる子どものための心理的応急処置

災害が来る前に知っておきたい! パパ・ママにもできる子どものための心理的応急処置
いつどこで発生するかわからない大規模災害。災害時には子どもの命と身体の安全を守ることはもちろん、「心」を守ることも大切だ。そのために知っておきたい「PFA(Psychological First Aid)」とは?

<目次>
1.専門家でなくてもできる危機的状況下での心のケア
2.危機的状況下で、子どもの反応や行動はどう変化する?
 【年齢別】危機的状況下で子どもが示す反応
3.危機的状況下の「子どものためのPFA」子どもと関わる大人のためのポイント
4.子どもの様子をよく見て、必要があれば専門家につなぐ

 

専門家でなくてもできる
危機的状況下での心のケア

頻発する地震や水害。誰もがこうした被災の当事者になる可能性を否定できない。自然災害のみならず事故や火災、世界的にみれば武力紛争もしかり。

こうした危機的状況にさらされた人々の心を支えるために、支援者が共通して身につけておくべき心構えを示したものが「心理的応急処置(Psychological First Aid)」(以下「PFA」)だ。

災害などの緊急時には、特に子どもたちは心に大きな影響を受け、普段とは異なる反応や行動を示すことがある。

子どもたちが自分たちのペースで落ち着きを取り戻し、困難を乗り越えられるよう手助けするための支援の姿勢や行動を示したものが、国際NGOセーブ・ザ・チルドレンが提唱する「子どものためのPFA」である。

PFAは、専門家によるカウンセリングや医療行為ではなく、誰でも実践できるのが特徴だ。「準備」「見る」「聴く」「つなぐ」といった行動原則に従えば、危機的状況下で子どもに接する親・家族はもちろん、子どもたちを支援するすべての人々が実践することができる。

危機的状況下で、
子どもの反応や行動はどう変化する?

PFAのためにまず大切なのは、先に述べたように危機的な状況下では、子どもは普段と異なる反応を示すことが一般的であると知っておくことだ。

例えば子どもが災害で起きた出来事を遊びの中で表現する(地震ごっこなど)、というのはよくあること。一見不謹慎なようでも、自分の体験を言語化することが難しい状況下で、遊びを通じて表現することが自然なストレスの対処方法になることもあるのだ。

目に余るようでなければ見守って良い。大人が慌てすぎることなく対応できれば、多くの子どもは時間の経過とともに落ち着きを取り戻し、心が安定していくもの。まずは危機的状況下で子どもが示す反応を知っておくことが、PFAの第一歩となる。

危機的状況下で子どもが示す反応

 0~3歳くらい 
□ 親や養育者から離れたがらない。
□ より幼い行動に戻る。
□ 睡眠や食事行動に変化が起きる。
□ いつもより泣いたり、イライラしたりする。
□ 他者の反応に対して敏感になる。

 4~6歳くらい 
□ 親や養育者の傍にいたがる。
□ 睡眠や食生活の変化。
□ 幼い行動に戻る。

 7~12歳くらい 
□ さまざまな身体症状の訴え。
□ 睡眠障害や食欲不振。
□ 攻撃性、苛立ち、落ち着きのなさ。
□ 集中力の欠如、学習意欲の低下、学校へ行きたがらない。
□ 起きたできごとを遊びで表現(災害ごっこなど)する。

 13歳以上くらい 
□ 強い責任感や罪悪感を持つ。
□ 自滅的な行動、他者を避けたり攻撃的な行動が増す。
□ 大人に反抗的になり、より仲間を頼るようになる。

危機的状況下の「子どものためのPFA」
子どもと関わる大人のためのポイント

1 可能な限り、これまで行ってきた日課を続け、規則正しい生活リズムを作る。



2 気分をリフレッシュするために、運動や身体を動かすアクティビティを行う。



3 必要な子どもにはハグや手遊びなど、普段よりスキンシップを意識し安心感を与える。



4 2種類のおもちゃの好きな方を選ばせるなど、子どもができることは、自分でできるようサポートする。



5 テレビやメディアとの接触を減らすなどして、つらい記憶を呼び起こすようなシーンや情報から子どもを守る。


子どもの様子をよく見て
必要があれば専門家につなぐ

多くの子どもは、生きる上で必要な基本的な生活ニーズと、遊びや学習といった子ども特有のニーズが満たされ、保護者の元で安心感を得られれば、落ち着きを取り戻すことができる。しかし、専門的な支援が必要な場合もある。

「危機的状況下で子どもが示す反応」を踏まえても、強いストレスや人格・行動の変化が継続し、日常生活への支障や自傷加害リスクが見られた場合、早めに専門家(医師、看護師、臨床心理士、精神保健福祉士など)につなげることが重要だ。

大規模な災害が発生したときは、DMAT(災害派遣医療チーム)やDPAT(災害派遣精神医療チーム)が国から派遣される。避難所などに相談先のポスターが貼られたりするので、そうと知っておけばいざというときの情報収集もしやすいはずだ。

最後に、子どもを支える「大人」自身の状態も非常に大切だ。子どもたちを適切にケアするためにも、食事や休息をできるだけ取るなど十分なケアを心がけ、無理をせずに周囲のさまざまなサポートを活用することを心がけよう。

Save the Children(セーブ・ザ・チルドレン)とは

セーブ・ザ・チルドレンは100年以上の歴史を持ち国連に公認された、子ども支援を行う国際NGO。「子どもの権利」を実現する社会を目指して、29ヶ国の独立したメンバーと共に、およそ120の国と地域で行政や地域社会と連携し支援を行っている。日本では1986年にセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが設立。令和6年の能登半島地震では、子どもを支援する「こどもひろば」の設置や「緊急子ども用キット」の配布などの支援を行った。

>>PFAについてもっと知りたい方はこちら

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文:木村悦子

FQ Kids VOL.19(2024年夏号)より転載

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