2021.12.26
2022.11.27
2023.08.04
《 今回の相談内容 》
ピアノのレッスンに1年ほど通っていますが、自宅での練習を嫌がります。保育園から戻ってから私も一緒にピアノのそばに座りますが、最初から通しで弾いていて、少しでもつまずくと椅子から降りてしまいます。
練習時間を「1日15分」と決めているのですが、うまくいきません。「ごほうびシール」や「子どもに寄り添って練習させる」などさまざまな手を尽くしたのですが、駄目でした。
しかし、ピアノの習い事自体はやめたくないそうで、困っています。娘が練習に前向きになれる声がけのしかたや、子どもがうまくできなかったときの親の気持ちの持ち方など相談できたらと思います。
(匿名さん・5歳の女の子の親)
1日にピアノの練習を15分やる、最初から最後まで通しで弾く……大人にとっては簡単に思えるかもしれませんが、子どもにとってはとても高い目標なのかもしれません。
途中でつまずいて嫌になってしまうなら、もっと目標をぐぐっと下げてはどうでしょう。例えば、「ピアノの椅子に座ったら褒める」というくらいに下げるのです。
この話を親御さんにすると、「えっ!? それだけで褒めてしまっていいのですか?」と驚かれます。「はい、いいんです!」。
人は、つまずくと自信を失い、心が挫けてしまうものです。挫けないためには、自分はできると信じる気持ち(=自信)が大切です。その気持ちを持つためには、すごいことを成し遂げた時だけではなく、ごく簡単なことでも認めてもらう経験が不可欠なのです。
さて、次の目標をどうしましょうか。「座ってから最も好きな音を1つ鳴らす」はどうでしょうか。座ったらいきなり頑張るというよりも、「今日はこの音が好き!」とやり取りができたら楽しくなりますよね。
理想は「最初から最後まで、つまずかずに通しで課題曲を弾くこと」ですが、それは最終的なゴールです。途中で2回、3回、4回……10回とたくさん「褒められポイント」を作れば、多少つまずいても「自信貯金」がしっかり積み上がっているので、挫けにくくなります。
さて、ここで大切なのは、目標をお子さん本人と一緒に決めることです。
「子どもがうまくできなかったときの親の気持ちの持ち方」についても知りたいとのことですが、親が自分の中で無意識に目標を作っているから、できなかったと感じる場合もあるのではないでしょうか。
親はできていないと感じても、実は本人はできていると思っていることもあります。
本人に「褒めてほしいポイント」をヒアリングすることで、本人が認めてもらって嬉しいことを、認めてほしいタイミングでしっかり褒めることができれば、自己肯定感もアップします。
例えば「ピアノの前に5分座る」という目標であっても、親が決めてしまうと、子どもにとっては「親が勝手に決めた目標」になってしまいます。
そうならないように、「座る時間、少しだけと、ながーく、どっちにする?」と尋ねて決めてもらいましょう。こういう聞き方にすれば、座ることを前提に話を進めやすくもなります。
1日の練習時間が15分というのも、もしかしたらお子さんにとっては果てしなく長い時間に感じているのかもしれません。連続ではなく、朝5分、夜10分でもいいのです。そういったことも、本人と話して決めてみてはどうでしょうか。
そして、もし「ピアノの前に5分座る」という目標をお子さん自身が決めたなら、同じ5分でも「親が決めた5分」と違い、子どもの大きな原動力になります。
てぃ先生
関東の保育園に勤める現役保育士。名前の読み方は「T」先生。SNSの総フォロワーは160万人を超え、保育士として日本一の数である。超具体的な育児法や子育てにおけるアドバイスは斬新なアイディアに溢れており、世のパパ・ママに圧倒的に支持されている。現在はSNSだけでなく、報道番組からバラエティー番組まで幅広いジャンルのテレビにも出演し、「いま一番相談したい保育士」と紹介されることも。
文:脇谷美佳子
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